見鏡の過去
「お願いがあるのです。」
森から帰り、見鏡がリビングで自分の傷に包帯を巻いていると、キッチン側の椅子のところに立ったルイが話しかけてきた。
「ん?」
見鏡はルイを一瞥しただけで、再び包帯を巻く作業に戻った。
「次の任務から、私も連れて行ってくれませんか。」
ルイ自身は皆驚くと思っていたのか、その言葉を聞いたであろう皆が表情を変えないのに驚いていた。
「無理だな。」
見鏡がそう言った。
「な・・・なんでですか?今の私には能力だって・・・」
そう言って人形をトコトコと自分の横へ歩かせ見鏡に見せる。
「あぁ、言い方が悪かったな。」
そういって包帯を巻く作業の手を止め、ルイを見据えた。
「どちらかというとお前にはここに居て欲しい。だな。ステッラエ親娘とそこの男には能力がない。だからここが襲われたときにお前に守ってもらいたい」
「で、でもそれは当番制でやれば―――『そうね』」
ルイの言葉を遮るように、シンリアが口を挟んだ。
腕を組み、壁に寄りかかって傍観者の立場でいたシンリアが口を挟んできた。
「いい機会だわ。ここで色々と話しましょう。」
まず最初に、と言ってツカツカと見鏡に歩み寄った。
「貴方の過去について聞きたいわね。」
シンリアに見下ろされ言われた見鏡はフッと笑って言った。
「まぁ、そう来るだろうとは思っていたけどな。」
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「そうか・・・見鏡君は良い仲間を持ってたんだね・・・」
そう呟くのは、高い木の枝に座る少年だった。
そう呟いてから十分ほど空を眺めてボーっとしていると、スッと立ち上がり木から飛び降りた。
「さて・・・例の貴族を殺しに行こう。」
先程捕えた貴族の女性から聞きだした名前は貴族名ではなく場所名だった。
その名はシルバトリア。
ここに蠱毒計画を深く知る人物がいるらしい。
「もし当人でなくてもそれに近いものを見つけられたなら、あたりだね。」
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「ここから南に真っ直ぐか・・・休憩をなるべく減らすとして・・・頑張れば二日か・・・」
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「あんまり自分の身の上話をするのは好きじゃないんだけどな。」
そう前置きをして、ぽつぽつと話をした。
事の始まりは四年前。
当時の身鏡の家族構成は両親と兄と氷雨の四人兄弟だった。
当時氷雨は天才と言われ持てはやされていた。
しかし兄の双音には戦いの類の力が全くと言っていいほどなかった。
氷雨は双音の事をとても好きだった。
だから氷雨はそれを全く気にせず接していたのだが兄としてのプライドがそれを許さなかったのだろう。
結果として双音は家にやってきた男に付いて行ってしまった。
その男は両親のいないところを狙い、強くなりたいのならついてこいという風な事を告げ双音を連れて行った。
帰ってきた両親はその男に心当たりがあったのか、すぐに顔を青くして家を飛び出していった。
そしてその日の夜。両親は疲れ果てた顔をして帰ってきた。
しかしそこに兄の姿はなかった。
双音の居場所がわかったのはそれから一年後。
とある森の中の奥深くで兄に似た人物を見かけたというのだ。
その情報に見鏡一家は飛びついた。最初は両親だけでという話だったのだが氷雨がわがままを言うので連れて行くことになった。
そして森へ着き、中を探すとレニスン・フィアという男性に会った。
「ここであの人が出てくるのか・・・・」
本条が呟くが、見鏡はそれを無視して続けた。
なぜレニがあんなところにいたのかは分からないが、とりあえずレニ宅を拠点にして双音を探す事にした。
そして三日目の朝。いつものように氷雨は親の帰りをレニ宅で待っていたのだが、突如家を揺るがすような爆音が鳴り響いた。
何があったのかを考える前に爆音の方へ走っていくと、そこには長方形の窓の全くない建物の一部に大きな穴が開いていた。
そこから中へ入っていくと、大量の化け物の真ん中に立つ見鏡の両親がいた。
始めてみる化け物に、氷雨は思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
それに気付いた化け物が一斉に氷雨に襲い掛かった。
しかしそれらを全て危なげなく氷雨の両親が対処した。
何故こんなところへ来たのか、と氷雨に聞きながら氷雨に歩み寄る両親。
眼前の壁に取り付けられた高い足場のようなものに座っている少年を見た後に。
「ここから俺の記憶はない。このあと気付いたら両親が俺の前で死んでいて、兄を必死に探したが見つけたものは兄だったもの。面影はあったがあれはもう双音じゃなかった。」
話が終わったのだが、それぞれ考えるところがあったのだろう。全員が沈黙していた。
「まてよ、それだと日数が合わないぞ。お前が帰ってきたのは出て行ってから半年後だったじゃないか。」
本条が質問すると、それには秋乃が答えた。
「両親が殺されたからそのショックでレニ宅にいたんじゃないの?それでついでに門術もちょっと教えてもらったとかそういうことじゃない?」
「ご名答。」
と、ここまで話したところで、ドンドンという音が入り口から響いてきた。
「どうやら王様の登場らしい。行くぞ。」
そういってローブをはおり、シンリアと見鏡は出て行った。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
色々と始まってまいりましたっ
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