21、???の発見
おはこんにちばんは、みなさん。今回は、名前のところを???にさせていただきました。
理由は、読めばわかります!
今回のことで、また新たな物語の展開が見えてきますからね。
新章、開幕です!
どこだ、ここは……。確か俺は、オーディンに向かう途中、山賊に襲われ、何とか魔法で撒くことはできたけど、道に迷った。そこで記憶は途切れている。
ここがどこかはわからないが、目の前に大きな建造物がある。あえてそう表現したのは、やたらといびつな形だったからだ。
「なんだこれは……。」
自分が誰なのかが思い出せない。そのことに遅ればせながらに気が付き、一瞬慌てたものの、不思議と落ち着きを取り戻す。
冷静になって、自分になぜか怪我がないことに気が付くが、そもそも山賊に襲われた=怪我とは限らないだろう。
ふと、建造物の中から誰かに覗かれている気がした。
「誰かいるのか!」
返事はない。が、何かぶつぶつと声が聞こえてくる。
「異界の言葉か……エイゴでもニホンゴでもないはずだが、意味は伝わってくる。」
「そうなると、あの小娘が作ったゲートに何か意味があるのだろうか。」
「もしくは、このロボット自体にそのような機能をつけられているのではないだろうか。」
言葉の意味は分かるが、ところどころ、知らない単語が混ざっている。
「なぜ無視をする!そちらが来ないのであれば、こちらから行くぞ!」
怪しいものは、検挙しなくては。だが、そういう思考が生まれるということは俺は誰かを捕まえるような立場にいた人間なのか。
「くそ、せっかちだな、異世界の野蛮人どもは。」
「相手は一人のようだ。消すか?」
「それが一番だろう。」
どうも、向こうの言葉がこちらに筒抜けなのに隠す気がないのは、それがわからないほど馬鹿か、相当戦力に自信があるかのどちらかだろう。
前者であることを祈りつつも後者であることを察している以上、わざわざ後手に回ってやることもない。魔法で吹き飛ばしてしまおう。
そこまで考えて、魔法が使えるということは、自分が貴族以上の位なのだと気が付く。であれば、むこうが王族か、ワルキューレのような化け物でもない限り負けることはないはずだ。
向こうは、屋内にいる。ならば、これがいいだろう。
「爆破!」
シンプルな名前の魔法ほど、威力は下がる。イメージが抽象的になるからだ。しかし、相手が建物の中にいるときはそれでいい。爆発ではなく、それによって建物を壊すことが目的だからだ。
だから、相手のことは倒したと思っていたし、勝ちを確信していた。油断というのを戒めるよう、父から教わったはずなのに。
父の顔を思い出したという事実よりも、三つの驚愕が大きかったので、それどころではなくなってしまった。
一つ目は、建物は、崩れるどころか、ヒビ一つ、いや、焦げ一つついていなかった。いくら威力が低いとはいえ、煤ぐらいつくはずなのにそれもない。
二つ目は、向こうが打ち返してきたことだ。色が本来と違ったから予測でしかないが、今のは「熱線」。火属性と光属性の合同で、火属性の熱を一直線に打ち出す魔法だ。本来は白いはずだが、今のは赤かった。
三つめは、相手の姿だ。ぱっと見鎧のようだが、構造をどう見ても人が入れるようにはなっていない。まるで、金属自身が意思を持って動いているかのようだ。
相手が一人だったのは好都合だ。いくつかの話声がしていたから、複数いる可能性も捨てきれないが、それならこのタイミングで皆姿を見せてくるだろう。
「今のは魔法か?」
「ああ、おそらく。」
「威力のほどは?」
「心配ない。ファイブが作ったマシンと建物だぞ。」
「その割にはシステムのプロテクトが弱かったが?」
「『遺伝子』覚醒中のあれを使って、直接ウイルスを書き込んだのだ。そもそもスタンドアローンだったから、そんなに大変な作業ではなかった。」
「なるほど、そりゃあいい。」
どう見ても人が入るはずのない鎧から、二人もの声が聞こえてきたので、思わず攻撃の手を止めていた。だが、敵であることには間違いないのだろう。
「高威力熱線!」
今度は、自分の出せる中でもかなり上位の魔法を使う。これ以上の威力は、永井栄松がないと使えず、特に今のように一人の時は実戦的でない。
この時、自分が発展二属性を仕えたことよりさらに驚いたのが、城壁ですらも貫けると言われた「高威力熱線」をなんの盾もなしに平然と受けられたことだ。
「ふむ、高威力と名前がついてこの程度か。」
「なるほど、解析はこの程度でいいのではないか?」
「そうだな。もうこいつは用済みだ。」
目の前の鎧が、手に持っていた小型のクロスボウのようなものをこちらに向ける。いやな予感がしたので飛びのくと、すぐ脇を「熱線」が通り抜けていった。しかもこちらの「高威力」よりも高威力の。
「こりゃあヤバいな。」
確かに先に手を出したのはこちらだが、それにしても少しまずい気がする。少しでも触れたら即死の熱線と追いかけっこは分が悪いとかいうレベルの問題ではない。
