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僕の彼女  作者: kikuna
3/13

③逃避行

 僕はミーヤに自分の上着を貸してやり、ショップが開くのを待って、一揃いを買ってあげたんだ。

 生まれて初めて、クレジットカードを使った。何となく、大人って思えて嬉しくなって、気が付くと、僕はミーヤの手を握っていた。


 トイレに行くふりをして、僕は会社に電話を掛ける。

 雨に濡れてしまって、具合が悪くなった僕は、3日間休みを取った。

 自分で自分の行動を笑ってしまう。

 どうでも良いと思っている会社なのに、上司の声にビクビクしている自分が鏡に映っている。


 「お待たせ」

 私服に着替えたミーヤは、僕に腕を回して来た。

 「ヒナタ。私、海が見たい」

 甘える様に言うミーヤに苦笑しながら、僕は頷き、二人分の切符を買ったんだ。

 ごった返していた人はもうほとんどいなくなったホーム。二人で電車を待つ。

 ずっと前からそうだったように、ミーヤは僕の腕を掴んだまま、嬉しそうに僕を時折見ては、はにかむように笑ってみせる。

 

 電車が僕らを海に届ける頃、雨はすっかり成りを潜めていた。

 その代わりに、雨で濁ってしまった海と青空が、二人を祝福するように広がり、ミーヤは子供のようにはしゃぎながら、僕の前を歩いて行く。

 風で髪がなびかないように、手で押さえながら、振り返り振り返り。

 「ねぇ、私たち、ちゃんと恋人同士に見えていると思う?」

 そう聞かれた僕は、上着のポケットに両手を突っ込み、何も答えずにいた。

 照れ隠しをしていたんだ。

 こんなの初めてだったから。

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