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第二話「有名な人」

 


 彼が退院してから、一週間が経過した。


 相変わらず、他の人には見えないナニカ、が見えてしまう。


 そのナニカ、は家に帰って玄関を開けると中にいる時もあるし、学校ですれ違いざまに



「おはようございます!!」



 と声をかけて、周囲から笑われた事もあった。


 不思議と怖くはない。

 彼らは別に怖がらせようと思ってそこに居る訳では無いのだ。


 そうして、栄一はすぐに

「生きた人間」と「死んだ人間」

 の区別が付くようになったのだ。




「お前、大丈夫だったか?」

 教室で栄一は、友人に声をかけられた。


「おう。池田のおかげだよ。俺が生きてたのも、ありがとな、あの時助けてくれて」


「いや、当然だよ。俺は救急車を呼んだだけなんだから」


 この前、栄一と例の事件に巻き込まれた友人の名前を池田吉方いけだよしかたと言う。



「ねえねえ、みてよ。栄一! 君の事が新聞に書かれているよ」


 クラスの女子が彼の回りに集まった。


「ああ、それね。そういえば病院では記者の人に取材をされたんだよ」


「あっ! それ私見たよ! 長谷川くんテレビでてんじゃんって、大騒ぎだよ」


「うるさいな」

 栄一はあえて面倒臭そうに答える。


「こっちは記者だけじゃなくって警察からも根掘り歯堀聞かれたんだから」


 こんな感じで、女子が一番盛り上がりそうな

「霊が見えるようになった」


 ことは、吉方以外には伝えなかった。



 そうこうしているうちに、下校時刻を告げるチャイムが学校に響いた。



 いままで、栄一を囲んでいた女子群はいつしかいなくなって、教室には吉方と栄一が残った。



「…………俺さあ」

 改たまった口調で、吉方が栄一に言った。


「一昨年の夏、けっこう霊的な体験をしているんだよね」


 その言葉を聞いて、栄一は急にある「噂話」を思い出した。


 それは、徐霊の活躍で全国的に有名な少年がいる、と言う事。



 そして去年、その少年の知り合いが栄一と同じクラスにいる、という噂を聞いたことがあったのだ。



 その少年の知り合いが、吉方の可能性があると栄一はなぜか考えた。


 さて、その噂の霊力少年の名前を

 八雲悟一やくもごいち

 と言う。



「あれ? もしかしてお前、八雲悟一と仲が良かったりして」


「よくわかったな。そんな話したっけ?」


「ええ。マジかよ! あの八雲悟一だぜ?」


「あのって事は、お前もアイツのファンなのか?」


「ファンって程じゃないけど、だって有名でしょう」


「まあ、アイツはイケメンだし。俺は中学3年生の時に同じクラスだったよ」


「どうだった? どんな体験だった?」

 栄一は前のめりになって吉方に聞く。


「うん。お前が見ている幽霊は害の無い浮遊霊でしょ。でもアイツは自分からヤバイ悪霊に出会いにいくからな。そのせいで、俺もそういう悪霊を垣間見た」


「ええ。そんな話聞いてないぜ」


「ああ。言っていなかったからな」


「ちょっと、連絡取れたりする?」


「番号は分かるけど、どんな用で? 第一最近は会ってないし………お前のファンがいるって伝えるのか?」



 と、その時だ。

 突如として、吉方の携帯が鳴り響いた。


 このタイミング、

 吉方は直感した。



 この一見、どうでもいいように見える噂話の最中に、直接電話を掛ける人は、奴しかいない。



 しかもLINEの無料通話機能ではなく、携帯の電話番号に掛けてくるのは、奴の癖でもあった。



 一瞬、栄一と吉方の胸が高鳴る。

 そして、沈黙。



 吉方は静かに、携帯を取る。

 この時、敢えて着信画面を見なかった。


 通話先の人物が、悟一だと確信していたからである。



「…………もしもし」



「………おう。もしもし俺、誰だか分かる?」

 悟一の声だった。



「ああ。分かるよ。奇遇だな。悟一だろ?ちょうど今、お前の噂をしていたところだったんだ。久しぶりだな」



「よく分かったな。なんか、急にお前と話さなくちゃいけない用な焦燥感に刈られて、電話掛けたんだよ。別に大した用じゃない。どうだ?元気にしているか?」



「ああ、まあな。ところで、ちょっと面白い出来事があってな。その事で連絡しようか、と思っていたんだよ」


「待ってましたよ。そういう面白そうな話。聞かせてくれよ」


「まあ、俺に起こった出来事じゃなくて、俺の友達に起こったんだが………………」



 と、吉方は栄一が、川に落ちて、生死をさ迷った後、霊が見えるようになった、という旨を詳しく伝えたのだ。


 すると、電話口から、悟一の説明が始まる。



「うーん。はいはい。なるほどね。まあ俗に言う霊感の強い人間ってのは二通りいて、一つはそいつが、波動の低い霊と、ある種の周波数が共鳴してしまって見えるようになるタイプ………」



 ここで、吉方は栄一にも声が届くようにハンズフリーにした。



「これが一般的にいう霊感だよ。で、もう一つは俺たちみたいなタイプで、その周波数とは余りにもかけ離れ過ぎているために、邪悪さと対を成すようになったタイプだ。多分、彼の場合は前者だと思うから、あまり良い事とは言えないんだよな」


「良くないのか?」


「いや、でも実際に会ってみないと分からないから…………あ。そうだ、俺の知り合いに霊媒師がいるから、その人と先ず会ってみなよ」



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