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第3章・新しい仲間

 

私がこの学校に入学してすぐに聞いた事だが、この学校を2年前に卒業した先輩の中に先生も手に負えないような問題児がいたらしい。その先輩は私が入学してすぐに転校してしまったらしいが、今でも生徒や先生の中で噂になっている。


 

そして、その問題児が再び私たちの前に姿を現すことになるなんて、誰が予想しただろう_____。








空雅がこの学校に転校してきてから、2週間がたった。空雅はすっかり学校にも慣れ、他の生徒ともなんら代わりのない生活を送れるようになってきた。1つ、慣れない事といえば・・・。


「か、かか、楓・・・///」


いまだに、私の事をすんなり名前で呼んだ事がないという事だ。


「女の名前も呼べないくせに・・。それでも男か?」


菜樹は空雅にそう言う。


「君だって、男じゃないじゃないかぁ!」


空雅は私だけでなく、他の女の子の名前も呼べないようだ。


「俺は外だけ女なんだ!他の奴らと一緒にするな!!」


菜樹はそう言うと、空雅に向かって消しゴムを投げつけた。


「いて!何するんだよ!」


と、まあ。こうやって空雅で遊ぶのが、最近のみんなの中でブームになっている。私は、空から来た空雅が、こうやって人間と一緒にうまくやっていけていて、安心していたところなのだ。


