9月3日(2)「少女妄想中」
「どけどけどけどけぇ〜!退かない奴はくっみくみにしてやんよぉ〜♪」
「くみくみってどんな状態だよっ!?」
意味不明な台詞と共に暴走する名取 久美子ちゃん。
見た目は可愛くて小柄な女の子なのに、僕の手を引く力はとてもそんな見た目通りとはいかなかった。
「久美ちゃん萌え〜な状態でイッてしまうに決まっているだろうが馬鹿チンがっ!」
「そんな世界の常識みたいな言い方してるけどとっても小規模な常識だと思うんだよソレっ!?」
律儀に突っ込みを入れながら走るというのは結構骨が折れるんだけど・・・。
なんというか勢いのままで生きているような感じがヒシヒシと感じられる。 ある意味祈より性質が悪い。
だが、どちらも人の話を聞いてないというのは同じ様な気もするが・・・。
「どうした? 退屈そうなら俺様が良い話をしてやろうか?」
「どうしてこんな状況で退屈なんて単語が出てくるの!? 脳味噌の代わりに何が詰まってるの君!?」
走りながら喋るのってやってみると分かるけど結構大変なんだよ?
ちなみに僕は一応体は少しは鍛えているので大丈夫だけど、ほぼ全力疾走のまま先程からずっと走り続けてけしかも僕の手を引いているのが女の子なんだっていうんだから日本の未来派明るいよね。 もちろん本気で言ってるわけじゃない。
「昔サッカー漫画で武田というリベロが出ていた話があってな。 それか亀のミュータントの敵の方でもいいぞ?」
「そんな梅干と脳味噌タコ知らないよ!? 君何歳だよ!」
それかサラマ○ダーってシューティングゲームがあって、それの一番最初のボスが・・・。
いやいや、そうじゃなくて・・・。
「なんなんだよ君は! イキナリ手を掴んで走り出したりして・・・。 意味分からないよ」
僕は言いながらやっとの事で久美子ちゃんの手を振り払った。
そうされてむ〜と不満そうに唸ってきた。
「ふむぅ・・・。 意識の齟齬が生じたか・・・。 これは修正の必要があるわけだね」
「そご?」
「いや、適当に難しそうな単語を拾ってみただけ、気にするな。 ええと、貴方の名前はなんて言うのだ?」
「名前? 僕はミチオだよ」
「誰がファーストネームを言えと言った! 俺様はミドルネームを・・・じゃなかった、名字を聞いてるのだ!」
何故名前を聞いてくるのだろう? そう思ったが、名前が無いと呼ぶのに不便だとか、そういう理由だろうけど・・・
「名字? き・・・いや、小春 壬千夫だよ」
桐梨と言い掛けて慌てて訂正する。
桐梨 壬千夫だとね・・・。 字面が悪いんだよ。「キリナシミチオ」・・・なんだか救われない名前じゃない? キリが無い道を行く・・・みたいな。
「今お前あからさまに偽名を使っただろう?」
「な・・・」
久美子ちゃんは鋭くそれを読み取ってくる。 この子を舐めてはいけないかもしれない。
結構何も考えていなさそうで鋭い。
「ふん。 まあいい。 小春ちゃんかみっちょんか好きな方を選べ。 そちらで呼んでやろう」
「えと・・・僕年上だと思うんだけど・・・」
「しゃらっぷ! 貴様の口は愚痴と言い訳とクーミンの愛らしい唇を奪う為にあるのかっ! この軟弱者がぁっ!」
「無茶苦茶だよっ!?」
この少女と話しているとまともに話が進まない。 というか一番最後は絶対に無いからっ!?
「って事でみっちょんにけってー」
「さっき選べとか言ってなかった!?」
「けってー」
棒読みで繰り返し言ってくる。
僕はみっちょん。 コンゴトモヨロシク・・・。
って、何処かの悪魔召還プログラムみたいなノリになっちゃったけど違う!
