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第22話

 店の中は結構広く、小物がたくさん飾ってあって、ごちゃごちゃした感じだがわりと居心地は良かった。



「アタシの名前は、アイル。アンタ達は?」

「……私はセイディーン。こちらは私がお仕えしている主、リーファ様です」

「そこに座りな」



 アイルと名乗った女の人は、命令口調な感じではあるものの威張った感じではない。



「まず、アタシ達ストーンマスターは法外な報酬を要求したことはないよ。金持ちは別だが、求められた力の分に見合う報酬を貰っているだけさ。それがいつの間にか法外な報酬を請求していると世間に思われている。あまり知られていないことだが、それは偽ストーンマスターどものせいだ。まず、奴らは、タチの悪い事に魔道石の力が使える。ただアタシ達と違うのは、一時的な効果だけをもたらすだけってとこさ。そこに奴らは目をつけた。支払われた報酬に見合う分しか効果が持続しないと説明する。大抵の依頼主はそれでは困る。そこにつけ込むのさ。効果を持続させたきゃ、もっと金を出せとね。しかし、結局効果は持続しない。その事がわかった時にはソイツはどこかに雲隠れ、結果、ストーンマスターのイメージダウンさ」

「……」

「騙されたのがアンタのどんな知り合いか知らないが、アタシ達が使った力の効果は永久だ。途中で切れるってことはない。ただ、使う石の質によって、効果に差が出てくる。力のない石を使えばそれなりの効果しかない。金のない奴はそれでもいいと言ってこの店に来る。アタシ達の魔道力だっていつかは尽きる。それ相応の報酬を頂かなきゃいつか食いっぱぐれるのさ。慈善心だけで力を使うわけにはいかないんだよ」

「そんな説明をする為にわざわざこの店に呼んだんですか?」



 私の右に座ったセイディーンはアイルの話にも冷たい対応だ。

 こんなセイディーンははじめて見る。

 いったいどうしてしまったのかと困惑していると、アイルはニヤニヤと笑い出した。



「……ったく、これだから察しのいい男は嫌いだよ。アタシがこの店に呼んだのはこれさ」



 そう言ってアイルは自分の首にかけていたアクセサリーを指で持ち上げた。



「アンタのお仕えしている主様からアタシと同じ気を感じた。もしかして少しは石を使えるんじゃないかと思ってね」

「わ、私ですか?」

「そう、魔道石は使ったことはあるかい?」

「いいえ」

「じゃあ、試しに使ってみなよ」

「えっと……」



 アイルはネックレスの石の1つを掴み、引きちぎって私の方に差し出す。


 使ってみろと言われても、はいそうですかと返事が出来るはずもなく、困惑したままセイディーンを見る。

 そんな私にセイディーンは優しく笑って頷いた。



「どうぞ。リーファ様が望むままに」

「うん……」

「癒しの呪文はわかるかい?」



 おずおずと手を出してその石を受け取ったとたん、石が温かいことに気づいた。



「呪文は前にお教えしたのと同じですよ」

「……クレイアラル! 癒しの光よ、癒せ!」



 呪文はセイディーンの力を使うのと同じものを唱える。


 とたん持っていた石が光だし、その光が辺りに満ちると、それぞれの体内に吸収されていった。

 魔道発動後、体内から疲労感がなくなっていた。



「やっぱりね。アンタは偽の奴らとは違う。本物のストーンマスターの才能があるよ」

「え……」

「その力をどうするかは自分で決めればいい。運命は自分の選択1つで変わるものなんだからね。……そうだ。アンタにいいものをあげるよ。アタシ達ストーンマスターが必ず持っている物さ」



 アイルはそう言って、奥に引っ込み、すぐに手に本を持って出て来た。



「この書物はストーンマスターに伝わる書物で、魔道石についての説明と呪文、そして最後のページには質のいい魔道石を集めて作った首飾りが付いている。アタシにはもう不要の物だからアンタにあげるよ」

「……えっと、あ、ありがとうございます」

「よく考えて使いな。石はすべて使えるからね」



 受け取った本を開いてみたけれど、やっぱり読めない文字が並んでいる。

 前に召喚されたスフィアの日記は読めたのだから、これは根本的に私がいた世界とは文字が違うのだろう。

 私が読めなくてもセイディーンには読めるので、ここは彼に読んでもらうしかない。



「何から何まで、本当にありがとうございます」

「いいんだよ。ちゃんと報酬はもう貰ってんだからさ」

「え?」

「アンタがここに入る前に、入り口にいた男に癒しがいるなら店のそばにいろって言っておいたのさ。さっきアンタが力を使った時のおこぼれは、彼らに癒しをもたらしているだろう」

「……」



 アイルが店に入る時に話していたのはこのことだったのだ。

 ちゃっかり利用されていたものの、もらったものの方が大きいので苦笑するにとどめる事にした。

 セイディーンも小さく笑っている。



「自分の疲労もこれで治せる。起き上がれないほど疲れたら魔道石を使ってみな」

「え?」



 起き上がれないほどの疲労。

 それは宝珠に力を奪われた時に使えるということなのだろう。


 さっきからアイルは意味深な言葉ばかりを並べている。

 だが私はこれでセイディーンの魔道力を使わずに済む。

 そのことが一番嬉しかった。


 その後、気になる店先を覗きながら夕方前には神殿に入った。


 イルカイ神殿の神官長は白髪の老人で耳が遠いらしく、セイディーンは話をするのに苦労している様子はちょっと笑いを誘うようなものだった。


 宝珠に力を送るのは明日になり、私は神殿で一番上等な部屋をあてがわれ、休む事になった。

 私はアイルにもらった本をセイディーンに読んで聞かせてもらい、明日に使えそうな呪文をいくつか覚える。


 この魔道石が、宝珠に力を奪われた後の力を回復してくれるといいのだけれど……。

 期待しつつもやっぱり不安だった。



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