しかし、ロキ探しの方はなかなか進まず、どこから探せばいいのかも分からないのであった。何たって、世界には人間が数え切れないほどいるのだから。





 放課後は、ロキを探すためにベランダで話し合いをする時間になっている。


「ねえ、ロキがどんな人間になりそうかくらいは分からない?」


私は、なぜかベランダをほうきではいている空雅に話しかけた。空雅は手を止め、


「ロキは元々おとなしい子だけれど、性格を変えてるかもしれないから・・。そこまでは分からないんだよね〜。」


と、困ったように言った。


「じゃあ、この学校じゃないかもしれないって事だよね?」


と、私は空雅のところまで行って尋ねた。


「うん。でも、大人にはなれないと思うなぁ。だって中身は同じなんだから、元は子供なのに、大人を演じるのは難しいんじゃないかなぁ・・・。」


「じゃあ・・・そうやって、少しずつ絞っていくしかないね!」


私は明るく言った。


「か、楓・・。ここ、なんで穴開いてんの?」


空雅が、壁の穴を指して尋ねた。もちろん“楓”の部分だけ詰まらせて。


「穴・・・?ああ、それね先輩がやったんだって。」


私はあの噂の先輩の話をした。


「空雅は来たばっかだから知らないかもしれないけど。私たちの2個上でさ。すぐに、ケンカしたり物を壊したりして相当問題児だったらしいよ!」


「うわ・・怖いね。名前は?」


「それが、名前は分からないの・・。問題児とか、暴れん坊って呼ばれてるから。」


「それは、相当問題児だね・・・。」


と、空雅は苦笑いして言った。


「高校、行けたのかな・・?」


と、私は不思議になって言った。


「大丈夫なのかな・・?そういう人は・・。」


空雅は高校についても、勉強したらしい。


「空雅は人間の話についていけてすごいね!」


「いや・・。勉強したからだよ。僕は小心者だから・・・///」


空雅は照れくさそうに、そう言った。


「そう?でも、小心者はこんな所来られないって!」


私は本当にそう思って言った。


「そっか・・・。」


空雅は、また自然に顔が笑顔だった。


「うん!」



私は、いつまでも空雅のその笑顔を絶やさないようにしたいな・・・と思った。








その日から何日かたったある日の朝、校門の辺りで偶然空雅に会った。


「あ!空雅〜!!」


私は校門で突っ立っている空雅に声をかけた。空雅は私に気づくと、そのまま学校の方を指した。


「・・・へ?」


私は何が何だか分からないまま、空雅の所まで走って行った。校門から学校の方を見ると、たくさんの人が集まっている。


「あっちに何かあるのかなぁ・・。」


空雅も何が何だか分からないらしい。背伸びをしながらそう言った。


「ちょっと行ってくるね!」


私は空雅にそう言うと、野次馬の中に消えていった。


「大丈夫かなぁ・・・・。」


空雅は校門の上に乗って、野次馬の中を見てみた。その時、私はやっとかき分けて、間に来るとみんなの視線の先を見た。


「あれって、あの暴れん坊だよね・・。」


「どうしてここにいるんだ・・?」


という、周りの声。


「あ・・・・。」


空雅は校門の上から言った。


「うそ・・・。」


私は野次馬の中で言った。



そして、2人が思った。いや、ここにいる全員が思っただろう。






______あれが、噂の問題児・・・・!?























学校で噂だった暴れん坊。それが、今私たちの目の前にいる。


「でも、何でここに?しかも寝てるみたいだし・・。」


私は独り言を言った。


「寝てるよね・・。誰かを待ってたのかも。」


空雅はあの暴れん坊を見て言った。そう、暴れん坊は木の木陰で眠っているのだ。




キーンコーンカーンコーン______



チャイムが鳴った。もう、朝の会が始まる時間だ。


「おーい!何やってんだ〜?」


大貫先生の声がしてきた。


「先生、静かに!!」


隼が、先生に言っているようだ。しかし、もう遅かった。周りからは“キャーキャー”叫ぶ女子生徒の声や“ヤベェよ・・・。”などボソボソ話している男子生徒の声で、あふれている。

その視線の先には、



「ふぁぁ・・・。」


あの暴れん坊がムクッと立ち上がった。


「・・・・・・。」


沈黙が流れた。そのうちに1人、2人と次々に教室に戻っていくのが分かった。それがだんだん多くなっていったので、最後の方はほとんど全員が走ってその場から離れている。私も、とにかく安全な場所に行こうと思い、立ち上がったとたん。



