ゲームの設定はこんなの。1話
目が覚めた。
見上げる先は見慣れた天井。
まぁ、私のベッドな訳たけどね。
窓の外を見ると夕焼けにはまだだが、日が落ち始めているのが分かる。
はっ!…フィーリアとの挨拶が終わっていないが大丈夫だったのだろうか…
普通なら人を呼んで状況を把握した上で謝るなりもう一度場を設けるなりするべきだろうか。一応主人になるのだから、あまり下手にでたらダメなのかな…
ぐるぐると思考してしまいそうになる。
しかし今の私にはそれ以上に大きな問題がのしかかっている。
自分のライラという名前にも聞き覚えがある気がしたがすっかり失念していた…
もっと早くに気がつきたかったがヒロインである割に扱いのひどいキャラな為、あだ名やラスボスの名前で呼ばれることが多かったのが悪かったということにしておこう。
しかし、ゲームの世界、ゲームにそっくりな世界か…だいたいから前世の記憶があるなんておかしな状況なのだ。ゲームの世界とそっくりでも驚きはしないが。
しかし自分の状況がすこぶる悪い…
早急に対策をとりたい。が、とれる策は現状ではほとんど無い。
やはりフィーリアとの顔合わせを終わらせて考えるべきだな。
落ち着いてくるとマトモな思考ができ始めた。
よし人を呼ぼう。
「おーい、誰かいる?」
「失礼します。ライラお嬢様、起きられたのですね」
ベルを鳴らしながら声を外にかけると、扉が開いてノルルが入ってくる。
そして深々とお辞儀をして話はじめる。
「申し訳ありません。最近はお身体の調子も良くお元気そうでしたので、油断しておりました。アドゥレア様の診断ではお身体に異常は無いとのことです」
「うん、私はもう大丈夫だよ。今回はなんていうか、ビックリしすぎただけだからね…」
「ビックリですか?」
ノルルは首を傾げて不思議そうにしているが、説明が難しい。だいたいこの世界がゲーム…物語の世界、もしくはそっくりな世界なんて言っても理解されないだろう。
さらに問題なのが、私という転生者がいるのだから他にも転生者がいる可能性がある。
例えばヒロインの1人であるフィーリアとか…
「フィーリアさんはどうされましたか」
「はい、フィーリアさんは用意されていた部屋にお通ししてあります。ライラお嬢様がお元気になられたならお連れいたしますが、いかがなさいますか?」
「流石に私の部屋はちょっと…」
「侍女見習いということですから、この部屋も仕事場になりますし、お嬢様も本調子では無いのですからよろしいのでは無いですか?」
「ノルルはこういう時も強気な発言をしてくるね。まぁいいかな、服装を整えるから呼んできて」
「かしこまりました」
ノルルがそう言うと部屋の外にいき、すぐに戻ってきた。
誰かに言づけたのだろう。
「ではお手伝いいたします」
フィーリアとの対面を考えながら未来を変える方法に思いを巡らせた。
ーーー
「先ほどは失礼しました。私がライラ・ハルカミナです」
「私はフィーリア・タキーナムです。これからよろしくお願いします!」
先ほどよりは緊張していないがまだ硬さがある。まぁ6歳の貴族令嬢がこれから1人で働きに出るのだ、様々な理由があるとはいえ辛いものもあるだろう。
とはいえ仕事も侍女見習いと言いながらも魔法訓練の方がメインでもある。
週に3日は実家には帰るわけだし緩いものだ。6歳には厳しいかもしれないが。
「フィーリアさん、これからの事は聞いている?」
「はい、父とハルカミナ公爵様から聞いてます」
ふむ、受け答えはしっかりしてるが転生者かどうかは分からないな。
子供っぽくもあるし、貴族教育を受けているなら挨拶くらいはしっかりできるだろうし。
まぁ、その辺は様子を見ていく感じでいいか。
そうフィーリアについて考えていると、そのフィーリアがライラの顔をジッと見つめている。
相手の顔を長々と見つめるのは良いことでは無い、不敬と取られることもあるだろう。習わなかったのかな?
「フィーリアさん、あまり顔を見つめられると困るよ。人によっては不快になるから気をつけてね」
「は、はい!ごめんなさい」
ガバッとお辞儀をする。
優しい言葉を意識したが怖がらせてしまっただろうか…
「本当に、ごめんなさい…なんだかライラ様をずっと見ていたくなって…」
ふむ、無礼な様子も、転生者なんじゃないかと怪しく感じてしまう。
しかし少し話すと気がついた、この子の設定のせいだ。そのことに自分自身で気がついていないなら転生者で無いか転生者であってもゲームを知らない可能性がある。
ふむ、やはり一度しっかりとゲームについて見直しておくべきだな。
「今日は疲れてしまったから、お話の続きはまた明日しましょう?」
「はい、ライラ様!」
元気に答えてくれるのを見ると嬉しくなる。
病弱だったり闇の属性のせいで年の近い子と触れ合うことがほとんど無かった私としては侍女としてだけでなく友達になって欲しいって思う。
設定のせいでフィーリアを見ているとモヤモヤしてくるが、これは理性で抑えられる。むしろ私としてはフィーリアのことが1番好きなヒロインだったのだ。出来れば仲良くしたい。