再びこちらに向けられたクロスボウから身をかわす。後ろにある木に、穴が開くような音がした。
というかあれ、何発まで撃てるんだよ。こちらへの狙いが雑なことから、かなりの本数撃てるのは察するけど、魔法力どっから供給してるの。
挙動が遅いのがせめてもの救いだが、それだって根競べしたくはない。命がけだし、後ろの木のさらに後ろの木の……と、見えないところまで穴が続いているから、おそらく追いかける必要もないのだろう。
もう一発、撃ってきたのを避ける。狙いは雑だが、何せ高威力だから大きくよけさせられる。
「いい加減当てろよ。」
「すまんすまん。これの調整はむずいんだって。」
まるで戦場にいる緊張感を感じさせない声が、あざ笑うように響く。これは、戦場に慣れたゆえの緊張感のなさではなく、戦場に立ってことがない者かのようだ。
これだけ強いのに戦場に立ったことはないのだろうか。
この一瞬の思考が、命取りとなった。避けた際に、木の根に躓いて転ぶ。まずい。
「動くなぁ、手ぇ上げろぉ。」
「じゃないと撃つぞぉ。」
この声をどこかで聞いたな、と思いながら手を挙げて、気が付く。初めて出た戦で勝利をおさめ、残党狩りをしていた農民たちの声と同じだ。
もちろん、人物が、ではなく、緊張感のなさや、相手をいたぶることへの高揚感、そういったものが素人のそれだった。
「くそっ。」
言われたとおりにするが、それでも何か手はないかと視線を巡らせる。
しかし、もちろんそんな都合のいいものはない。幼いころ、乳母が語ってくれたおとぎ話とは違うのだ。
走馬灯、とは違うだろうが、記憶がどんどんよみがえってくる。妹のことを忘れていた自分に嫌気がさす。
「何をしているんだ、ラプラス!」
そう叫ぶ男の声と、
「お兄様!?どうしてここに!?」
ここに入るはずのない妹の声が聞こえる。
目の前を雷が走り、鎧に当たると、それが動きを止めた。
「お兄様?大丈夫ですか!?」
心配そうな妹の顔は、驚くべきことに現実だった。
「なぁ、睨むのやめてくれないか?」
セーイと名乗った男が言うが、もちろんやめる気はない。妹をたぶらかそうなど、百年早い。少し顔はしゅっとしているかもしれないが、中身はどうだか。
「それで?俺のかわいいソリアよ、どうしてこんなところに?」
自分の名前がヨルであること、自分にはかわいい妹であるソリアがいることを思い出した俺は、妹の身を案じることにした。
「それはこちらのセリフですわ。もとはと言えばお兄様が行方不明になったからではありませんの。」
おっしゃる通りだ。俺が山賊に襲われ、あちらこちらを逃げ回っているうちに、行方不明扱いとなり、妹のもとにお鉢が回ったのだろう。
「それで、そちらの(怪しげな)男は?」
「彼はセーイ、とある暴漢に襲われていたところを助けていただきましたの。」
「なるほど、ソリアに暴漢をよこして、襲わせたのちに助けるふりをしてたぶらかしたのか。」
妹のこぶしが飛んでくる。いくらかわいい妹でも、これを受けたら先ほどの熱線どころじゃないから、ひらりと交わしてから言う。
「それに、先ほどあの敵の名前を呼んでいなかったか?あの怪しい魔法は何だ?
セーイなんて、明らかに発音が名前ではないだろう。貴様は何者だ?」
ちらりとこちらを見たセーイは、先ほどの鎧の奴らとは比べ物にならないほどのさっきを放った。魔法を使いたくなるのを、ぐっとこらえる。
「あいつは仲間だったはずだ。なぜおまえに攻撃してきたのかはわからないが、お前が何かしたんじゃないのか?
と、言いたいところだがな。ありゃ、おそらくウイルスだ。それも、かなり高度な。あのレベルだと、俺でも作るのにかなりの時間がかかる。
魔法に関しては溺愛する妹にでも聞け。ついさっきお前の父親に説明したばかりで面倒だ。
セーイというのは確かに偽名だが、本当の名前は、親が俺を売ろうとしたときに捨てた。」
さすがに聞いてはいけなかったことを聞いた気もするが、妹の安全のためだ。
「どうやって俺を見つけた?」
「目の前の木に穴が開いた。あれをできる人間はほぼいない。」
なるほど、あの威力ならおかしくはない。
「わかった。少しは信用する。が、妹に手を出したら、未遂でも許さん。」
そういうと、セーイは顔をふいっとそらした。
「おい。」
ちらりとソリアに顔を向けると、そちらもふいっとした。なにこれかわいい。
じゃなくて!
「どういうことか、話を聞こうか。」
言い合わせたように、二人は走って逃げだした。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
いかがでしたでしょうか!
みなさんにとって、この展開は予想通りでしたか?
それとも、意外でしたか?
自分にとって初の作品なので、皆様の期待を裏切ってはいまいか、不安な毎日でございます。
どうか、これからもよろしくお願いいたします」!




