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狼
北の王都ルベスの中心に、白亜の城は建っていた。天を突き刺すような塔の、柔らかな玉座に、老けた男は座る。
この国の王、名は……もはや、紹介するだけ無駄ともいえる。王都に住む人々は皆貴族で、王の名などどうでもいいような連中だ。
ふと、遠吠えが響いた。
銀色の毛並み、昂るそのぎらついた瞳には、苦しみの色が浮かぶ。青年はその背をそっと撫でた。狂喜を押し殺し、紅い一房の髪を弄りながら、そっと。
親子が食卓につき、旅人が宿を探すような夕暮れに、その声は大きく響き渡った。そして、静かな空へ見せつけるように、小さな蕾を踏みにじる狼。
彼は、貪るように血肉を喰らった。涙があれば流しただろう。声があれば呻いただろう。獣にそれは叶わなかった。
ただ、王の城の頂点から、高い高い遠吠えが響いていた。