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ヒロインでした。2話

5歳を超えてからは本格的に公爵家令嬢としての教育が始まった。


「ライラお嬢様、これから授業を始めさせていただきます」

「よろしくお願いします。サクタムーア先生」


サクタムーア先生はマナーの先生だ。マナーの授業はお辞儀、挨拶の言葉から始まりテーブルマナーからダンスといった淑女として必要なマナーを学ぶのだ。


こういった形で今の所はリリアの付き添いのもと行われている。


最近気がついたがリリアは乳母から私の侍女にジョブチェンジしていたようだ。

常にもう1人の母親に見守られているのは気恥ずかしさがある。


「ライラ様気が散っているようですね」


うっ、考え事をしていたら怒られてしまった。


「ライラお嬢様頑張って下さい」


リリアがいるせいでもあるんだよぉ…


「また気が散っているよですね…」

「ごめんなさい、集中します…」


こういった形で、マナーや語学、算術、歴史、文化といったことをまずは簡単なところから教えてもらっている。


もっとも算術に関しては問題無い。

現代の授業を受けた身としてはこの分なら学者や文官としてすらやっていけるかもしれない。

語学は全く知らない言葉なのだから正確な文法や文字を覚えるのは大変だった。

会話は出来てもこれができなければ文官なんぞなれるワケが無かったか…

歴史や文化はまぁまぁと言ったところ、マナーは今の所は楽しいが良く映画などては厳しい訓練をおこなって身体に覚えこませるようなモノを見る…これからが不安だ。


意外だったのは魔法の訓練を行うことが許されたことだった。


コレは危険な魔法使いを放置するより、私の良識を育みながら使い方を覚えさせる方がいいだろうということのようだ。


実際に道徳や倫理の授業が行われている。授業というより読み聞かせの本が好きだった冒険活劇から内容が変更になったと言った具合だったが。


しかし自分自身も闇の属性を使いこなせてもどう使えば良いのかわからない…

洗脳なんてしたくないし心が読めても人間不信になりそうだ…


グロい肉体への変化も使いたくは無いし…

闇の剣!みたいなカッコ良い能力が欲しかったモノだ。


まぁまだ5歳、勉強だってまだまだ本腰を入れたものではなくお試しなのだ。

気楽にいこうではないか。




ーーーー



魔法の訓練はアドゥレアさんが先生を務めるてくれている。

いつもいる訳じゃないからいない時は自習だけどね。


「魔法の訓練は魔法のもとになる魔力を引き出すことから始めよう」


そう言うと私の手を握った。


「目を瞑って、私の魔力を受け入れて」

「はい」


なにか熱い…いや暖かいものが流れてくるのを感じる。手のひらの熱じゃない、コレが魔力…


「そうしたらゆっくり自分の中に目を向けて…そして自分の中の力を思い描いて」


自分の中にも同じような力があるのだろう。

まだ自分の中には何も感じない、何かが違うのだろうか。


「落ち着いて、心の中に自分を沈めていくの」


私の気持ちを察してかアドゥレアさんがアドバイスをくれる。

自分の心の中に闇の属性の魔力があるはず…


そう意識した時、私の足下が無くなった、いや足下だけじゃない、アドゥレアさんも、何もかも闇に飲まれた…


何もない空間を私が漂う…コレが私の心の中なのかな?


きっとコレは私の魔力、だから怖いものじゃないはず。

落ち着いてもう一度、今度は心を鎮めるのだ。


フッと浮遊感を感じると私は今までのようにアドゥレアさんと手を繋いでいた。


「大丈夫か!?反応が急に無くなったようだが」

「大丈夫です。魔力見つかりました」


今の私には自分の中に魔力があるのがわかる。

コレが魔力…


「そうか、少し焦ったが問題無いようで良かった。何かあってはアルフとマリーに何をされるか分からないからな」


アドゥレアさんはおどけたように笑う。


「よし、大丈夫なら魔法の仕組みを簡単に説明しよう、魔法で重要なのは成功するイメージだ。そのイメージをもとに魔力を注ぎ込む。イメージが完成し、注ぎ込むだけの魔力があって、その魔力によって創り出せる現象ならば魔法は発動する。大まかにいえばこんな感じだ」


「呪文とか覚える訳じゃないんですか?」


「そうだな、呪文は完成させるイメージを補強できる。決められた呪文は先人達が創り出してきたものをイメージできるからより強いイメージに結びつくんだ」


なるほど、流石は魔法だ。イメージさえできれば魔法はできる。でも前世の記憶があるせいで魔法に対してのイメージが弱い私は不利なのかもしれない…


「先人が作ってきた魔法は効率よく魔力を使うイメージだ、イメージの無駄が省かれている。先人から学ぶことは多いよ。でも闇属性の魔法は使うことを禁じられているものも多いからイメージを掴みにくいと思う。使っていけないものも覚えなければならないから、次は簡単な座学にしよう」


