若槻一樹という男
神殿の様な造りの建物は、かって何らかの宗教の本部だったと瑠璃は説明した。
「私が住み着く前の話しやから、ようはわからんわいねぇ」
瑠璃の独懐を聴きながら蓮と龍馬は疾風に、罠の警戒をさせる。石造りの建物は所々が苔むしており、長い間放置された事を物語っていた。蓮は、炎を操れる為に蛇のごとくサーモカメラの様に熱源を見分けられる。電磁波でレーダー出来る千堂や美結が、戦列から離れた現在は疾風の鼻と蓮の熱源探知が探敵の手段であった。
「鼠以外反応無いよ。妖獣や妖魔もいない」
「此処は聖域らしく妖獣妖魔は寄り付きもしないさね」
蓮の報告に瑠璃が答える。
幾つかの階段と角を通り抜け細長い通路に入った時だった。突然銃撃された。狙いは出鱈目、明らかに自動トラップと思われる。念の為に瑠璃を安全な所に潜ませ、蓮が前面に突撃と見せかけて、銃撃の発射点の後ろに龍馬がテレポーテーションで跳ぶ。
「トラップやったよ。蓮君。ソ連製トカレフ、若槻の銃や」
龍馬が報告する。
「これで、若槻は銃は無しか・・・。弓とかナイフ、槍とか有るから丸腰は無いと思うけど」
蓮は龍馬に問い掛けた。
「そやな。サバイバルの達人やから、何でも武器にしよるやろ」
「一樹は悪あがきするのかぇ。大人しゅう投降せんのかいな」
瑠璃の問い掛けには、二人共に
「分かりません」
「若槻次第やな」
皆目といった所だ。その他に罠の存在は無く、一行は奥の部屋にたどり着く。
若槻一樹はそこに居た。
「あんたら何者だい?瑠璃様は転生なさった様だが、風格で解る。黒龍会の関係者じゃないし。警察が日本刀振り回す時代じゃない。俺を捕まえに来たようだが」
「警察の依頼承ったトラブルシューターや」
龍馬がはしょって答える。
「大人しく投降してください」
蓮が通告し、愛刀〈十六夜〉を突き付けた。若槻は両手を挙げて
「抵抗はしない。ただ、俺の話し聴いて欲しい。瑠璃様に」
降参の意を示して頼む。どうする?と、いった風情で龍馬が蓮を見る。応援の龍馬ではなく、本来の作戦遂行者の蓮に決定権を委ねる様だ。
「蓮。私からもお願いするよ。一樹の話し聴いてやりたい」
瑠璃も蓮に頼む。
「良いでしょう。その前に、身体検査と覚醒剤を渡して下さい。後、拘束はさせていただきます」
蓮が言う。
「もちろん良いさ。覚醒剤は少し使わせてもらったがな」
若槻は素直に応じる。用心して龍馬が身体検査を行い、警察から預かっていた手錠をかける。その間、蓮は若槻に十六夜を突き付けていた。覚醒剤のアタッシュケースを確認して中身が有る事と、封の空いた袋から少量とり検査キットで覚醒剤である青色の反応を確認した。
「で、何を聴いて欲しいんや?一樹」
瑠璃が優しく若槻に問い掛ける。




