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メガネ神話紀行  作者: 北条三蔵
第2章
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雑誌『眼鏡譚』記事1

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 言葉やしぐさと同じように、視線は人を誘惑するのに大きな役割を果たす。視線は人の考えや意図、感情を暗黙のうちに伝えるからだ。

 では、視線にそのような表情を持たせるにあたって、メガネは邪魔者になってしまうだろうか? いや、視線は、メガネによって強調されることもある。例えばフレームの隙間からのぞく目は、何もないときよりも、かえって人の注意を引きつける。目とフレームの対比が、目に宿る意図を際立たせるためだ。

 レンズに色がついていて、視線が隠れてしまったらどうだろうか? それは、隠されているものを見たいという欲望を喚起し、また、レンズの向こうにあるであろう眼差しを想像させ、好奇心をかきたてる。見えない視線はいかなる感情を有しているのだろうかと。

 目に結びつく力は多義的であり、そこにはさまざまな意思が隠されている。大きく開いた決意の目、鋭く光る疑いの目、暗く澱んだ害意の目……それら豊穣なる目から発される視線は、世界に相応の影響を、あるいは結果をもたらすだろう。そしてそれはメガネによって、より肥沃に増幅されうる。メガネは、さまざまなかたちで視線の価値を高め、時にはその価値を変換し、人を惑わせる。

 本誌は、メガネに誘惑された人々の集う町・サヴァーの今日の姿をお伝えし、もってその精神文化を読み解くべく、創刊されたものである。

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          ――『眼鏡譚(がんきょうたん)』創刊号巻頭言より抜粋。

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