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12、復活のティンケ

ようやく、彼女が復活します!

お気に入りの子なのですが、少し気がせきすぎましたかね?

ということで、今回はティンケ回です!

若干、体が揺れているようで気が付いた。


 まったくもって、どうしてこんなことになったんだっけ。私たち団員は、気を失うことが多い気がする。


 というか、気を失ったどころじゃなくて刺されたのか。まだ視界は真っ白だが、誰かがいるのがわかる。


 ああ、揺れているってことは、まだ生きているのかな。どちらでもいいやと思いつつ、それでも治してくれた人には感謝を伝えないと、と思うと仕方なく視界を頑張って安定させる。


 おそらく、というか確実に治してくれたのはオットだろう。きっと、ウエルカム研究素材だったろうなぁ。


 自分の体が魔改造されていないか確かめないと。魔法少女でいるには処〇でいることが必須だ。そこまで考えて、自分が魔法少女でないことに気が付く。そうか、私は美月。ウーノこと一樹に拾われた団の研究者。


 視界がようやく安定してきて、涙とか鼻水とかいろんな汁でかわいらしい顔をぐちゃぐちゃにした理央ちゃんが目に入る。理央ちゃんは私より年上だが……げふんげふん。大人だが、乙女なところが私よりあるから、そんな彼女はちゃん付けだ。


 ウーノが、あいかわらず中身が見えない顔でこちらを見てくる。セッテは少し不機嫌そうだ。ドアの前にはドウエが立ち、あたりを警戒している。


「私……は?」


「ここは誰、私はどこ?とか言わないよね。」


不機嫌そうなセッテに言おうとしたボケの先を読まれた。ひっじょうに不機嫌なのだろう。こりゃ、触らぬ神になんとやら、だ。


しかし、捨てる神ありゃ拾う神、ともいう。助けを出してくれたのはその恋人のウーノだった。


「単刀直入に言おう。

 君はクワトロに刺された。

 なにか、思い当たる動機はないか?

 彼から直接恨みを買っている我々ではなく、君が刺された原因はわかるかい?」


 いや、わからないよ!むしろ、刺したのがクワクワだってことにびっくりだよ!あの子がちょっとやんちゃ坊主なのは知っていたけど、さすがにちょっと痛かったよ!


 よし、次からはいたくないところを刺してもらおう。あれ?てことは、また刺されるってこと?いたくないところがわかるまで何度も……


「ちょっと一樹!いきなりすぎよ!混乱してるじゃない!」


 珍しくウーノに異議したのはセッテだが、おそらくウーノは私が妄想で自滅気味に混乱していることも、なんなら刺されたのがクワクワでよかったと思っていることもオミトオシだろうなぁ。


「大丈夫だよ。

 さしてきたのがクワクワだったからこうやって生き返ったし!

 あーでも、刺された原因にこころあたりはないなぁ。」


「だろうね。彼は、この世界で最強になりうる一番の要因を殺したかっただけだろうし。むしろ私怨からくる事件に巻き込んでしまって申し訳ないよ。」


「ところで、今はどうなっているの?

 この揺れは?」


「これは、ビルの一部を車モードにして走らせている。異世界の中でも有数の大国に行くつもりだ。」


おお、感謝感激雨あられ。唯一の悲劇は変身シーンを見られなかったことぐらいか。これは一番ショックだった。


「くっそぉお!!」


セッテがマジ引きしている。これ以上は私の清楚な乙女のイメージに傷がついてしまうかもしれないので落ち着こう。


「これ、生き返らせた弊害なんじゃ……。」


失礼だな。誰が狂っとるんじゃ。


 ……ん?なんで私は正気なんだ。私がすごいからか?というか、こんな大事なレポートを書きたいときに限って、なぜエロの奴がおらん!私が異世界に置いてきたからだ!うわああ、やらかしたぁ。


 頭を抱えていると、ウーノまで心配そうに見てくる。失礼だな。乙女の顔をリア充がじろじろ見るんじゃないよ。


「あれ?そういえばオットは?」


「恋人といちゃつき中。」


 おかしい。オットに恋人なんていなかったはずだ。こっちの世界で新しく作ったとか?旅先の行きずりの女とか……なんかかっこいいわ!


「どんな人?ショート?ロング?でっかい?ちいさい?髪の色は?

 性格は?美人さんだよね?ホモサピエンス?エルフ?いや、エロフ?

それともロリっ子ドワーフとか?ケモミミついてる?

もふもふしていい?それはやっぱりタブーなの?」


途中でセッテがあきれ顔になり、放置された。かわりに、ようやく落ち着いて、鼻をかんだ後の理央に言われた。


「えっと……美月ちゃんもよく知る人、かな?」


ということは、ここにいないクワクワ、セーイ、ノヴェの誰か?


妄想がはかどる、はかどるよおおぉ!


ふおおぉと叫んでいたら、


「覗きに行ってやるなよ。彼らとて、長い思いの募りもあったのだろうからね。」


 ウーノに先を越されてしまった。さっきのセッテといい、私はそんなにも読みやすい性格をしているだろうか。


「じゃあ、クワクワ&セーイは?そこもむ腐腐な感じ?」


「なんか変な漢字が見えた気がした……。」


 今度はこっちがセッテを無視してやる。


「彼らは失踪したよ。

 クワトロは君を刺した直後に、セーイはそのしばらく後にクワトロを追ったのだろう。」


 まあ。なんということでしょう。仕方ない。オットのやさぐれ責め×ノヴェのヘタレ受けの妄想でもして、今夜は落ち着こう。すこし肩を落としていると、


「ほんと見境ないのな……。」


私が目覚めてからのドウエの初台詞はこれだった。よかったのだろうか。というか、セッテもマジで引いた顔をしている。そりゃそうだ。セッテも女の子だもの。


「大丈夫、さすがに冗談。

 今夜だけでなく一週間はこの妄想で行ける。」


セッテのマジ引きがそろそろショートしそうだったので、きちんと教えてあげたのだが、あまり理解されていないようだ。むしろ、したくなさそうだ。


 次に、何のことだかわからなそうな理央に向かい合う。


「理央ちゃん、話わかってる?」


「いや、私あまりこういうこと詳しくなくて……。」


「まあ、要するにだよ、男の人同士が愛し合うというのは……。」




 二十分後

「つまり、男の人に○○〇はないから、代わりに○○○の中に○○〇を入れて……。」


バターン!


