episode2:昂ぶる怒気と迫る危機
絶対今年最後の投稿
誤字・脱字、不明瞭なシーンなどがありましたら文句を受けてつけておりますのでビシバシ言ってください。
皆様の不平不満が私の小説が上手くなる糧となります。よろしくお願いします。
「私に退艦....しろと言いたいのですか?」
目の前にいる男の突然の『退艦命令』に怒りのせいなのかは定かではないが、声が震える。
そして噛み締める力が強いのか、口の中も少し鉄の味もする。
「私に武勲を与えまい、与えたくない。そう思うのならそういえばいいッ!!」
「................」
彼女の怒りが、悲しみが、悔しさが。
それらの負の感情を持って、目の前に居る男を憎々しげに睨め付ける。
だが、それでも男は黙っている。
あくまで彼が持つ己の信念を持って。
「なんとか言ったらどうなんだッ!マクドウェルッ!!」
その怒声と共に振り上げた足を床の甲板材を踏み割った。
そして姿勢を低く、右足を前に出し、体を斜めに捻り、腰の左に差したレイピアの柄をいつでも握れるように構える。
その構えは刀身を鞘の中で走らせ、デコピンと同様の効果をもたらす東洋の剣術である『抜刀術』の一つである『居合』を立った状態でやる『立合』に当たるだろう。
メイデーアが怒気を撒き散らしている一方、マクドウェルは落ち着き払っていた。
「はぁ....。お前は普段は冷静沈着だが、一度キレると話を聞かないし、冷静な判断はできないし....。なんで上官はこんな面倒臭い女を副官に任命したんやら....」
額を押さえ、ため息を漏らす。
それでもメイデーアは納得が行かないのか、未だ臨戦体勢を保っていた。
「(親も親だが子も子だなぁ....)」
そう思った彼はメイデーアの実の父親であるシュノーツ・レヒュン・マグクリフ伯爵は、この艦隊が所属する国―――〈ローゼンシュタイン帝国〉の軍事参謀を務めていたが軍上層部の決定に反感を持ち、決断を下した八名のうち三名を殺害後、処刑台にて打ち首に遭った経歴を持つ叛逆の一族の事を思い出していた。
「なぁメイデーア。確かにお前の父君がやった事は覆せねぇが、お前まで父君と同じ過ちを犯すのか?」
「........」
「それにマグクリフ一族の名誉を挽回する為に軍に身を投じたんじゃないのか?」
「チッ」
メイデーアはそう舌打ちすると渋々と、本当に渋々と構えを解いた。
しかし、まだ彼女には確認せねばならないことがあった。
「なら何故、この私とこんな平民風情と共に退艦せねばならないのです」
そう、マクドウェルが言っていた『退艦命令』に対する疑問である。
そして彼女が『平民風情』と呼び、蔑んだ感情で指差す方向にはゾンビと比べてみても遜色がなく、そして可哀想と思える程真っ青な顔色になったカウェンがいた。
「君達が退艦する理由は二つ」
マクドウェルはそう言うとメイデーアに向けて腕を伸びし指を二本立てる。
「まず一つ。確固たる証拠がない俺の勘だけど、恐らくこの艦は沈む」
そう言うと中指を折る。
「何故この艦が沈む?最新鋭艦のはずでは?」
そう彼女はマクドウェルに疑問を投げかけるが
「今話の途中だろ、質問するのは後だ。黙って聞いていろ」
と今はどうでもいい、という様な感じで一蹴した。
そして立てていた残りの人差指を折り、
「二つ目は君達にこの事を本国に伝えて欲しい為だ」
そう、言った。
実際問題、敵性個体や敵対勢力に関する事を貴族院又は元老院や王宮に報告するとなると、正規な手順で実行せねばならず、今回のこの事でも軍部を通じての報告になる。
その際に報告する者は貴族・平民と共に報告することが義務付けられ、その道中には監視を置く事も義務付けられている。
理由は虚偽報告を防ぐためであり、報告者が虚偽の申告をしても直ちに訂正ができるようにする為ではあるが、ローゼンシュタイン帝国の建国時からその手の虚偽申告がなかった為、所謂形だけはそうなった古代文化と化した。
「という訳で、お前らには最後尾のクォーツァー級に転属し、その場にて待機、戦闘後進路を転身し、本国に帰還しこの事を報告せよ!復唱せよ!」
マクドウェルはローゼンシュタイン帝国軍部に報告させる二人に復唱させ、〈ゼネラル・レーゼン〉に向かわせ、艦首に振り向き迫り来る謎の船を見据えて、
「さぁ、諸君!仕事の時間だ!」
そう宣言するのであった。
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第5試験艦隊と謎の船の接近まであと190km――――
第5試験艦隊の航行速度は16ノット前後です。
それでは皆さん、良い年末を(`・ω・´)ノシ