若槻一樹という男2
「俺の人生ですよ。瑠璃様」
若槻はぼそぼそとしゃべって、瑠璃の返事を待つ。
「長くなりそうやなぁ。ええて。蓮、少し時間もろうても、良か?」
「御随意に」
蓮は若槻と瑠璃のやり取りに制限はしないつもりの様だ。
「兄ちゃん達、話し解るんでありがたい。瑠璃様は良くご存知だか、俺の親父『若槻一夫』は黒龍会、そう今回のやくざさ。幹部だったが、権力闘争に負けて足抜けしようと、幻獣街に逃げてきた。そこで、怪我して雨でずぶ濡れで死にかけてたのを、おふくろのマリア・タバサに拾われた。ま、色々あって二人は一緒になり、俺が産まれた。瑠璃様は幻獣街のガキも教育は人並みに、ってんで幼稚園や義務教育は通っていたが、外の子とは隔たりがあって幻獣街のガキだけが偏ってたな」
とつとつと若槻はしゃべる。
「そやったなぁ」
瑠璃があいずちを打つ。
「それだけに俺は外の世界に憧れた。幻獣街出てTVの世界で見る普通の社会で生活するんだと。中学卒業すると、両親振り切って幻獣街飛び出した」
「外は厳しいかったやろなぁ。苦労したんとちゃうか?」
「瑠璃様の仰有る通りさ。中学卒じゃろくな仕事は無い。日雇いの現場仕事に潜り込むのが、精一杯だった。そこは、金に為ったけど、先輩にたかられ、騙され給料巻き上げられる事も有ったよ」
「シャブもその時かえ」
「いや、酒と煙草だけですよ。クスリは戦場行ってからです」
少し辛そうに若槻は瑠璃に答えた。
「そんなこんなで、その生活に見切りつけて何かって考えてた時に、大金になるしスリル満点しかも海外って傭兵の話し聴いて」
「アメリカ渡ったのかえ」
「いえ、フランスです。傭兵の訓練はフランスで受けました」
「そして、アフガン紛争に派兵やったんかいな」
龍馬が、口を挟むが、気にせず若槻は答える。
「アフリカさ。旧フランス領で二年間勤務。たいして実戦は経験しなかった。傭兵訓練時代からサバイバル術の科目は教官に評価されてたから、更にアフリカ勤務時代に磨いた。そしたら、アメリカ軍の特殊部隊からスカウトされたよ。アフガンで偵察任務にって。ギャラは破格だったので二つ返事。それが地獄見る羽目さ」
そう言って若槻は一旦口を閉じた。煙草が吸いたそうだったが、未成年の蓮も龍馬も吸わない、瑠璃も吸わないので誰も持ってなかった。仕方ないので、龍馬が水筒を差しだすと、若槻は受け取り一気に飲み、口を拭う。
「アフガニスタンの戦場は悲惨らしかったと聴いてますよ。偵察任務はそんなに過酷だったんですか?」
一息入れた若槻に蓮が訪ねる。