今後ともヨロシクするつもりは微塵も無いよ。
「まぁまぁ。 可愛い愛称は可愛い子の特権だぞぅ? 胸を張ればいいんだ。 あぁ胸は無いか」
「僕は男だってばっ!?」
「怒りっぽいヤツだなぁ〜? 朝食抜いたのかにゃ?」
「あぁ! 君のせいでね! 元々僕はこんなんじゃないよ!」
「ほほう。 という事は会って間もないというのに・・・俺様色に染まってしまったという事だなみっちょん。 かわいいやつめ」
「だ・・・誰かこの子抹殺してくれ・・・」
僕は裏の稼業を遂行したくなったけど、無報酬だし考えるのをやめる事にした。
だが、とにかくこの子からラビアンローズについて聞かないと・・・。折角朝食を抜いたのに意味が無い。
「ね、ねえ久美子ちゃん。 ちょっと聞きたいんだけど・・・」
「うん? なんだね? スリーサイズなら76・54・74」
「もう少し頑張った方が・・。 じゃなくて! そんなの聞いてないよ!?」
「おいっ! 今サラっと酷い事言ってなかったか!?」
「気のせいだよ。 そうじゃなくて、最近変な人に付きまとわれたりしなかったかな?」
「んん〜? 新手のナンパ文句かにゃ?」
「・・・」
僕は無言で久美子ちゃんの頭を殴った。
「あいたぁ〜!? 何するんだ君はぁ! か弱い乙女の頭をぶつなんて人類半分の敵だぞぉ!」
「その「か弱い乙女の頭」から突撃してきた人の台詞!? 今殴った手の方が痛かったよ!?」
久美子ちゃんを殴った手がジンジンと痛んだ。 それは女の子を殴ったという心の痛みとか、そんな繊細な物ではなく、ただ単純に頭が固いらしい。
「人の話を聞いてよ? 僕だって暴力に訴えたくないし・・・」
「・・・嘘つけぇ! 今殴った瞬間スッキリした顔してやがったくせにぃ! サドだサドだ! さどみっちょんだぁ!」
何か関節技みたいに聞こえるけど・・・。
久美子ちゃんは頭を抱えて騒ぎ、泣き出してしまった。
たぶん嘘泣きだろうけど、目の前で泣かれたら困るというか・・・。
こんな朝早くから御近所さんに迷惑というか・・・。
思いっきり僕に非は無いハズなのに罪悪感が生まれてくるから困る。
あ〜なんで僕はこんな女の子で悩んだりばっかりなんだろう・・・。
祈といい、例のエージェント集団といい・・・。
「久美子ちゃん〜。 そんなトコで泣いてたら人が集まってきちゃうよ。 ええと・・・どっかでご飯でもおごってあげようか?」
泣いている子供には飴玉を。
使い古された手だが、僕は他に思いつかなかった。
そんな子供騙しが通用するとは勿論思ってなかったのだけど、女子高生と言えどもやはり子供だった。
「何!? ふふふ・・・もはや訂正は出来んぞ大尉! この先のエンジェリック・メイデンで優雅な朝食といこうでは無いか!」
誰が大尉だよ・・・。
「な・・・なんだか恥ずかしい名前だねそこ・・・。 ファンシーなグッツでも売ってそうな・・・」
「それはヴィクト○ア・メイデンの間違いだから気にするなよ。 俺様の言ったのは洋菓子店だ」
「へ・・・へ〜」
どっちにしろ僕が入ると浮いてしまいそうな店の名前だなぁ・・・。
そういえばエージェント集団の名前も「ラビアンローズ」とかって昨日のパソコンでの検索結果に洋菓子店だとかお花の教室だとか、そういう店ばっかり引っ掛かったけど・・・。
もしかしてラビアンローズの首謀者はそっちの趣味?