ドカッ



誰かにぶつかった。そして、


「きゃっ!」


私はバランスを崩して転び、おまけに足までひねってしまった。


「いったぁ〜・・・。」 


周りを見ると、あっという間に誰もいなくなっていた。1人で座り込んでいる私と、校門からこちらを見ている空雅を除いて。


「おい!!楓―――!!!」


みんなは教室に戻って、窓からこっちを見ている。私は足が痛くて動けない。


「ど、どうしよう・・・。」


暴れん坊はこっちに気づいたらしい。ゆっくりこちらに歩いてきた。


「何、怖がってんだよ。」


「・・・・。」


暴れん坊は静かに言った。しかし、私は怖くて声が出せなかった。


「あ〜・・。つまんね・・。」


「・・・?」


何だ?どうしてそんなに寂しそうな顔をしているんだろう・・。


「何だよその目は!お前も怖いんだろ?さっさと逃げりゃーいいじゃねーか!!」


私はいきなり怒鳴られたのに驚いて、痛い足も忘れてその場から逃げて行った。


「良かった・・・。楓、大丈夫?」


芽衣は心配そうに私の顔をのぞきこんだ。


「・・・うん。」


私はさっきの顔が気になって仕方がなかった。


「ごめん、さっきすぐに助けに行けなくて・・。」


空雅が申し訳なさそうに謝った。


「いいよ。私たいしたケガしてないんだもん。」


私は笑顔で答えた。


「そっか・・。ありがと。」


空雅はホッとして、


「でも、気をつけなくちゃいけないよ?目つけられてたら大変だし・・。」


と言って、自分の席についた。






 休み時間。私は用事があって、職員室まで来ていた。その廊下に、あの暴れん坊が座り込んでいた。


「(どうりで、人が通らないわけだ・・・。)」


私はそんなことを考えながら、職員室に入った。


「先生、持って来ましたよ〜。」


「お、サンキュ〜。」


大貫先生はニコニコしている。


「どうしたんですか?嬉しい事でもあったんですか?」


私もニコニコして尋ねた。


「いや〜?何でもねーよ?」


「ホント?」


「ああ。その内お前らにも分かるからさ。」


先生は私の頭をなでると、職員室の奥へ入っていってしまった。




「その内分かることって何だろう・・・。」


私はそんな独り言を言いながら、職員室を出てきた。


「(まだいるよ〜・・・。)」


暴れん坊はまだ座っていた。


「(あれ・・・?)」


また寂しそうな顔だ・・。


「(どうしよう・・。話しかけようかな?話してみたら、案外いい人かもしれないし・・。)」


私はそんな感じでいろいろ頭で考えていた。その内に、暴れん坊の前まで来てしまった。



「・・・あ。」


「・・何だよ。」


「い、いえ!別に・・・。」


私はとっさに言ってしまった。私が“しまったなぁ・・。”と思っていた時、


「・・またお前かよ・・・。」


暴れん坊がぼそっとつぶやいた。


「・・・お、覚えてたんですね!」


私は大きな声になってしまった。


「何で、嬉しそうな顔してんだ?」


「はは。いや、覚えててくれたんだなって・・。」


私は笑顔で言った。


「は?・・何だよそれ・・。」


暴れん坊も少し笑っている。


「そういえば、どうしてあの時、あんな寂しそうな顔してたんですか・・?」


「んぁ!?な、何言ってんだよ!!」


暴れん坊は少し怒っているようなので、私は言ったことを後悔した。


「いや、いいです!ごめんなさい・・・!」


「あーもう、謝んな!!こっち来い!!」


私は暴れん坊にグイッと引っ張られた。


「・・ええ!?」





そしてそのまま、どこかに連れて行かれてしまった________。


















ここは、屋上だ。


「ちょ、何なんですか!?」


私は暴れん坊の手を振り払って言った。


「なぁ、授業サボっちゃわない?」


「嫌です!!私帰りま・・・・。」



キーンコーンカーンコーン_______



「・・あ。」


私は上を見上げて言った。


「あーあ、鳴っちまったな・・。」


暴れん坊は頭をかきながら言った。


「(まあ、いいや・・。)」


私も少しヤケクソになっている。


「あ、あの・・・・。」


「・・“伊吹”・・・。」


「・・え?」


「・・俺は伊吹(イブキ)だ。赤星(アカボシ)伊吹。」


伊吹は校庭の方を見ながら、言った。


「それと、敬語はいらない・・・。」


とも付け足した。


「・・へえ。私は、“楓”だよ。」


「って!いきなりかよ・・・。」


伊吹はカクッとなって言った。


「だって、敬語じゃなくていいって言ったでしょ?」


私はニコニコして言った。


「ま、まぁ。いいけどよ・・。」


伊吹は苦笑いで言った。


「敬語はめんどくさいもんね〜。」


私はケラケラ笑っている。


「楓って、俺の事怖くないのか?」


そんな私を見て、伊吹は不思議そうに尋ねた。


「え?だって、伊吹に私何もされてないもん。」


私はキョトンとして答えた。


「・・は?はははは・・・。確かにな〜。」


伊吹は笑って言った。いい顔もできるんだなと私は思った。


「ねえ、さっきも聞いたけどさ、何であんな寂しそうな顔してたの?」


「・・・そんなこと言われるのは初めてだな・・。」


「それって、伊吹が怖くてじゃない?」


「それだよ・・・。」


「・・え?」


伊吹の言葉に私は驚いた。


「それって?」


「・・怖がられる事。」


伊吹はまた、校庭の方を見て言った。


「・・・ホントはそういうの、あんまり好きじゃないんだ。」


「楓だから、言うけどさ。俺、人間じゃないんだ。」


「はぁ!?」


出た・・。2人目だよ・・。


「え?じゃあ、宇宙人・・?」


私は恐る恐る尋ねた。


「いやいやいやいや・・。星だよ!星座!」


「えええええ!?」


星座ということ自体はそこまで驚かなかったが(空雅もあるし)、伊吹が星座だったということで、かなり驚いた。


「まぁ聞け。で、俺はオリオン座なんだ。オリオンは元々人間で、毎日森で狩りをしていたわけだ______。」


  



