流石ヒロインだね。1話
「ライラお嬢様おはようございます」
「ライラ様おはようございます!」
朝にリリアとフィーリアから起こされるのにも慣れてきた。
フィーリアが来てもう1周間が経った。
フィーリアは侍女見習いという建前に非常に熱心に取り組んでいる。
リリアに付き従い手伝いをしながら仕事を覚えていっている。
なかなかの飲み込みの早さだと思う。
今も私の朝の着替えを手伝ってくれている。
本題の魔法の訓練はアドゥレアさんが不在な事もあってうまくいっていない。
魔法をコントロールしようとすると目を焼くかと思うほどの光にフィーリアの身体が包まれるのだ。
そこに私の闇属性の魔法をぶつけることで相殺しているが上達する様子は感じられない。
今日はお父様達が戻ってくるのでアドゥレアさんも帰ってくる。
元から今日が訓練の初日の予定だったのだが早めに初めていたのだ。
残念なことにほとんど成果は無かったけどね。
ーーーー
「ライラ様、フィーリアさんの様子を見てどうでしたか?」
「うーん、どうかなぁ、コントロール出来ていないってことは分かるんですが…」
アドゥレアさんからの質問に、自分の率直な意見を述べてみる。
「自分の中の魔力をつかめていればコントロール出来るようになるはずです。フィーリアさん自分の中の魔力がわかりますか?」
「えっと、はい、私の中に魔力があることは分かります…ただ意識して使おうとすると溢れかえってしまって…」
「見たところ典型的な魔力暴走ですね…魔力を少しずつ汲みあげるような、井戸で水を汲むようなイメージで使えませんか?」
「あ、はい、やってみます…」
フィーリアはアドゥレアさんのアドバイスに従って試しているようだが魔力を引き出そうとした瞬間また光が溢れかえった。
そして私は闇属性の魔法をぶつけて相殺する。
「ごめんなさい、魔力を意識するともうダメです…」
フィーリアは自分の魔力暴走がどうにかなると思ってここに来たのだろう。
本当は私と同じお嬢様なのだ、きっと侍女見習いだって辛いはずなのに頑張っているのはこの為なのに…
私も、もっと力になりたいが…
「アドゥレアさん、フィーリアはどんな感じなんでしょう?」
「そうだな。例えるならば、まるで水風船のような魔力だな」
「水風船…それなら器を変えることはできないんですか?」
「それは無理だ、ここで言った器とは肉体のことなんだから」
「あ、あの、ライラ様アドゥレア様、なぜ器というような表現なのですか?」
「それは身体の中に魔力があるからだろう」
「ええ、魔力が身体の中にあるから器なんじゃないの?」
「魔力は身体を包むようにあるものじゃないですか?」
???
フィーリアの発言に私たちは顔を見合わせた。
ーーーー
結論から言えばフィーリアにとっての魔力のあり方は活性化していない魔力が常に身体を包んでいるという状態だった。
その為利用しようとすると全てが活性化し暴走するというものらしい。
アドゥレアさんが魔法を使い診断した結果溢れている魔力は暴走しているワケではないらしいのだ。
フィーリアの魔力そのものは身体の中から溢れ出たもので、量が多いからこそ起きた現象だったが魔力を身体の中に収めることはできた。これで使う分の魔力を用意出来るようになり、魔力暴走も起きなくなったのだった。
しかし、その身体に収めるというのが大変だった。
「くっ、無理です、苦しい…!」
「我慢しなさい、今ライラ様が闇属性の魔力で押し返してくれてるんだから!」
「もうフィーリアに密着するくらい抑えつけてます!これが限界です!」
「フィーリア今の感覚を覚えて、あなたは魔力で器が押し開かれてるんじゃなくて魔力を収めることを理解できていなかっただけよ!私の診立てではあなたの器なら問題ないはずよ!」
「アドゥレアさんが言うんだから間違いないよ!頑張ってフィーリア!」
「う、うん!私は 頑張る!くっ…!」
そして大格闘のすえフィーリアは自分の中にある光の魔力の制御をできるようになったのだった。
「ライラ様、アドゥレア様ありがとうございました!これで魔法が使えるようになります!」
「魔法の訓練はこれからだから、まだまだゴールではない。気を抜かず努力してくれ」
「私は結局そんなに役に立たなかったかな、でもフィーリアが良くなってくれて嬉しいよ」
「いえいえ、ここに来れたのことそのものがライラ様のおかげですし光属性の魔力の暴走を抑えて下さったのもライラ様じゃないですか!」
「そうだな、闇属性の魔力と光属性の魔力の持ち主2人が協力しあえるというのは良いことじゃないか。これからも魔力暴走じゃなくても魔法の暴発はありえる。そんな時に相殺できる属性を持つものがいることは有難いことだよ」
「はい、頑張ります!ライラ様もよろしくお願いします!」
「う、うん。こちらこそよろしくね」
元気になったフィーリアの勢いには押され気味だけど、やっぱりこの子もヒロインなのだと感じる。
せっかくリアルフィーリアと仲良くなれそうなのだ。
フィーリアといるとモヤモヤするが、私は神子だとか抜きに可愛がってみせる!
ーーーー
フィーリアが来てからかなりの時間が経ったころ。
今はお昼寝から目覚めてお茶をするところだ。
今日はアドゥレアさんもいないしリリアとミミとノルルも含めて5人でトランプをしている。
「うわぁー、リリア様は普通に強いしフィーリアちゃんも運が良いし勝てないよぉ〜」
「ミミ違うわよ、これはライラ様の魔法の訓練、つまり魔法を使ってイカサマして良いのよ」
「私は風の属性だから利用できないよ!」
「あら、あなたもそれなりに魔力があるのだから使い方次第よ、ですよねリリアさん」
「ええ、今はそういう訓練の時間でしょ?魔法でイカサマを仕掛けて、相手の魔法を見抜く。高度な魔法戦では必要な技術ね。フィーリアちゃんにはまだ難しいだろうけどライラは闇属性とはいえ気付かせないのが上手ね」
「リリアありがとう、そんなに褒められるとくすぐったいな」
優秀な魔法使いは属性が何であれ魔法の気配に敏感になる。
属性によって敏感さに差があったり、私の闇属性の魔法のように隠蔽することも得意だったりと個性もあるのだけれどね。
フィーリアは魔法を使って自分に幸運の加護を発動している。当たり前のように私にまでかけてきたので断ったりするはめになったが…
流石にリリアは年季が違う、水と火の属性を同時に利用していることは分かったが何が起きているのだろうか…
昔話した時基本属性だから2属性持ちでも珍しく無いなんて言ってたがリリア以外に見たことないし、基本属性でもあそこまで操れるなら最早上位属性より優位なのでは無いだろうか。
ノルルは秘密主義らしくミミでも属性を知らないらしい。
私にも教えてくれなかった。
しかし、幸運の加護とかいう光属性魔法は闇属性で相殺するしか対策が無いがフィーリアの全力の魔法を相殺するにはこちらも全力でなくてはならず他の魔法に手が回せない。
その結果、訓練を優先し放置したのだが大暴れされている。
しかも私の隠蔽しながらのコソコソした魔法では打ち消されてしまい、少し幸運の効果が下がる程度だから手も出せない。
ゲームでも対ラスボス(私)で大活躍のキャラだったが現状では軽く泣きそうだ。
その悲しみはミミにぶつけさせてもらおう。
ミミにちょっと悪いなと思いつつも手を抜くつもりはなかった。