なんにせよ、僕は久美子ちゃんに連れられて一軒の洋菓子屋にやってきた。
そこにはオープンカフェがあり、僕等はそこに二人で座る事にした。
本当は室内で話したかったのだが、久美子ちゃんが「外!」と聞かなかったのでしょうがない。
「私ココア〜生クリームたっぷりでよろしく〜」
「僕はダージリンと洋梨のタルトとハニーワッフルで」
店はお洒落な雰囲気の店だった。 店内では無かったが、テーブルの周りには庭園のように花が飾られていた。
色々な種類の花に囲まれながらお茶をするというのも中々良い嗜好ではあるけど・・・。
やっぱり僕には合わないかもしれない。
「あれ? 久美子ちゃん朝食って言ってたのに食べないの?」
「ん〜? あぁ、来たのはいいけど良く考えたら私ダイエット中だったのだ〜。 うぅ・・・残念」
そう言ってお腹を抱えて切なそうにする久美子ちゃん。
だったら生クリームたっぷりのココアも駄目なんじゃないだろうか?とは思ったが、それぐらいならいいのかもしれない。
でも、久美子ちゃんはダイエットが必要なぐらい太っているわけでは無い。
この年頃の女の子は何かとダイエットとか言っているけど育ち盛りの時期にそういう事をすると年を取ってから体を壊しやすいと思うのだけど・・・。
よし。
僕は一つ決意して注文が届くのを待った。
しばらくして僕のダージリンとタルトとワッフルが、久美子ちゃんのココアが届けられた。
僕はタルトとワッフルの皿が一緒だったので、ダージリンのカップが乗ったソーサーを取り出して、その上にワッフルを置いて久美子ちゃんの前に出した。
「ふへ?」
「あげるよ。 朝からそんな事してると倒れちゃうよ? それ一個ぐらいだったら大丈夫だろうしね」
元々驕りって事だから僕のサイフの中身は変わらないしね。
いくら今日あったばかりの子でも飢えているのは可哀相だし・・・。
昔飢えた姉妹が居た話を聞いたからという事も少しはある。罪滅ぼしとはちょっと方向性が違う気がしたが、こういうのは自己満足みたいなものだね。 折角だから付き合ってもらおう。
「みっちょん・・・」
目の前に置かれたワッフルと僕を交互に見て、ポカンとしている久美子ちゃんに一度頷いてあげる。 それを見て彼女も無言で頷いてワッフルの乗った皿を引き寄せた。
「そ・・・そうまで言うなら食べてやる! 俺様は今から北京ダックだぁ〜〜!」
「それは食べすぎだと思う・・・」
北京ダックは餌を一杯食べさせて太らせるっていうけど・・・。 ワッフルも北京ダックの餌のコーンも同じ穀物だし似た様なもんなのかなぁ?
ワッフルを一口パクリと齧ってとても幸せそうな顔をする久美子ちゃん。
やっぱり無理してたんだね。
久美子ちゃんってなんか面白い。
少し久美子ちゃん本人に興味が沸いて来ている自分を自覚する。
だが、本来の目的を忘れる程、僕は愚かじゃない。
「そうそう。 久美子ちゃん。改めて聞きたいんだけど、ラビアンローズって知ってる?」
「む? またそれかね? 最近良く聞くね〜」
ココアに乗った生クリームをペロペロと舐めながら答える久美子ちゃん。 スプーン使おうよ・・・。
「あ、って事は接触があったんだ?」
「うむ。 俺様が欲しいって言われたんで「百合の趣味は無い!」とキッパリ言ってやったぞ」
ガクンと僕はテーブルに額を打ち付けた。
何処から突っ込んでいいのか分からないけど、とりあえず彼女は誘いを断ったらしい。
「な・・・なるほど・・・。 他には何か言ってなかった? その・・・組織の事とか」
「ん〜ん。 なんだか世界平和がどうとか言ってたけど〜新興宗教に興味無いから聞いてない」
久美子ちゃんはどうやら宗教の勧誘だと思っていたらしい。
だが、これはそんな気楽にしてしまえる事では無いのだ。
まぁ、似たようなものだけどね実際。
あぁいう組織は凡人には理解できないような主張をして、それを正当化しようと活動する。
ちなみにエージェントというのは諜報人という事だ。
分かりやすく言えばスパイ。
という事はラビアンローズは何処かの国から派遣されているのかもしれない。
それがこの日本ならいいが、何処かの大きな国だったら・・・。
それは僕個人レベルの問題では無く、国家全体としての大問題だ。
僕は日本人だから一応この国が好きだし、何か悪辣な事を目的とした集団なのだとしたら放ってはおけない。
僕一人がどうにかして何とかなるとは思わなかったが、何もしないよりはよっぽどマシだろう。
それにはまず、彼女達ラビアンローズの目的を知る必要がある。
それに・・・彼女達は何故この名取 久美子を狙うのか・・・。
ただの変な女の子にしか見えないのだけど・・・。
「ぷふぃ〜♪ 我は満足だぞみっちょん〜」
考え事をしている内に久美子ちゃんは食べ終わったようで、ニコニコと笑ってこちらを見ていた。
本当にただの女の子にしか・・・。
ん?
