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僕の彼女  作者: kikuna
2/13

②初恋

 改札の前、僕は案内板に流れる文字を見上げていた。

 『大雨強風の為、大幅の遅れ』

 繰り返し流れるメッセージ。

 それを見上げては、後から来た人たちが右往左往して流れて行く。

 「なかなか、来そうもないですね」

 いつの間にか隣に立ったミーヤに話し掛けられた僕は、女性に免疫がなく、何も答えられず、ただじっと目を見張るように見つめ返していた。

 ああ濡れちゃった。と無邪気な声を上げながらスカートを絞り、これじゃ学校には行けないっていうか、行きたくないな。あなたは大学生? と、屈託のない笑顔で聞かれ、僕の顔は熱く火照る。

 普段の僕なら、絶対に無視をする。

 けど、その日は違っていた。

 「まぁ、そんなところ」

 「へ~何大学?」

 僕は黙り込んでしまった。

 嘘を吐き通せばいい。早稲田や慶応あたりを言っとけば、大概の女は喜ぶ。そんなもん、僕だって知っている。

 「分かる。その気持ち。私も高校の名前、言いたくないもん。偏差値で人の中身まで決められないでしょって、言いたくなるもん」

 「そんなことあったんだ」

 「あるある。もうしょっちゅう」

 僕は自分のカバンからタオルを出し、ミーヤに差し出す。

 ミーヤの髪が濡れていて、前髪からそのしずくが落ちて、目に入っていたから。

 「ありがとう」

 そして、僕は構外に目をやり言ったんだ。

 どうせこんな日は休講に決まっているって。

 僕はミーヤに、ニコッと微笑んで見せた。

 ぎこちない僕の笑みに、嬉しそうにミーヤは手を差し出した。

 「私、篠原美耶子。ミーヤって呼んでいいよ。よろしくね」

 「ぼ、俺は、日向健人」

 「ふ~ん、日向君っていうんだ。ヒナタ。ケント。ケンちゃん。ヒーケン。ケン。やっぱり、ヒナタが一番しっくりくるかな。ヒナタって呼んでもいい? ね、ヒナタ。で、これからどうする? 私、このままだと風邪ひいちゃうかも」

 上目づかいで見られ、どぎまぎする僕に、ミーヤは言ったんだ。

 思い出が沢山欲しいって。





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