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超弩級戦艦、異世界にて出航せよ!  作者: 峰原樹也
第一章 惑星ヘイズル
13/14

episode4:海戦の狼煙

「episode4:スツェール洋海戦・上」の加筆修正版&サブタイ変更です。


誤字脱字・行間変更等が有りましたら感想欄にてご報告をお願い致します。

    『彼の国の敗因は彼奴あやつに手を出した事だ』

               〜著 ロベルト・ギルガルゴの『亡国の過ち 第一章冒頭』より〜


───────────────────


 スツェール洋に煌めく三条の光が迸る。

そしてその光は一条一条が必殺の凶器であり、それに当たれば抉られたような傷跡を残し、爆発・炎上するヤバルギア級重巡洋艦【クァールツァパーゼ】。

 だが、その惨状はその一隻だけに留まらなかった。

ヤバルギア級と同じ末路を辿った───否、ヤバルギア級が同じ末路を辿る事となった二隻のクォーツァー級駆逐艦の残骸がヤバルギア級の左右で派手に爆破炎上し、そして静かに沈んだ。


 この惨状を少し離れた場所でヤバルギア級を含む計四隻からなる第5試験艦隊艦隊司令官であるマクドウェル・シュナイツァー上等海佐らを乗せた救命ボートが静かに見ていた。


「は、はは....。もしかして俺達はヤバい(もん)に手を出してしまったのか....?ふ、ふふふ....ふはは....あはははははははははは!」


 そうつぶやくマクドウェルは顔を伏せ、震える手を押さえつけながら立ち、この惨状を作り上げた謎の船元凶に対して憎悪の笑い声を上げる。


「このツケは高いぞ!黒の色鋼(イロガネ)ぇぇぇえッ!!」


 両手を八の字に開き、そう高らかに叫んだ。

 これは後に歴史家達の見解でローゼンシュタイン帝国所属艦隊《第5試験艦隊》が謎の船に惨敗したこの戦闘を「スツェール洋海戦」と呼ばれる事になるのはそう遠くない未来であろう。



──────


 冒頭の惨状が起きる二時間前───第5試験艦隊の面々は緊張感に包まれていた。

それもその筈、先程まで第5試験艦隊の四つの魔力駆動エンジンの振動しかなかったからだ。

 だが、彼らは知らない。

自ら行った試験砲撃、それも魔法を使った砲撃で、味方に付ければ富を、敵に回せば災厄として周囲の国々にばらまく天使とも悪魔とも言えない兵器を呼び寄せることとなる事となるのは。


 彼らが今使用しているソナー技術は彼らの母国であり、軍事国家でもある帝国北部位置する隣国、軍事同盟国の【機甲皇国ルフェス】に漂流した水中を潜ることを前提にした船、つまり現代で言えば潜水艦にあったソナー技術を流用・転用し、またそれを独自の技術魔術で改修・改良され、当初の設計より大型ではあるが約52マイル(約80,450m)までの探知が可能となった。

 そして、それを更に改修・改良・小型化した惑星ヘイズル初の軍用ソナーを搭載したのが第5試験艦隊の旗艦であるヤバルギア級重巡洋艦なのである。ちなみにこの軍用ソナーの探知範囲は約67マイル(約107,803m)まで拡張され、より広範囲な探査が可能となった。


 閑話休題。

 彼らが試射した方角には陸地程濃くない魔力溜りスポットがあり、圧縮され、突き進みながら魔力の残滓をばら撒く魔力収束光が通過した。

魔力溜りスポットが通常の濃度より上がり過ぎ、生き物が生息出来ない海域となった。

その弊害として魔力溜りスポットより外からの生き物が近寄らないのはもとより、そこに元から生息していたであろう魚類や下位の魚型魔獣は魔力収束光が通過するとそれらの亡骸が浮かび、一瞬にしてその海域が死の海と成り代わってしまった。


 そんな魚類や魚型魔獣の死体が浮かぶ死の海には一隻の船が浮かんでいた。

その船──否、その艦の正体は神界から『破壊と創世の神 キナールレイン』の転移により惑星ヘイズルへと船出を果たした超弩級戦艦〈黒鋼(クロガネ)〉である。


「転移完了....現在座標を再算出....」


 黒鋼の前艦橋の淵で髪の長く、女の子っぽい顔つきと体つきの黒のワンピースを着た人が立っていた。

彼女(?)の名前はクロガネ。

 前世だと相良七洋(さがらななみ)と呼ばれていた男の娘で、とある切っ掛けで死亡し、前世の記憶をほぼ消して制御ユニットとして生まれ変わった者。

 その彼の周りには、宙に浮いた画面が忙しなく動き、キーパッドに関してはおよそ人間ではありえないスピードで打ち鳴らし、画面内の文字が下から上へと凄まじい速度で流れていく。