「久美子ちゃん? 口にクリームついてるよ」
「なにゅっ!? ・・・む〜」
丁度頬の辺りに白いクリームが付いていた。 久美子ちゃんはゴシゴシと猫が顔を洗うようにするが、どうしてかクリームがついた所だけ器用にさけて擦ってしまっていた。
「あぁ・・・服が汚れるよ? ほら、ここだよ」
僕は見てられなくて久美子ちゃんの頬についたクリームを指ですくって取ってあげた。
「うん。 取れた。 むぐむぐ」
「!? ・・・あ、ありがと・・・・・・」
何故かそうされて久美子ちゃんが急に驚いたように目が大きくなった。
そして今度は恥ずかしそうに下を向いてしまう。
あれ? どうしたんだろう?
そう思っていると、僕はある事に気が付いた。
僕は無意識に指を咥えていた。 生クリームのついた指を・・・。
「お・・・おわぁっ!?」
「・・・・・・」
無意識だといえど、僕はなんて事をしてるんだ!? 女の子の頬についたクリームを・・・
うわぁ・・・変態だよ・・・。
「くうぅ・・・。 みっちょん・・・・・中々手強いな。 乙女の柔肌をイキナリ触れてきたと思ったら触れた指を嘗め回す等と・・・。 しかも貴様それ天然だなぁぁ!?」
「お・・・女の子が嘗め回すとか言わないのっ!」
久美子ちゃんの生々しい台詞にどぎまぎしてしまう。
「わ・・・わざとじゃないし、そんな事言ったら生クリームつけたままの久美子ちゃんが悪いんじゃないかぁ!」
責任転嫁過ぎるが、混乱している為かそんな事を言ってしまった。
「そんな事言ってみっちょんは本当は俺様に激しいチュッスがしたいんだろう! 正直に言えこのロリお兄さん!」
チュッスって・・・今日始めて会ったのにそんな事思うわけないじゃないか!
「そ・・・そんなのもうしたくないよ!」
「何? ・・・貴様誰としたぁぁぁぁ!!」
うわっ!? 僕今何を口走ったの!? 昨晩の事引きずった事を言ってるし!?
言う相手が違うってば・・・何してるんだよ僕・・・。
「そ・・・そんな事君に関係無いだろ」
本当に関係無いので言うと、久美子ちゃんはますます声を荒らげて言ってきた。
「関係大有りだぁぁぁ! 俺様が目を付けた男が女付きだったとは許せんぞ! おらおらおらおらぁ! 相手はどんな子だぁ! 神妙に吐け吐け吐けぇ〜」
何処のお代官様だよ!? というか目を付けたって何さ?!
