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桜の世紀  作者: 愛媛のふーさん
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春の日

 終業式が終わり春休みがやって来た。緋村蓮は、クラスメイトというより付き合って3ヶ月の彼女の三島あずみと、一年後輩の村山真美と一緒に、地下鉄で都心のナイツ総合商社ビルに向かっている。

「平和ですねぇ。何事も無く進級も出来そうだし、言うことなし」

真美がのほほんと、嬉しそうに呟く。

「そうね」

あずみが返す。内心そろそろ良くない事件にぶつかる頃合いだなと、経験上わきまえてる蓮は

「真美ちゃんの初仕事そろそろだよ。この平和、楽しんで置きなよ」

囁く様に言う。あずみが、

「蓮たら水差して。何も起きないほうが良いじゃん」

周りに聞こえない様に声を低め

「蓮や真美ちゃんの仕事は荒事なんだから」

と付け足す。

 蓮と真美は異能者なのだ。大雑把な説明をするなら〈属性〉を持つ超常能力を発揮する一種の超能力者。あずみは普通の高校生に過ぎないが、真美が異能を発現する場に居合わせた事をきっかけに、異能者の秘密結社〈ナイツ〉に加わっている。異能者の二人は当然ナイツの構成員である。ナイツ総合商社はナイツの表向きの顔だ。三人はそこでバイト中という呈にして、エージェントとサポートメンバーとして活動している。真美はエージェントと言っても訓練のみで実際のナイツの仕事は未経験ではあるが。ナイツの仕事は異能者の特異能力が必要不可欠な物が殆どで、あずみが言う様に荒事だ。真美は格闘が不得手なので、スナイパーとして後衛からのフォアードの支援を主に鍛えられている。一方蓮は千堂円、コードネーム〈雷帝〉とバディを組み、愛刀〈十六夜〉の剣術格闘メインのオールラウンダーである。ちなみに千堂は、ボクシングスタイルの格闘メインのオールラウンダーである。真美のフォアードは添島琢磨という無尽蔵のスタミナと回復力を持つ格闘特化の狼男である。琢磨はもう破棄されて製造法はナイツの研究室のみにしかデータの存在しない、VR205という遺伝子組み換えで産まれた新薬で末期ガンを抑制できた結果、奇跡的に狼男になった大学生で伝説の狼男とは異なる。

 任務の性格と内容次第だが、何事か特異な解決困難な事案が起これば、真美と琢磨のバディが初仕事と目されている。真美のコードネームは〈水姫〉、琢磨はまんま〈ワーウルフ〉と訓練は一人前と合格ラインに達していたが、何事も無く平和な奇跡の様に貴重な日々が、続いたのだ。異能者の発現は人の死を伴うのが殆どで、異能者は忸怩じくじたる思いを抱えているのだが、平和な日々が真美の緊張感を間延びさせていた。其が奇跡だとは気付かずに。事件は絶えず起こっていたが、警察の処理できる範疇に収まっており、ニュースで伝わっていたが、芸能人のゴシップのほうが関心事という現代日本の表向きが裏切られない日々が、偽りではなかった。すでに3つの表沙汰に為らない事件を処理した蓮は、其が偽りの日々の合間の貴重な輝石だと熟知しており、緊張感を日々高めていくのである。経験者と未経験者の決定的な違いだ。地下鉄は都心の目的駅に滑り込む。果たして貴重な日々はいつまで続くのか?心許ない。

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