  そんなある日。


___あんなところに女の人がいる・・。何やってんだろ?


  オリオンはこんな森の中、1人でいる女の人を見つけた。


___あの〜・・・。


  と声をかけた。女の人はきれいな髪を揺らし、サラッと振り返る。


___何か・・?


  オリオンは驚いた。なんとその女の人は女神だったからだ。


___あなたは、女神ですよね?


___そうよ?


___どうしてあなたのような人が、こんなところに?


___あなた、狩りをしているわね?私も狩りをしていたの。


  女神はニコッとして言った。


___そうなんですか!?


___ははは。じゃあ、一緒にやらない?


___はい!


    



 それから2人は毎日一緒に狩りをするようになった。それはあっという間にウワサになり、女神の兄の耳にも届いた。


___何だって!?人間なんかと一緒に!?


  それを知った女神の兄は、女神が帰ってくると、


___お前、オリオンという奴と一緒にいるらしいな。


___オリオンはいい人よ?


  女神は笑顔で言った。


___お前、まさか・・。そいつが好きなんじゃないだろうな・・?


  兄はまさかと思い、尋ねた。


___そうね・・。多分好きなんだと思う。


___な、何言ってるんだ!あいつは人間なんだ。お前は女神なんだぞ!?


___知っているわ!でも・・・・。


___駄目だ!!


  女神の兄はそう言って、女神とオリオンのことを反対した。


___オリオンめ・・。覚えていろ・・・。



    その日の夕方、女神の兄は海岸にオリオンを呼び出した。


___あれ?確か、ここで待ち合わせだったはずなのに・・・。


  兄の姿はないようだ。


___フッ。オリオンめ、終わりだな。


  岩陰に隠れているのは、兄だ。兄はそう言うと、毒サソリをオリオンがいる海岸に放した。


___いたっ!


  オリオンは足の方を見た。そこにはなんとサソリが歩いているではないか。


___どうして?・・・・・・・っぐあ!!



  バタッ



  オリオンはサソリの毒が回り、あっという間にその場に倒れてしまった。






    次の日の夕方、女神の兄は女神を海岸に呼び出した。


___何?またオリオンと私のこと反対するんでしょ?何言っても駄目なんだからね!


___違うよ。たまにはゆっくり話をしようと思ってさ。


  兄はニッコリして言った。


___まぁ、そういう事ならいいけど・・。


  女神はそう言って座り込んだ。


___狩りの方はどうなんだ?


  兄は海の方を見ながら尋ねた。


___結構出来てるわよ?そういえば、お兄ちゃんには見せたことなかったわね。今度見せてあげる。


___そうか、俺だってすごいんだぞ?


  兄はそう言って、海の向こうの方を指差した。


___あそこの黒い点だって当てることができるんだ。


  海の遠くの方に小さな小さな黒い点が見えている。


___まぁ。お前にはできないだろうけど・・・。


  兄がそう言うと、今まで黙っていた女神が口を開いた。


___できるわよ!私だって!


  そういって、自分の矢を取り出した。


___見ててよ!


  女神が矢を放つと、見事に矢は黒い点に当たった。


___ほら!できたわ!


  女神は後ろを振り返って言った。


___・・・あれ?


  しかし、そこにはもう兄の姿はなかった。





    その後、女神は自分が矢を当てた黒い点の正体を知って、驚いた。


___き、きゃああああああああああああ!!


  何と、その正体は兄の毒サソリに刺され、海に流されていたオリオンだったのだ。


___わ、私はオリオンを・・・?


  女神は自分の大好きだったオリオンを殺してしまったと思い、いつまでもいつまでもオリオンから離れなかった。


___ごめんね・・。ごめん・・オリオン。


  女神はいつまでも、いつまでも、謝り続けた。そして、


___私には大神のように、あなたを生き返らせることはできないわ・・。でも、あなたを星にすることならできる力を持ってる・・・。


  そう言うと、女神はオリオンを思いっきり空に打ち上げて、星に変えたそうだ。





