友人の訪問。
救出劇の後の間のパートです!
色々と必要なことを書いていたら長くなってしまいました><;
すいません><;
最後まで読んでくださるととても嬉しいです!
「あーだりぃ・・・疲れた・・・・モウダメダ・・・・」
玄関を開け武器を置き、髪紐を解きながらソファへ倒れこんだ見鏡。その表情には疲労の色と多少の後悔があった。決して認めないだろうが。
ソファに身を預けまどろんでいると、突如玄関の戸を激しく叩く音が聞こえた。
しばらく無視していると、更に激しくなり、今度は声まで聞こえた。
「氷雨君!いるんでしょ!?あけて!」
その声を聞くと、見鏡はゆっくりと体を起こし、トボトボと玄関へ向かった。
(全く疲れてるんだから静かにしてほしぃもんだ・・・・)
心の中で愚痴を垂れながら玄関の鍵を開けるといきなりドアが開き、バゴン!というコミカルな音と共に見鏡の顔へ直撃した。
「っつ・・・・」
飛び込んできたのは伊井島だった。
「だ、大丈夫だったの!?怪我は!?してない!?あ!顔に怪我してるじゃない!血も出てる!」
「あのなぁ・・・・この顔の傷は今!お前が!つけたんだよ!お 前 が!」
「えっと・・・・・・・・・え?」
「だぁから!今お前が勢い良く開けたドアにぶつかったんだよ!鍵開けたんだからそこに人間がいることぐらい想像付くだろ!」
そう見鏡に怒鳴られた伊井島は ショボン という音がしそうなほどに体から力が抜けていった。
「まぁまぁ。伊井島さんも氷雨を心配してきたんだから。そんな言い方もないだろう。」
「あぁ?命の恩人にドア開けてタックルかますやつを怒るのに言い方を考えないといけないのか!?ってか何でお前が い る ん だ よ !」
氷雨を落ち着けようとしたのはレヴィア・シン。
17歳にしてレストナム騎士団の先鋭兵士が集まる一番隊隊長を務める金髪碧眼の少年だった。
がたいはそこまでいいほうではなく、身長も165cmと小柄だ。
「ちょっと!シン様にそんな言い方は無いんじゃないの!?」
そこで口を挟んできたのはシンリアというこれまた金髪の髪を真っ直ぐに肩まで伸ばした女性だった。
女性といえども17歳だが。このシンリアはシンのファンクラブの会長で常にシンの隣にいる。
だが姓名が分からないところから始まりほとんどが正体不明の人間だった。
これもキャラ作りといった噂もあるほどだった。
「おい、お前こそ命の、ましてや村の恩人にその言い方はないんじゃないか?」
そういったのは本条。彼は基本的に我関せずが好きなタイプなのだ。伊井島が関係していない限りではあるが。
「別に俺は村の人間を救った覚えはねぇよ。っつかさっきの質問に答えろよ。何でお前がいるんだよ。」
露骨にいやな顔をされたのが多少ショックそうな顔をしたがすぐに表情を引き締め話を始めた。
三つ。
レストナムから見鏡に三つ用件があるそうだ。
一つ。レストナム騎士団への入隊。
二つ。レストナム議事会への出頭。
三つ。夕暮れ祭の武闘会への出場。
以上。
「・・・は?」
「だから、以上の三つだ。」
「いや、それは分かった。1・2の願いはつまりあれか?せっかく強いんだから国に尽くせやってことか?」
「まぁ、言ってしまえばそうだな。」
その言葉を聞くと、やってられないな、と吐き捨て言った。
同時に思った。
(さて、能力のことはばれているのかばれていないのか、慎重にやる必要はあるな・・・)
「お断りだ。」
まさか断れると思っていなかったレヴィアは動揺した。
なにせ、レストナム騎士団に入ればかなりの優待遇があるし、ある種の安全も確保される。何より回りから羨望の眼差しが向けられるのだ。学園生徒の9割が騎士団への入隊を希望していることからも分かるだろう。
「し、しかしだな。」
「話は最後まで聞くもんだ。大方三つ目は妥協点だろ?どちらも拒否されることがあった場合の保護策だ。一般の学生に国の要求が全てはねられたとばれちゃあ恥だもんな?」
「ぐ・・・」
レヴィアは返す言葉もなかった。まさにその通りなのだ。この国は一見民のことを思っているように見えるがその実自分の体面と安全しか考えていない。恐らく場合によってはナルに国を売るだろう。
しかしそれは騎士団隊長になってから初めて分かることだといわれている。何故一般人の彼が知っているのだろうか。
「――――い おい、きいてんのか?」
声を掛けられ意識を戻すと、意外な言葉が聞こえた。
「だから、参加してやるよ。武闘会だけは参加してやるって言ってんだ。」
「ほ、本当か?」
「あぁ。ってか武闘会なんて去年まで無かったよな、何でまた急に。」
「私が説明してあげましょう!」
何故か誇らしげな顔で会話に割って入ってくるシンリア
「って言うか家に上げなさいよ。」
「取り敢えずその武闘会の話を聞いてからだな。」
「頭硬いわね。」
「うるせぇなここで俺がお願いを全部はねたらおまえの愛しのシン様が怒られるわけだがいいのか?」
顔をわずかに上に反らし見下す形で挑発する見鏡。
「卑怯者。」
「どうとでも。早く説明をしてくれないか?夕暮れ祭は明日だろ?」
「そ・・・そうね。」
以下説明。
夕暮れ祭。
それは月が三つ揃う夕暮れに行われる祭りである。
月が三つとも満月で、三つとも重ならずに出るのは50年に一度なのだが、実は月が欠けたりはしているものの、三つ揃う日があるのだ。
それは夏至。
夕暮れ祭はいつもこの日に開催される。
