幕間4
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闇夜に紛れ、ミフラは街路を歩いていた。その両目は緑色に輝いている。
ゆっくりと歩みを進め、あたりを注意深く確認しながら、ミフラはひとり小声で話していた。周囲に人の気配はない。
「こちらの者が調べたところと、私自身の調査を合わせて考えると、どうやら<あの石>の持ち主がいろいろと事件を起こしているようです。多数の女性を<魅了>していることと、盗みも働いているようですね。
――はい。どうやらこれは四十年ほど前にも同様のことがあったらしいのですが、まあ、それについてはおいておきます。
――<石>の持ち主は、<石>の力を、魅了として発動させているのは間違いないでしょう。この星の人が<石>の力をそのように明確な機能として使用できていることには疑問があったのですが、ようやく推測が立ちました。
――この土地の祭事においては、人々は仮装するのが伝統であるようで、その衣装の一つにレンズのついた仮面があるのです。おそらく<あの石>を、レンズに加工した者がいたのでしょう。そしてそれを仮面に用いた……メガネのレンズとしても用いているかもしれません。
――はい。そうして特定の形にしてしまったことで、<石>の力が一つの方向に固定されたのです。それがこの星の人でも扱えている理由なのでしょう。見た目には、普通の仮面・メガネとほとんど変わりないはずです。それゆえ怪しまれず、怪しむ者がいても<石>の力で視線を誤誘導してしまえばよい。視線の誤誘導により他者から認識されないようにしたり、何か別物を見たような気にさせるのは、魅了の一環ですからね。
――まったく、<あの石>をレンズにしてしまうとは、突飛なことをする人がいるものです。原形を崩してしまったことで、余計に感知しにくくなってしまったに違いありません。
――さて、どうしたものでしょうか。
――仮に私がこの<石>の持ち主を見つけることができたとしても、私の視線も誤誘導され、認識を外されてしまうかもしれません。いえ、もしかすると、すでに何度かされているかも。
――情けないなんて言われましても。我々とて万能じゃないのですから。
――さすがに完全な<魅了>まではされませんよ。
――どうにかして、かの者の目を見ないで、かつその姿を<認識>できればよいのですが。そうすれば、こちらは目を閉じていても追尾はできます。あとは、一瞬のうちに処理してしまえば……。
――え? ええ、そうなのです。直接視認しないと感知できないのに、直接見たら視線を誤誘導されてしまうのです。いやはや、八方塞がりですね。ははは。
――怒らないでくださいよ。本当に困っているのです。それじゃまた連絡します」
ミフラはつぶやくのをやめ、暗闇に姿を消した。
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