「_____で、俺は星座になったんだ。」


伊吹はいつも間にか、その場にしゃがみ込んでいた。



___“悲しい過去を持っている人もたくさんいる。”



「そうだったんだ・・・。」


私は空雅が言っていたことを思い出した。


「俺は、女神に殺されたんだ・・・始めはそう思っていた。それで、誰も信用できなくなった。」


「じゃあ、さっきのことはどうして分かったの?」


「大神ゼウスが教えてくれた・・・。」


伊吹はうつむいたまま言った。


「でも、もう遅かったんだ。その頃にはもう、俺の周りには誰も寄ってこなくなっていて・・だから、それが分かってからも周りの人が、なかなか信用できない・・・。」


「・・・・。」


私は何を言えばいいのか分からない。


「俺はあの人に出会わなかったらよかった・・。人なんか、信用しなきゃよかったんだ・・・・。」


「でも、そんなこと言ってたら、いつまでも・・・・。」


私は伊吹に言った。


「駄目なんだよ・・。俺は・・・。」


伊吹はだんだん声が小さくなっている。





「でも、そうやって私に話してるじゃん!」


私は大きな声で言った。


「・・・・へ?」


伊吹は顔を上げた。


「そんな大事なことを、そうやって私に話してるじゃん!!」


「・・・・。」


「できないことは、ないよ!それに・・。」


「それに・・?」


伊吹は不思議そうに尋ねた。


「オリオンを自分が殺したって思い込んでる女神さんの方が、苦しんでるよ!今も・・・。」


私はさっきよりも大声で言った。


「・・・な、何言ってらぁ!」


伊吹が言った。


「(・・?壊れた?)」


私はそう思った。


「そんな事言う奴がいるとは思わなかった・・・。」


伊吹は立ち上がって言った。


「・・・・。」


「ぶっ・・・・・。」


「・・・ええ!?」


伊吹がいきなり笑い出した。


「な、何!?」


「お、お前・・。“女神さん”って何だよ?女神にさん付けしてどうすんだよ・・・。」


「あれ?だって偉い人だし・・!」


「あはははは・・・。絶対バカだろ〜・・・。」


「そうかなぁ・・あはははは・・・。」



2人の笑い声が、屋上で響いた。











 その帰り、空雅と一緒に歩いていた。


「何で、4時間目こなかったのさ!」


空雅は少し怒っているようだ。


「いや〜。ちょっと、伊吹に呼ばれちゃって・・。」


「伊吹!?誰だよ、その男!!」


「それは・・・って!彼氏みたいなこと言わない!」


私は笑いながら言った。


「ごめん、ごめん・・。で、誰?」


「暴れん坊だよ、あの問題児。」


私はそれを言ってから後悔した。


「えー!?あいつと一緒にいたの!?」


空雅はまた怒って言った。


「・・・うん。」


「もお〜あれだけ気をつけろって言ったのに〜・・・。」


「なぁ!楓!!」


隼が口をはさんだ。


「え!?」


私は驚いて、振り向いた。


「あの暴れん坊が!?あの人、心許した人じゃないと、名を明かさないんだってさ。すごいじゃん、楓。」


隼は身を乗り出して言った。


「・・それは、誰もそこまで親しくしようとしないからでしょ?」


私はサラッと言った。


「・・・え?」


みんなは驚いている。


「・・確かにな〜。そうかもしれない。」


菜樹が言った。


「伊吹は面白いよ!今度ここに連れてきてあげる。」


「おお〜。」


みんなはまた驚いていた。








 次の日の朝。私は1人で通学路を歩いていた。


「枯れ葉がいっぱいだな〜。」


私はそんな独り言を言って、今日の学校を楽しみに学校へ向かっていた。



トンッ



「・・あ。」


私は誰かに軽くぶつかった。上を見上げると、


「何だ?」


高校生の男の人だ。


「いってーなぁ・・・。」


「す、すいません、ごめんさい・・・!!」


私はすぐに謝った。しかし、


「・・・謝っても許してやんない。」


「・・え!?」


その高校生はニヤリとそう言うと、私はグイッと人気のないところに連れて行かれてしまった。





