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story in story  作者: 初谷ゆずる
物語の始まり
4/46

襲撃開始。

「単刀直入に言おう。ナルに伊井島が攫われた。」


そう言う男は職員室に座っていた。


内容も内容なのだが、見鏡みかがみは特に驚きもしていなかった。


その様子を見て教師は驚いていたようだか見鏡にしてみれば先ほど似たような旨を伝えられているので大して驚くわけでもなかった。


「さいですか。」


(まぁ、言伝伝えようとしてる最中に出会ったんだろうなぁ・・・あいつ間が悪いからなぁ・・・)


少年はさも興味のなさそうに反応した。


「驚きはしないのか?」


思わず口から出た当然の問いに少年は答えた。


「口うるさいやつが消えてせいせいしているところさ。」


その台詞を聞いた教師は少しイラッとした顔をしていった。


「そんな言い方はないだろうふざけているのか?」


少年は面倒そうな顔をして。


「ふざけるも何も。それ以外に俺が何を言えってんですか?あれですか。助けてくださいとでも懇願すればいいんですか?泣き縋ればいいんですか?それこそふざけんなよ。ただ泣いて他人任せにすれば済むと思ってる馬鹿な人間じゃあないですよ俺は。」


少年はものすごく怒っているようだった。


言葉に怒気を超えた殺気すら滲ませていた。


教師は驚きながらも言った。


「お前はいつもクールだが、たまには感情的になることも大事だぞ。」


「知ったような口を利くんじゃねぇよ」


そういうやもう用は無いとばかりにその部屋から退出した。


そして廊下を歩いているとふと後ろから声がかけられた。


「おい見鏡。」


振り向くとそこには同じクラスの本条ほんじょう幹人みきとがいた。


「なんだよ。」


夕暮れ時だったため表情はあまり見えなかったが周りの空気から何らかの決意をしていることが伺える。


「伊井島さんがナルに攫われたって本当か。」


この学校の情報管理はどうなっているのだろうか。こんなにも簡単にばれてるぞ。と心の中で笑うも質問に答える見鏡だった。


「あぁ、本当だ。」


それを聞くと本条は肩を震わせわずかに声に怒気をはらませ言った。


「お・・・お前は何も思わないのか・・・?」


またか、と思うがそれを表情に出さずに答える。


「別に思いやしねぇよ。攫われたのはあいつが悪いだろ。大して気になりもしないしな。」


怒気を殺気にまでして本条は答えた。


「分かった。じゃあな。」


そう言って本条はきびすを返し訓練場へと向かった。


本条が見えなくなってもしばらく佇んでいると、訓練場からヤー!セイ!と掛け声が聞こえてきた。


(あいつナルの駐留所にとっこむつもりかよ。やるね熱血君。)


そう呟いてから家へと向かうために歩き出した。


「ま。あのままじゃ死ぬだろうな。どうしたもんかねぇ・・・数少ない伊井島が好きな人間だしなぁ・・・」


誰に言うでもなく発した言葉は廊下へと吸い込まれていった。


それから数十分後。


本条は街の入り口にいた。


「よし・・・ナル国はこっちの方向だな・・・準備も終わったし・・・行くか。」


一人で行ってどうにかなるという確証はなかった。


しかし街でじっとしているつもりもない。


今助けなければ殺されてしまうかもしれないのだから。


「まだ攫われて二時間もたっていないはず・・・恐らく単体では来ないだろうから近くに野営地か何かがあるはず・・・襲うなら今夜中がいいな。」


本条は計画を練り上げながら出発した。


しかし、本条は本当の意味でのナルの恐ろしさを知らなかった。


田舎の人間達は団結力が強いという脅威もあるが、それは弱点にもなりうる。


実際、本条のように独断で助けようという動きを見せるものも何人かいるのだ。


ナルにしてみればこの街は遠くの国へ行く足がかりにするために侵略するだけであってそんなに重要な場所でもないのだ。


つまり、多少時間がかかっても自軍の被害は最小限に抑えたい。


そこで一人ずつ釣ってという形で削っていこうという手に出たのだ。


民衆というのは単純で、囚われている人間が多ければ多いほど沢山人を裂いて助けようとする。


つまり一人捕まえれば一人、そいつも捕まえれば五人と、だんだんと大きい人数で助けに来るのが大抵なのだ。


それを知ったナルはこの方法ですでに五つもの小国を潰していた。


つまり本条は針の見えた餌に食いついてしまったのだった。


本条が街の入り口から出てきたのをみたナルの人間は思った。


「この村も単純だな・・・いい加減飽きたぜ。」


そう呟きながら本条の後を追い、数キロはなれたところで首に手刀をくらわせ、気絶させた。


「こいつもずいぶんと若いな・・・あぁ、そうだ、野営地で捕らえた女に手を出さないように言っておかないと。あいつ等何をしでかすか分かったもんじゃないからな・・・」


誰にも聞こえないだろうとおもい思わずいった言葉は、しっかりと見鏡に聞こえていた。


「なるほどねぇ・・・ナルも頭使ってるわけだ。なかなかどうしていい作戦じゃないか。だけど、まぁ。」


(その作戦が成り立つのは計算外に強い人間がいなかったら、の話だよな?)


そう頭の中で呟き、不敵に笑った。


(ヒーローは遅れてくる。って良く言うだろ?)

誤字脱字の指摘。


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