若槻一樹という男3
蓮の問い掛けに若槻は話しを整理しようと、しばし考えて答えた。
「偵察任務っても、俺のはテロリストの幹部を捕捉する潜入調査さ。俺をスカウトしたのは、サバイバル術だけじゃない。人種的な事もさ、親父は日本人、おふくろはイギリス人、東洋と西洋のハーフ。今はダブルってポジティブに言うらしいな。話しが、逸れた。東洋系と西洋系のハーフは何人にも見えるし、何人にも見えない。アフガニスタンあたりには紛れるのに打ってつけって訳さ。武器は持たず、現地人の振りして山岳地帯馬に乗って巡り、協力者と接触。神経磨り減らす毎日の繰返し。軍隊の戦闘に巻き込まれる。地雷で隣に居た協力者が吹き飛んだ時は帰りたいって切に思ったね。常に死と隣り合わせ」
「苦労の連続やったんやなぁ。一樹」
瑠璃が憐れむ様に呟く。
「自分で選んだ結果ですがね」
「それでもなぁ」
「契約は一年間。それはこなさないと駄目だったので、磨り減った神経癒す為に大麻吸い、常時神経使える様に覚醒剤打つ様になってしまった。俺のシャブ中毒は戦争の副産物ですよ。もともと覚醒剤は戦争の為に開発された物なので、当然ちゃ、当然なんですが」
「人も沢山殺したのかぇ」
聞きたくないが、瑠璃は聞いた。
「ええ、この手で沢山。其処らに有るもので、木の枝で延髄貫いたり、シャツで頸締めたりetc.」
「もおええ」
瑠璃は若槻を遮った。
「覚醒剤のフラッシュバックで今もうなされます。あの頃、アフガンの荒涼とした山岳地帯で思い出してたのは、幻獣街の中央公園の桜です。親父とおふくろ達、近所の人達とお花見した桜。無性に懐かしかった。帰りたいって」
「なんで帰ってこなんだ。15年間も」
「なんででしょうね・・・。敷居が高かったのかな?」
子供の様に無邪気な顔になって若槻は頭を掻いた。未だ若い蓮と龍馬には、望郷という感情はピンとは来なかったが、瑠璃は深くうなずいていた。
「俺の戦果は大したもんだったんだぜ。アメリカ軍は契約の更新打診する位。でも、俺は限界だった。振り切る様に戦場を後にした。傭兵時代のギャラは戦場じゃ使い道なかったから投資してたよ。それが当たったんだ。3倍に膨れてた。シャブばれない様に注意して世界中旅して回ったよ」
「いつ日本に帰って来たのかぇ」
「5年前、おふくろはもう死んでた。親父はその5年前。風の噂で聞きました。瑠璃様とマダムと念翁で立派に送ってもらったそうで、ありがとうございました」
「なんの、当然の事さね。刑期終えたら墓に詣でるんやで」
瑠璃は頷きながら笑って言った。そして笑いを収め真面目な顔で聞いた。
「何で今回の様な事しでかした?シャブ欲しかったんかぇ。金に困ったんかぇ。何でやの?」




