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子の日

作者: 雪見団子

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


2020/01/21 修正加筆

 1月1日、いつも通り寝起きからスマホをいじっていると突然「お正月にはお節だろ」と思いつき、一人暮らしをする俺の台所は年初めから大賑わいだった。

 男一人でスマホ片手に調べながらなれない料理をしている訳だからなかなか作業が進まず、午前に買物、昼過ぎから調理を始めて重箱の半分を埋めたところでもう4時だ。この時期は日暮れが早く、外はもう既に夜の魔の手が迫っている。

 古い二階建てアパートの台所で1人ドタバタしながら作業をしているので当然帰省しなかった上下左右の部屋から年明け早々うるせぇぞと壁ドンやら天井ドンやらを頂いた。

 地元に帰らない数少ない同士だと勝手にシンパシーを抱いていたのに悲しいことだ。特に上の部屋が1番激しく抗議してくる。

 内心、申し訳ないと思いつつも黒豆を煮てエビを茹で伊達を巻く。おせち作りで一番大変だったのはなんと言っても煮物系の料理だ。コンロは2つあるが鍋は1つしかないので一品作ったら重箱に詰め、残りはタッパーに入れてを繰り返す。

 どうにか出来上がった最後の料理を重箱に詰めれば完成だ。

 ずっと火を使っていたので長らく開けていなかった窓を開け、穴の空いたおおよそその働きをしないであろう網戸だけを閉めてしばらく換気をすることにした。

 それにしてもずっと動き続けて疲れたのでちょいと休憩すんべと思い、畳に敷かれた薄っぺらい敷布団に横になると体の節々が痛み始めた。

 すると途端にまぶたが降り始め、意識は遠のき夢の世界へと誘われた。

 はっと目を覚ました時には時計の針は23時を指し、窓から吹き込む寒風に身を震わせる。

 窓を閉め、お節をそのままにしてたことを思い出し、食べる前に写真を撮ろうとスマホ片手に台所に向かうと信じ難いものを見た。

 なんと重箱の中身は元日から苦労して作った料理ではなく灰色のモゾモゾと動く何かと太いミミズのようなもので溢れかえっているではないか。

 それはよく見ると沢山のネズミであり、そのうちの一匹が渾身の力作たる「漆黒の闇に抱かれた黒豆」を貪っているのが見える。

 腹が立った俺は重箱ごと蹴飛ばしてやろうと手に持ったスマホを握りしめたところで背後から気配を感じた。

 首筋に寒気が走り、恐る恐る振り向くとそこには猫ほどの大きさのネズミがこちらを見ているではないか。腰を抜かしてその場にへたり込む俺に向かってネズミはこう言った。

「美味そうなお節をありがとよ。お前にお節を作らせたのは何を隠そう俺なのだ。その年の干支の動物は元旦の日だけ何かしらの超能力を使えるようになるって話を聞いたことは無いかい? そう、今年は子年なので我らが選ばれた。ちょいとテレパシーでお主をその気にさせたのだ。部屋の床下や壁の中、天井裏で美味そうな匂いに体を動かし耐えながら待ってたぜ。チュッチュッチュッ。」

 そして大ネズミは助走をつけて座り込んだ俺の頭をとびこえ重箱に突っ込んでいった。

「てめぇら、俺様の分まで食い尽くす気か!」

 などと叫びながら。

 そもそも作ったのは俺なんだが。

 大ネズミが重箱に飛び込んだ拍子に飛ばされたのであろう1匹のネズミが目の前に落ちてきた。

 顔をゲシゲシとこするとつぶらな瞳でこちらを覗き込む。ネズミはきょとんとした顔で首をかしげながら「チュウ」と鳴いた。

読んでくださりありがとうございます。

今年、2020年はねずみ年という事なのでねずみをテーマに書いてみました。

今年もいくつか作品を投稿できたらいいなと思います。

Twitterはこちら 《 @sousaku_dango 》

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