若槻一樹という男4
「覚醒剤で身体中ボロボロに為ったからですよ。いうこと効かなく為った。兄ちゃん達に直接立ち向かわなかったのも、そのせい」
「そなに為ってたんか!馬鹿たれ。更正施設何で入らんかった」
瑠璃は泣きそうだ。
「はは。昔思い出すなぁ。イタズラして瑠璃様に叱られましたね」
「昔話はもうええ。今の話しせえ」
「そうだったですね。覚醒剤の強奪の話ですよね。単純に親父の復讐ですよ。現黒龍会会長は親父を蹴落とし、足撃って不自由にした張本人ですからね。覚醒剤は買ってたので、売人から今回の取引の情報は入りました。一泡ふかせ様かな位ですよ」
「そんで、幻獣街に逃げてきた。ま、ここなら簡単には手出し出来んわいなぁ」
瑠璃と若槻の問答は一旦そこで、終わった。
「若槻さん話したい事は終わりましたか?」
蓮が、生真面目に訊いた。
「嗚呼。俺の生涯最期の話しはね」
其れを聴いて蓮と龍馬と瑠璃は、一気に緊張する。若槻はアフガニスタン傭兵時代、機密保持の為に奥歯へ毒物のカプセルを仕込んでいたのだ。奥歯を噛み砕き速効性の毒物を飲み込む。
「若槻!!」
「一樹!!」
龍馬は若槻の口を抉じ開け咽に指先を突っ込んで、吐かせようとしたが無駄だった。
「瑠璃様。桜の花弁が舞ってる。父さん母さん」
それが若槻一樹の忌間際の言葉に為った。桜など舞っては居なかった。死の間際の幻覚か覚醒剤のフラッシュバックか区別する必要は、蓮達にはない。若槻には見えたのだ。それでいい。あれほど焦がれた幻獣街の桜。最期に若槻は見た。せめてもの救いだった。
蓮は前線本部に無線を入れる。
「若槻一樹の確保に失敗しました。若槻は自殺。覚醒剤は確保。ミッションオーバー。緋村、沢口、疾風、現地協力者の瑠璃様は無事です」
「土井です。ご苦労様でした。ありがとう。若槻の遺体と覚醒剤送って、帰還してください」
「蓮!あずみです。怪我してない?千堂君、大怪我して美少女と突然現れるし、琢磨さんも怪我してどうなってるの?」
「あずみ、ただいま」
不意に作戦前線本部の無線機の後ろから、あずみに蓮が声をかける。
「きみが蓮君のカノジョさん?沢口龍馬。大阪支部からの応援で有ります」
龍馬も敬礼しながら、あずみに声をかけると、
「?!、?!」
面食らっていた。
「テレポーテーション。龍馬君の能力だよ。改めてただいま、あずみ。約束通り無事に帰って来たよ」
「蓮!蓮!蓮!。ごめんなさい、沢口君、三島あずみです。事務方やってます」
蓮とあずみは慌ただしい。其処へ、
「忘れてないか?無事回復した。龍馬迎えに来てくれ」
市川遼〈トカゲ〉から無線が入る。
「遼はん。俺はタクシーじゃないスよ」
言いつつ龍馬は跳んだ。こうして作戦は終了した。




