最危険区画3
一行は慎重に幻獣街の住人によって出来た獣道を、進む。あちらこちらに罠が仕掛けられて居て、5メートルも進むと疾風が、警戒の唸りをあげる。止まると周りから、獣か妖獣が襲ってきた。その度、千堂、美結、蓮が特技で襲って来たのを消し炭に変える。遼と龍馬が罠に岩を投げて作動させて解除。琢磨が瑠璃とマダムの守りに回る。この手順で一時間半ほどかけて、最危険区画の中央区迄進んだ時だった。
遼が岩を投げて作動させると、十数本の矢が飛んで来たのだ。慌ててかわしたが、一本が遼の右頬を掠めた。赤い筋の傷を負った。蓮が慌てるでもなく、
「危なかったですね」
と、声をかける。遼も
「かすり傷で済んで御の字」
返す。
「治療せんとね」
美結がナイツ製の治療テープを、傷口を洗って消毒してから貼った。
「これでOK」
進行を再開する。矢の罠はその後も有ったが対処法として、疾風が見つけたら後退してから龍馬がテレポーテーションで岩を飛ばす、進む速度は半分になったが怪我をする者は現れなかった。
そうして更に一時間半経過した時。遼が、突然咳込んだ。口から血の色の花弁が舞う。それは文学的な例えではない、花弁が実際に舞ったのだ。
「血花草!?」
瑠璃とマダムが顔色を変えて叫ぶ。
「何なんですか?」
「何やねん?」
蓮と千堂が、同時に聞く。
「動物の体に寄生して肺で開花する吸血植物さね。ほっとくと失血死する。一樹の奴、矢じりに種仕込んで居たようだわいな。早く枯れさせなきゃ成らない。治療薬は毒でも有るので調合は遼の体質に合わせなきゃいけない、手持じゃあ駄目さね。龍馬、家迄遼と私を飛ばしておくれな」
マダムが落ち着きを取り戻して言う。
「はい」
龍馬が短く答え、遼を抱き抱えたマダム・マルソーを両手で触れると、二人は消えた。バディを失った疾風が、
「くーん」
と、悲しく哭いた。
「大丈夫や、疾風。マダムは世界一の魔道士やからすぐにな遼はんの血花草は枯れる。ま、作戦には帰ってこれんやろけどな。罠の発見はお前の鼻が頼りや。頼むで」
千堂が疾風を励ます。
「円の言う通り。頼むで疾風!」
美結が更に景気付ける。
しかし、冷静に考えて罠により戦力を二人失った。若槻のサバイバル術はナイツのエージェントに通用するのである。道案内は瑠璃が未だ残っているので問題無いが、疾風の特技〈狼牙天翔〉は使えなくなった。爆発物は龍馬が転移させるしかない。この認識は瑠璃や琢磨を含めて皆が解っているが、行くしかないのである。最危険区画の最深部への道は後、4割程残っている。先は長かった。昨夜の11時から始まった作戦は、すでに8時間が経過した。