「ちょ、ちょっと!離してください!!止めてください!!」


私がどれだけいっても暴れても、離してはくれない。


「おーい、連れてきたぞ〜!」


高校生は誰かに手を振っている。


「・・・え?」


私は自分の目を疑った。


「おせーじゃん!」


「待ちくたびれた〜。」


「悪い、悪い・・。この子、暴れるからさ。」


彼が手を振る先には、この人の他に6人くらいの仲間が待っていたのだった。


「何?結構可愛いじゃ〜ん。」


と、私は高校生に頭をなでられた。


「(どうしよう・・このままじゃ・・・。)」


「こっち連れて来て〜。」


「は〜い!」


またグイッと引っ張られた。



「た、助けてーーーーーーー!!!」


私は精一杯の大声を出した。


「だ、さわぐな!うるせぇ!!」


私は相手がひるんだうちに、腕に噛み付いた。


「いってぇ!!」


少し離れた隙間からすり抜け、どうにか逃げ出すことができた。


「逃げたぞ!!」


「追いかけろ!絶対逃がすな!!」







 私は振り返らずとにかく走り続けた。


「こ、ここまで来たら・・。」


私は息を切らして言った。


「いたぞーー!!」


また高校生の声がした。


「ええーー!?」


私はまた走り始めた。しかし、体力には逆らえなくて足はだんだん止まっていった。そんな私の前に姿を現したのは、


「・・・・い、行き止まり!?」


私はすぐに引き返そうとしたが、遅かった。


「見つけたよ〜。」


ど、どうしよう・・・。


1番前にいる1人がこちらに近づいて来た。



うわああ!やられるーーーーー!!


“もうだめだ”と思い、私は目をつむった。相手はすぐそこまで近づいて来ている。


その時_____!!





ザッ




あ・・れ・・・?何も来ない・・・。


私はほんの少しだけ目を開けてみた。私の目の前は、なぜか影になっている。


「え・・・?」


恐る恐る目を開けてみると、


「く、空雅!?」


なんと空雅が私の前で大きく手を広げて、立ちふさがっているではないか。


「か、楓に手を出すな!・・・な、殴るなら、僕を殴れ!!」


空雅が高校生に向かって言っている。足はガクガクだが・・・。


「空雅・・・。何でいるの?」


「心配で、つけてた・・・///」


空雅はぼそっと言った。


「(つけてた!?)」


私は空雅の後ろでそう思った。


「おい、こらぁ!何こそこそ言ってんだ?おい!!」


高校生が怒鳴った。


「(どうしよう・・もう駄目かもしれない・・・・。)」


2人がそう思った。その時、





「オリャーーーーーーーー!!!」





バーンッ!!





「何やってんだああああああああ!!!」






私たちの目の前で叫んでいるのは伊吹だった。相手も、その声で少しビビッているようだ。


「ここは逃げるぞ!!」



伊吹は空雅と私の腕をつかんで、引っ張って行った______。

























 私たち3人は、校庭まで戻って来た。校庭にはウワサを聞きつけた野次馬でいっぱいだ。


「ここまでこれば大丈夫だろ・・・。」


伊吹はハアハア息を切らしながら言った。


「・・・あ、ありがとう。伊吹も空雅も・・・。」


私は改めて、2人に言った。


「いいよ。僕、結局何にもしてないし・・。」


空雅は少しへこんで言った。


「そうだよ!危ねーじゃねーか!!無茶すんな!!」


伊吹は空雅に向かって怒鳴った。


「だって・・・・。」


空雅は少し涙目だ。


「・・・・・・。」


伊吹はいきなり止まった。


「い、伊吹?」


私は伊吹に言った。伊吹は空雅に向かって、


「・・・・シリウ・・ス・・・?」


首をかしげながら言った。あまり自信はないようだ。


「へ・・・・?」


空雅は目を大きくして、伊吹を見つめた。


「シリウスか!?」


伊吹はだんだん笑顔になっていく。


「え・・何でそれを・・・・?」


空雅は混乱しているようだ。その内に、




「シリウスーーーーー!!!!」



ガバッ!!