そう言って本を渡してくれた。


「コレは闇属性の魔法についても書かれている本だよ。基本属性についても書いてあるからそっちも理解すると魔法そのものが分かりやすいと思う」


こうしてアドゥレアさんの指示のもと私は闇属性魔法を訓練していった。


「いや、しかしライラは本当に5歳かと思うほど頭が良いな」


おっと最近調子に乗りすぎたようだ…

いつかは打ち明けるとしてもまだ黙っていたい。


少しおとなしくしておかなければ…




ーーーー



1年たって今は6歳を2ヶ月ほど過ぎたころ。


「みんな、コレはゲームなんだから身分なんて気にせず本気できてよね?」

「お嬢様強すぎです!」

「流石にお嬢様には勝てませんよ」

「そんなこと無いって、じゃあもう一戦ね」

「もうイヤー!」

「え、ミミにノルル…もう一緒に遊んでくれないのか?」

「くっ、涙目のお嬢様を突き放せない…」

「騙されてはダメよミミ、お嬢様は闇属性の魔法でイカサマしてくる気まんまんなんだから」


闇の属性の訓練は成果をあげトランプゲームで負けなしになっていた…


闇属性の魔法は精神に影響を及ぼすものが多い。

だから1年程度しか訓練していない私でも何となく引きたくないなと思わせたり、行けそうだという気持ちを感じ取ることでカードゲームでは無双できた。


なんか思ってたのとは違うが、アドゥレアさんの指示で、訓練のひとつとして始めたトランプではメイド達と仲良くなれたし闇属性の魔法も万々歳だ。


余談だがミミは魔法を使わずにやってもトランプで負ける気がしないくらい表情に出るタイプだ。逆にノルルはtheポーカーフェイスでやりにくい相手だ。


正直これ以上の闇属性の魔法をやるのは自分でも怖いのでこの辺までが良いのかもしれないな。




ーーーー





「いや、来ないで。闇の魔法は怖い魔法なんでしょ!」


貴族の子供が集まる親子サロンのような場所での言葉。

正直予想はしていたが、結構ショックだった。

相手の親は子爵家だったこともあり平謝りしていたが、周りにあるのは、どれも変わらず私を冷ややかに見ている目とコソコソと囁かれる悪口だった。


結局早々と帰ることになった訳だが結構堪えた。そして挽回する方法もよく分からないのが問題だ。

だって洗脳できるやつの近くには行きたくないし心だって読まれたくはないだろう…

うーん、コレはダメなやつだな…


まだ日も高いうちに部屋に戻り悶々としていると人が来た。


「お嬢様ー、お暇だったら訓練でカードゲームしませんか?」

ミミがやってきた…

ふむ、こいつは空気が読めないか噂を拾う能力が低いらしい…


「うわー、やっぱり勝てない!」


魔法なんて使わずにボコボコにしてやった、魔法なんかなくてもミミには負けないのだ。

少しスッキリしたかもしれない、ミミには悪いが気分転換になったな。

なんて思っているもミミが笑顔で私の目を見つめながら呟く。


「やっぱりお嬢様は魔法に頼って人を蔑ろにする人じゃあ、無いですね」


カッと顔が赤くなったことだろう…うつむいてしまった。

ミミはどうやら元気づけようとしてくれたらしい。


嬉しさと自分の小ささと恥ずかしさでミミの顔が見れない…


「お、お嬢様どうしたんですか!?泣かないで下さい!私が悪かったです!でも、私はお嬢様に元気になってもらいたくてッ!」


ミミが私を抱きしめながら謝ってくる。

どうやら自分は泣いているらしい、でもコレは悲しいからじゃない。自分を信じてくれる人がいるってわかった事が弱った心には堪らなく嬉しかったからだ。


「お嬢様!お嬢様!」


困惑しているミミには悪いがもう少しこのままでいよう。

ミミのやり方は強引すぎるし私みたいに察しの良い方だから良かったようなものなのだ。

決してやり込められたのが悔しいからでは無い。


その後メイド達がかわりばんこに顔を見にきては割と遠回しに慰めてきやがったが本当に6歳なら特に何も感じれなかったぞと文句を言ってやりたくもあった。

この気持ちも、きっと照れ隠しなんかでは無いはずだ。



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