 目を回し、顔を真っ赤にした理央が倒れた。すぐにパチッと目を開き、久しぶりにトレに会う。


「おかげさまで回復したよ!」


「以降、負傷者を出さないこと。」


それだけ言うとトレは寝てしまった。


「俺が運ぼう。」


ドウエが丁寧な手つきで理央ちゃんを抱えると、隣のベットにやんわりと下した。


「あんまり妙なこと話すんじゃないわよ、仮にも女子でしょう。」


 同じく顔を真っ赤にしたセッテが突っかかってくる。むしろ、エロいのはこれからなのだが……。


「とにかく、無事でよかったよ。ティンケ。

 ドウエ、彼らを呼びに行ってくれないか。」


「ああ。」


ドウエが部屋を出ていくと、すぐさまセッテがゴロニャーンとウーノに甘える。


「セッテ、安心したら、おなかがすいてしまったよ。今日は朝ごはんしか食べていないからね。

 何か、食べるものを作ってくれないか?

 みんなの分があると嬉しいな。」


あいかわらずだなぁ。このカップルも。……え?


「待って待って!

 セッテが料理って、何作るの?

 私なら自前のグリセリンがあるから、それでいいよ!

 なんなら、塩化ナトリウムもわけようか?」


「私にだって料理くらいできるわよ!

 あと、それが甘味料と食塩ってことぐらいはわかってるからね?

 今日は、みんなでオムライスにするの!」


 隣で理央ちゃんの体がびくっと拒絶反応を起こす。


「だって、以前私の部屋にきて、料理するって言いながらトリニトロトルエンに火をつけようとしたよね?

 料理に水銀化合物入れようとしたよね?」


「それは、あんなものをおいておくあなたがいけないの!」


ああ、みんななんて変わってしまったのだろうか。私が死んでいる間に何が起きたというのか。おかしくなったのは死んだ私でなく、その間に変わった仲間でした。やっすいラノベになりそうだ。




 セッテが作ったオムライスは普通のオムライスだった。それなのに、ウーノはいつも通りの顔だが、ほかのみんなの顔が引きつっているのはなぜだろう。何かあったのか。


「ねえねえ、理央ちゃん。何があったの?」


比較的常識人枠の理央ちゃんに聞くと、答えが返ってきた。


「じつは、一樹君がオムライスの作り方を教えたらしくて、それに従うからおいしくは作れるんだけど……。」


「けど?」


「毎日毎食、オムライスなんだ。

 これでもう5日目だよ……。」


 なるほど、そりゃきつい。


「ちょいちょい、ウーノさんや。」


 手招きして、読唇されないように口元を隠してこそこそ話みたいな格好になると、セッテが持っていたスプーンを握りつぶした。折り曲げたのではなく。こわっ。


「なんだい。」


「なんだい、じゃないでしょうが!

 あのヤンデレ小娘に少しはほかの料理も教えようや!

 あの子でも、寿司とかサラダとかなら作れるでしょ!」


「まあ、もとはと言えば君が死んで落ち込んでいたみんなを励ますために料理してくれているんだ。

 そう冷たいことは言わないで上げてくれ。」


そういわれてしまうと、ぐうの音も出ない。


「ところで、なぜティンケさんは正気なんでしょうか?」


一見失礼な、しかしこれまた正しい質問が飛ぶ。ノヴェだ。


私は、死んでいた間の記憶を、少しだが思い出していた。

「実は、こっちの世界の神様にあったんだよね。」


 みんな驚いて目をむくが、やっぱり唯一ポーカーフェイスだったウーノが、目だけで続きを促す。


「こっちの世界では、神様は信じられてるからまともなんだけど、元の世界では神様も信仰心が足りなくて、おかしくなっちゃったらしいよ。

 それで、魂ごとに恐怖で信仰させようとするから、帰ってくる人たちもおかしくなっちゃうんだって。」


これには私もびっくりしたが、今のみんなみったいなあほ面はさらしていないと信じよう。


「それで、天国では自由に暮らせるんだって聞いたけど、うちはみんなと一緒がいいから帰ってきちゃった!」


「そんな家出ムスメみたいなノリで言われてもなぁ。」


オットが久方ぶりに口を開いた気がした。


「あと、本当なら返すのに頭をおかしくする必要があったらしいんだけど、神様がうちはいいっていってくれたんだ!」


この私の頭脳が失われる、ひいては世界の損失につながりかねない情報を教えると、みんなかわいそうな人を見る目でこちらを見てくる。仲間になりたそうな目じゃないんかい。


「ま、まあとにかくよかったということで、明日は焼肉にでもするか。」


 ウーノが噛む上に露骨に話を逸らすなんて珍しいが、みんなうんうんとうなずいている。その目は、先ほどのままだ。

 ねえ、なんでそんな目で見てくるのっ!?


ここまで読んでいただきありがとうございます!

さて、次回はまたも舞台裏、オットとノヴェのいちゃつきについて書くことになるかと思います。

腐っ腐っ腐っ

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