「座標特定....西経38.5度....北緯24.23度....現在地スツェール洋北東部....」


 クロガネは惑星ヘイズルに来てほんのわずかの間に座標と現在地が特定し、彼の前にあったこの星の地図───もちろんクロガネはこの星のことは何も知らない───が表示されている画面を左にスライドさせ、霧に包まれたスツェール洋を睨む。


ビーッ!ビーッ!


 と突如鳴り響く警告音を聞き、宙に浮いた画面のひとつを引き寄せたクロガネは眉を顰める。

画面中央に円形の図系に点在する赤い四つの点が上下左右に規則正しく並んでいた。

 実はクロガネが引き寄せた画面はこの《超弩級戦艦黒鋼(クロガネ)》に搭載されている自重という言葉を知らない女神特製ソナーから読み取ったやつで、流石に女神特製でも大陸内部の状況は解らないが各大陸の形が解るなかなかにぶっ壊れた性能を有していた。

───それ故にクロガネは現在地を即座に特定するのも容易いことだった。


「....重巡タイプが1....駆逐タイプが3」


 クロガネは引き寄せた(女神特製)ソナーを一瞥するとそう呟いた。

 なぜ重巡タイプや駆逐タイプを特定できたのは相手側から発する音波の反響で特定した為だ。

 ソナーには二種あり、パッシブとアクティブがあり、アクティブソナーは自ら音波を発して相手を捕捉する事が出来るが、逆に相手側から捕捉されると言う諸刃の剣の様な感じであるに対して、パッシブソナーは相手側が発したの反響だけを受け取ることが出来る。だがあくまで理論上だがソナー同士の相殺が出来る、とも言われている。

 そして今回クロガネが取った手法はパッシブソナーで、相手側が発した反響を利用し、相手側の編成が手に取る様に判別できたのである。


「....仮想敵を目前の艦隊に設定....」


 そうと決まればクロガネは目の前のキーパッドを指先が霞むくらいのスピードで打ち込み、


「主砲を一番から六番まで解放....」

自由魔素転換炉(エーテルコンバートリアクター)稼働率安定....」


着々と戦闘準備が整い、


「敵対行為・意思を感知次第牽制射撃に以降....」


仮想標的を設定し、


「警告無視の場合....」


最後との言葉と共に────


「....仮想敵を撃破・撃沈とする」


─────エンターキーを叩いた。


~第5試験艦隊旗艦【クァールツァパーゼ】~


所属不明船アンノウンとの距離は!?」

「不明です!」


 マスト付近の甲板の壁に設置されている伝声管から伝わる伝達にイラつきながら、謎の船との距離を聞くマクドウェルは若干ではあるが冷や汗をかきながら前を向く。


「....クソッ!」


 実際にマクドウェルは謎の船との交戦を視野に入れ始めた時点から変な悪寒や逃げたいと思う焦燥感、足元が竦む様な恐怖、戦うなと思う心の中で響く警告音。


「クソッ!クソッ!クソッ!何だ!?なんだっ!?この感情はよ!?」


 それらすべてが混ざり合い、マクドウェル自身ですら言葉に出来ない感情に苛まれながら甲板を踏み砕く。

それを見たヤバルギアの搭乗員達は不安に駆られ、そのせいで全体の士気が著しく低下していた。


「各艦第一種戦闘配置!我が艦は一式対魔術弾頭A.M.WType1を仰角48.6度で発砲!次弾以降は第一主砲を実包で、第二主砲は魔砲を各自の判断で攻撃しろ!」


 だが、マクドウェルは自らの焦りからか、自らが下した判断でこの艦隊が壊滅するとは思ってもみなかった。

これは帝国史にて[スツェール洋北東部の屈辱]──スツェール洋海戦の始まりであった....。


目下の所々三部構成の予定ですがもしかしたら二部構成になるやも知れません。

後ほど「ヤバルギア重巡洋艦」のスペック情報を投稿します

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