「そ・・・そんな事より! 久美子ちゃんって今家出してるんだよね? どうして家を出たの?」
なにやら危険な気がしたのでさっさと話題を変える事にする。
久美子ちゃんは納得していなかったが、その内容に眉をひそめながら聞き返してきた。
「む? なんでそんな事まで知っている? 貴様・・・さては追跡者だな! 英語でストーカーという意味だ!」
「君とは今日初めて会ったばかりでしょ!? そうじゃなくて、君の家のお父さんの珈琲屋の常連だってだけだよ」
さっき玄さんが言ってたのを聞いたばかりなだけだけど、ウソの情報では無いハズだ。
確か「強いやつに会いに行く」って書置きをして家を出たという事らしいが・・・。
もしかして、それで僕を「発見」? 僕は「強いやつ」じゃないんだけど・・・。
「あ〜・・・それは若気の至りっていうか〜・・・。 ね、年頃の女の子には良くある事なんだけど・・・」
「ふぅん? 家を出てまで武者修行? 女の子がそんな事しちゃ駄目だと思うけど・・・」
「いや・・・俺様も年頃なのに恋沙汰というのが今まで一度も無いのだ。 そこでだな。 男・・・すなわち「強そうなやつ」を探してたのだが・・・」
「・・・・・・それって逆ナンしに行ったって事?」
久美子ちゃんは頭を縦に振った。
とてもしょうも無い理由だった。
それでわざわざ家出って・・・。 やる事が極端だよこの子・・・。
「まぁ、俺様より強い男なんてそうそう居なくてな。 それで急遽趣旨を変えてみようと思ったわけだ」
嫌な予感がした。
最近こんな予感ばかりするのだけど、どうしてだろう・・・。 しかもその予感は大体高確率で的中する。
悪い結果で。
「強さより顔に切り替えたわけだが、すぐに見付かって良かったぞ♪ なぁみっちょん?」
「・・・・・・」
僕は無言でサイフから5千円札を取り出して、テーブルにそっと置いた。
そのまま椅子から立ち上がり、久美子ちゃんに視線を合わせないようにして・・・
一気に駆ける!
「あ、おいっ!? 逃げるなぁ〜〜!」
「そんな理由で人を拉致する人と一緒に居たくありませんっ!」
激しく身の危険を感じて僕は自分でも驚く程の脚力を発揮してエンジェリック・メイデンから遠ざかる。
まだ聞きたい事はあったのだが、そんな事より我が身の方が大事だった。
僕は後ろを振り返らずに全力で走る。
「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」
ついさっきも全力疾走したばかりなのですぐに息が上がってしまう。
だが、止まる訳にはいかない。
ここでこんな運命の悪戯に身を任せたままだと体がいくつあっても足りない・・・。
僕は3日前から始まった災難から逃げるかのように一心不乱で走り続けた。
そんな僕の視界が急に少し暗くなった。
一瞬分からなかったが、それは僕の上に何かが通過した影だという事がすぐに分かった。
その後に前の前に着地する影。
それは名取 久美子ちゃんだった。
「うそぉぉぉぉぉぉ!?」
僕は力の限り走っていたハズだ。
それを追い付き、しかも僕を飛び越えるほどの脚力で現れた久美子ちゃん。
日本はいつからアスリート大国になったんですかっ!?
しかも主に女子の。
「俺様から逃げ様などとは片腹痛いぞみっちょん? 大人しく俺に貰われろ」
「ぜぇぜぇぜぇ・・・。 だ、だ・・・だからなんで人を物みたいに・・・って全然息切らしてないしっ!?」
とても涼しい顔でビシッと指差してくる久美子ちゃん。
それを見て僕はなんとなくラビアンローズが彼女を欲しがった理由が少し分かった気がした。
とんでも無い身体能力だ。
祈は別として、こんな普通そうに見える女の子がここまでの力があると知れば、どんな団体も欲しくなるかもしれない。
普通に陸上とかやってて欲しいとは思うけどね。
あぁ・・・このまま僕はこの女の子に陵辱されてしまうのかな・・・。
それだけなら悪くも無い気もしないでもないけど・・・。
僕だって心に決めた人と一緒になりたいんだけど・・・。
誰か・・・助けて・・・。
そんな願いが通じたのか、僕等の前に新たな闖入者が現れた。
「あら? こんな所に二人まとめてなんて・・・。 しかもブラッディ・イーターは弱ってるみたいね。 なんてラッキーなのかしら」
それは・・・味方じゃなかった。
ラビアンローズの小木曽さん。
・・・・・今日は厄日っ!?
この世に神は居ないのかっ!?
・・・・・・わがままな神様なら一人知ってるけど、今は学校へ行っているので期待も出来ない。
絶体絶命だった。
【聖夜に銃声を 9月3日(2)「少女妄想中」終わり (3)へ続く】