伊吹が空雅に抱きついた。


「ええええええええええ!?」


私も空雅も驚いて、絶句してしまった。






 伊吹は落ち着き、空雅から離れ、その場に座り込んだ。空雅はヘタッとなり、私はまだ口を空けたままだった。少しの沈黙が流れたが、それは伊吹によって壊された。


「探したんだぜー?シリウス!でも、何となく行動で分かったぞ!!」


1人だけ元気だ。


「あ、あの〜・・。どちらさん・・・・?」


空雅は頭が痛そうだ。


「おーい!長い付き合いだろ!?ホントに分かんねえの!?」


伊吹は驚いているようだった。


「う〜ん・・・。この人、どっかで会った気がするなぁ・・・・。」


空雅はもう少しで思い出しそうというように、足をバタバタさせていた。


「あははは!・・ホント、お前って面白い奴だよな〜。」


そんな空雅を見て、伊吹は笑いながら言った。


「あ・・・・・!」


その言葉を聞いた空雅は小さく言った。そして、今度は大きな声で言った。


「オ、オリオン・・・?」


その瞬間、伊吹は目を丸くして


「分かったか・・・?」


と、ほとんど口パクで言った。空雅はうん、とうなずいて


「来てくれたの!?」


と、嬉しそうに言った。伊吹は思いっきり笑顔で、


「当ったり前だろ?」


と言い、コツッと空雅の頭を叩いた。




教室のみんなが驚いている。先生も呆然と見ているだけた。


「いいのかな・・、そろそろ戻らなくて・・・。」


私は教室の方を見て言った。


「いいんだよ・・。あいつらもセンコーも、俺の前だと何にもできないんだから。」


伊吹はしれっとして言った。


「しっかし、ここは何だぁ?せっかく俺が戻って来たっていうのに、誰も出迎えてくれやしない・・。」


「(それはあんたが怖いからだ・・!!)」


空雅と私は心の中でそう思った。


「伊吹、どうしてみんな伊吹を怖がってるの?ここ来たの初めてでしょ?」


空雅は不思議そうに尋ねた。


「あ〜。俺さ、前に来たんだよ!修行で。2年間くらい。」


「そうだったの!?」


空雅は大きな声になってしまった。


「楽しいもんかと思ってたのによ、勉強なんかつまんなくてな〜。もう嫌になったから、教室で暴れてみたんだ。そしたらそれが面白くて、やってるうちに“暴れん坊”とか“問題児”とか言われてたみたいだぜ?」


伊吹は楽しそうに話していた。


「伊吹と、空雅はどんな関係なの?」


私は2人を見ながら尋ねた。


「僕らは、親友とか、兄弟みたいな関係かな?いつも2人で一緒にいたからね!」


空雅も楽しそうに話した。


「そうそう、こいつ1人じゃ心配だからな!ロキがいなくなって、こいつも地球に行っちまって、俺は何もしないってわけにはいかねえだろ?だから、こうやって来てやったんだぜ?」