60年前はちゃんとした祭典などもあったのだがその文化も今は廃れただの飲み会の席へと変わっていた。
しかし今年、世界の情勢が変わり村の人々が怖がっているのではないか、という疑問がレストナム議事会へ提示された。
それを少しでも緩和するために発案されたのが夕暮れ祭を盛り上げようという案だった。
駄菓子屋をよび露天を出してもらったり、特技を持った人間を集め出し物をやったり、武闘会を開くというものだった。
しかし祭典は行われないことになった。行うためには祭具を集めなければならず、それに祭典の意図も測りかねるため、ということらしい。
後に祭典の重要性がわかるのだが今は割愛する。
「と、いうわけよ。」
説明を終えたシンリアは胸を張っていった。大して無いのだが。
「なるほどな。で、本条は出るんだろ?」
いきなり話を振られた本条は慌てた。どうやら話を聞いていなかったらしい。
「あ、出る・・・?あぁ、武闘会か。でるよ?」
ならば、と言い。
「やっぱり出ることには変わりないな。」
そういうとシンは安心した顔をし、逆に伊井島は不安そうな顔をした。
「怪我・・・しない?」
「しねぇよ。多分一撃も喰らわないで終わるんじゃねぇか?騎士団もたいしたこと無いしな。」
「聞き捨てなら無いな。」
誇りを傷つけられた、という顔をしてシンは見鏡に迫る。
「別にたいした意味は無いさ。判断力がないってところか。今日の一件にしたってお前ら騎士団より本条のほうが行動としては正しかったわけだしな。危険かどうかは話にしないとして、だけどな。」
まさか自分が褒められるとは思っていなかったのか本条は少し照れていたのだが、誰も見ていなかったのを知ると少し寂しそうに肩をすくめた。
「あれは装備の点検に時間がかかったんだ。」
「あぁ、平和ボケか。その間に伊井島が殺されてもその言い訳できんのか?」
「ぐっ・・・・」
「だろ?騎士団は毎回対応が遅すぎる。」
毎回、という言葉に引っかかりを覚えたレヴィアだが覚えが無いのでスルーする事にしたのだが伊井島には心当たりがあったらしく、かなり不安そうな顔をしていた。
それを見るとしまった、という顔をし、こう続けた。
「取り敢えず話は終わりだ。明日の夕暮れ祭には出てやるよ。」
そう言ってドアを閉め、見鏡は寝室へ向かった。
(どうせ最後だ・・・優勝ぐらいしていってやるか・・・)
今度こそ安眠を邪魔されないように耳栓をして布団へと体を預けた。
***
家から追い出された四人は平らに均されただけの大きな土道を歩いていた。
しばらく無言で歩いていると、突如伊井島が口を開いた。
「なんか氷雨の様子変じゃなかった?」
それに反応したのは本条だった。
「そうか?俺はあいつとあまり話したこと無いから良く分からないけど、普通だと思うぞ?」
否定の意を示す本条に今度はレヴィアが口を開いた。
「いや、少し変だったな。いつもは面倒ごとを避けるためにあんな挑発的な台詞ははかないはずだ。」
そんなもんか、と呟く本条を横目に伊井島は心の中でつぶやいた。
(また・・・いなくなるのかな・・・・やっぱり・・・やだなぁ・・・)
すると、シンリアが口を開いた。
「まぁ、察するにあいつは旅にでも出るんでしょ。」
意外にも鋭いところを付いてきたシンリアに驚きながらたずねる。
「ど・・・どうしてそう思うの?」
「んーっとね。あいつの家に先月使いで行ったけどもっと生活感のある家だったからかな?玄関から見ただけだったけど。でも今日はもっとこう・・・荷物が片付けられてる感じだったからね」
「なるほど、確かに言われて見ればそうだな。あっても持ち運べない大きな家具くらいだったな。」
感心した様に呟くレヴィアだったが、すぐに疑問を浮かべた。
「何故・・・?」
「さぁ、そこまでは分かりませんよ。シン様」
「そ・・・そうよね・・・」
(やっぱり旅に出るのかな・・・・また・・・・)
三人が物思いにふけっていると本条が口を開いた。
「ま、とにかく今悩んでも仕方ないし、あいつは夕暮れ祭には出るって言ってたんだ。出るとしたら夕暮れ祭の終わった夜だろう。付いていくならそのときだな。」
意外な提案に他の三人は首をかしげた。
「付いていく・・・?」
「そ、付いていく。ま、本当についていきたかったらの話だけどな。」
その言葉は伊井島を少し元気付けた。
(そっか・・・付いて・・・行こうと思えば付いていけるかもしれないんだ・・・)
そして数分無言で歩き、それぞれの家への分かれ道へ差し掛かったときに伊井島は言った。
「私ね、付いていこうと思う。氷雨に。」
反対覚悟での発言だったが意外にも誰も何も言わなかった。
「ま、そういうだろうと思ってたよ。お前なら。」
「そうだな。」
「そうね。」
何故か三人とも呆れた顔をしていた。
「え・・・え?」
いや、なんでもないよ、と三人共いってそれぞれの道を歩いていった。
(反対・・・されなかった・・・んだよね?)
何故かそれがとても嬉しかった。氷雨本人に認めたわけでもないのに。
「あーした天気になぁ~れ!」
そう言って蹴り上げた足から飛んだ靴は晴れを指していた。
「ふふふ♪明日は楽しみだな♪」
そういって帰っていった。
旅の準備のために。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
次から夕暮れ祭編です!
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