伊吹は得意げに話した。


「え・・・!?よく周りが許したね・・・。」


空雅はその事について驚いているようだ。


「んぁ!?許すも何も、勝手に来たし!」


伊吹は当たり前のように言った。


「えええええええええ!?」


空雅はまた叫んだ。


「大丈夫なの!?」


私も驚いて尋ねた。


「だって、言ったら絶対駄目って言うんだろ?だったら聞くだけ無駄だって!!」


伊吹はニタッとして言った。


「いいの・・?」


私は空雅に尋ねた。


「駄目駄目駄目・・。伊吹なんてなおさらだよ!オリオン座は夏以外、毎日出てるんだから!!」


空雅は伊吹に少し怒って言った。


「まあ、帰ったら、ど叱られるけどな・・・。」


伊吹はケラケラ笑いながらそう言うと、


「でも、お前の方が大事だし〜。」


と、当たり前のように付け加えた。


「しょうがないな・・・・。」


空雅はそう言いながらも、顔は少し嬉しそうに笑っているようだった。


「そういえば、伊吹さ。今までと全然キャラ違うじゃん!」


私は思い出したように言った。


「そりゃあ、作ってたもん。でも、こっちがホントだぞ?空雅の前だとちゃんと出せるんだ。」


「作ってたの〜!?」


私は怒ろうと思ったが、伊吹の笑顔を見て、私も笑ってしまった。






 「・・・じゃあ、そろそろ行こっか!」


空雅の提案で、私たちは教室へ戻る事にした。


「お前、空雅が選んだ仲間なんだろ?」


伊吹が突然私に話しかけた。


「え?あ、そう・・なのかな?」


私は自信なさそうに言った。それを見た空雅が、


「そうだよ!!」


と、大きな声で言った。


「じゃあ、俺は空雅と同じ奴を選んだわけか・・。まあ、これからよろしくな!お2人さん!!」


伊吹は空雅と私の肩を叩いて言った。


「え!?」


空雅と私は同時に言って、同時に振り向いた。


「あ!言ってなかったっけ?俺、今日からお前らと、この学校通うから!あまりの頭の悪さに、“もう一度中学生からやり直してこい!!”だってさ!!」


伊吹は頭をかきながら笑っていった。


「聞いてない!!!」


空雅と私は、また同時につっこんだ。









「そういえば、どうしてお互いの事が分かったの・・?」


私は席についた後、隣にいる空雅に話しかけた。


「初めて会った時と一緒だったから・・・・///」


「え?何って・・・?」


私は周りのざわつきで聞こえなかった。


「あ〜、長い付き合いだからだよ!///」



空雅は照れくさそうに、そう答えた_____。

















___最近ここに来た、オリオンって人。かなり乱暴らしいわよ?


  女神たちが、集まって話していた。シリウスはそれを聞いたが、自分には関係ないと思っていたのだった。


___シリウス!かくれんぼしよ?


  ロキがシリウスを引っ張って言った。


___よし!やろっか!


___シリウスが鬼ね!


  と、ロキはあっという間にいなくなってしまった。


___絶対見つけてやる!


  シリウスも、そう言って走りだした。

   宇宙は広い、そして、たくさん隠れる場所があった。星の後ろ。天の川の中・・・。


___いないなあ・・・。


  シリウスは困ってしまった。その時、



___助けて!!



  大きなクジラ(クジラ座)のそばで、ロキが叫んでいた。


___あ!あのクジラは危ない!!


  あのクジラは、何でも食べてしまうのだ。


___早く助けないと!!


  シリウスは何も考えず、とにかくロキを助けようと、クジラに向かって行った。そこを通りかかったのが、オリオンだった。オリオンはクジラに襲われているロキを見つけると、


___危ない!


  と、そこへ向かおうとした。しかし、先にシリウスがそこまで行っていたのだ。シリウスは、クジラとロキの間に入ると、手を大きく広げて、


___ロ、ロキに手を出すな!た、食べるなら僕を食べろ!!


  恐怖で足がガクガク震えている。しかし、クジラはシリウスには目もくれず、大きな口を空けた。



___うわーーーー!!



 ・・・・・・・・・・・・。




   急に辺りが静かになった。シリウスが恐る恐る目を開けてみると、前にはオリオンが立っていて、なんとクジラを矢で射止めていたのだ。


___おい・・、大丈夫か?


  オリオンは、そのままクジラを蹴り飛ばした。そして、シリウスの方を見て、


___無茶すんじゃねーよ!!


  と、怒鳴りつけた。


___だって・・・・・わあああああああん。


  空雅はオリオンが怖いのと、ホッとした安心感で、泣いてしまった。それを見たオリオンは、


___お前って、面白い奴だなあ・・・。


  そう言うと、柔らかい笑顔で笑った。


___あ・・・・。


  それを見たシリウスも涙が止まり、つられて柔らかく笑うのだった。


   



   それからだろうか、2人は仲良くなり、周りの人たちを驚かせたのは言うまでもない_____。











ありがとうございました^^

ここから伊吹もどんどん登場してきますw

またよろしくお願いします。

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