階級制度
ドン!という音を立て、町外れの草むらへと降り立った。
レヴィア・伊井島を除いた一行は沈黙していた。
本条と秋乃は気絶していたからなのだが、他の人間達は先程の圧倒的な実力差に愕然としていた。
(あんな化け物に勝てるのか・・・)
それぞれがそれぞれ思うところがあるのか、黙り込んでいたが グゥ・・・ という空腹を知らせる音が鳴り響いた。
「あ、ごめんなさい・・・」
音のした方をみると、アキが顔を赤くして俯いていた。
それをみると、フッと息を吐き出しシンリアが言った。
「ま、色々と考えるところがあるけどとりあえずご飯にしましょうか」
手を叩きながらそう提案すると、町へ向かい歩き出した。
「ま、そうさな」
見鏡もそれに賛同し、町へと歩き出した。
****
「ふぅ・・・」
窓一つない大きな長方形の建物の天井に座る16歳ほどの紫の髪を肩甲骨あたりまで伸ばした少年はため息をついた。
「これが空か・・・でっかいな・・・」
そういってコロン、と転がり体を大の字に開いた。
「外ってこんなに気持ちいい物だったのか・・・」
そういって静かに瞳を閉じた。
****
「・・・」
見鏡は財布を見つめて沈黙していた。
「どうした?見鏡。」
それを見た本条は声を掛けた。
「いや・・・金がねぇなぁと思って・・・」
その台詞に見鏡一行全員の動きが止まった。
「誰も持ってないのか?」
そういって一行を見渡すがダレも反応しない。
その不穏な会話を聞きつけ、店員が近づいてきた。
(オイオイどうするんだ金無いぞ・・・)
(どうするもなにも逃げるしかないでしょ!?)
(食い逃げですか!?)
(お金ないのよ!)
小声で話し合っていると、店員に声をかけられた。
「失礼ですがお客様。お代金を頂戴してもいいでしょうか?」
だらだらと冷や汗を流す一行。大体全員ローブを着てる時点で怪しすぎる。
何時までたっても沈黙していては不味いので、声をかけられた本条が満面の笑みで返した。
そしてそれを合図にシュバッ!とその店から一行の影が消えた。
****
レヴィアは目を覚ました。
「ふむ・・・」
パニックになりかけた心を落ち着かせるために吐いたため息は白かった。
「ここは何処だ?」
そこは周り一面が雪で覆われていた。
****
「どうするか・・・」
見鏡一行はローブを脱ぎ腰に巻き、物思いにふけながら大通りを歩いていた。
問題は金銭問題だった。
金は大量に持っていたのだが全てレニ宅に置いて来てしまった。
取りに帰るという案も出たのだがすこし城壁をくぐるとそこには荒れ果てた平原が広がっているだけだった。
木は根こそぎ抜け、観光名所となっていた綺麗な花や草も全てが消え去っていた。
これでは元々分かりにくい道が更にわからないので今戻ると危険と判断し、街へと戻ったというところだった。
いっそ王の城にでも忍び込んで盗みでも働くか、とあくどい考えへと至りそうになったところへ突然女性の悲痛な泣き声が聞こえた。
「だれかぁ・・・私の娘を助けてください・・・」
声のするほうへ顔を向けると、そこには大通りの隅に膝を突き土下座をするような格好で道行く人々に懇願する女性がいた。
見鏡一行が気付くと、本条が真っ先に飛んでいった。
「な、なにがあったんですか?」
本条は女性の前に膝を突き目線を合わせ聞いた。
その声に気付き顔を上げた女性は土や涙でひどい顔をしていた。
「わ、私の娘が攫われてしまいまして・・・」
おそらく、大人が助けに来てくれたと思ったのだろうが、実際顔を見てみると子供で落胆しているようにも取れる表情で説明を始めた。
経緯はこうだ。
昨夜、料理を作っていると調味料が足りないことに気付いた母親は、娘に買い物を頼んだ。
娘は快諾し、ゆっくり歩いても10分とかからない店に繰り出したのだが、一時間たっても帰ってこない。
不審におもった母親は迎えに行こうと玄関を出ると、そこには娘の身に付けていたブローチと共に手紙が置いてあった。
内容は。
”娘はいただいた”
と、経緯はこういうことらしい。
娘はいただいたというテンプレ極まる手紙に見鏡は多少笑いそうになりながらも母親に聞いた。
「この国には騎士団や警備隊はねぇのか?」
軽く凄んだ雰囲気のある台詞だったが母親は気にも留めなかった。
「い、一応あるにはあるんですが・・・私のような農家成りは相手にしてもらえなくて・・・」
「農家成り・・・か。」
農家成り、というのは俗称なのだが、この大陸の大抵の国には階級というものが存在する。
農家成り・・・正式名称最下民。
簡単に言ってしまえば奴隷だ。
レストナムにはこういうシステムがなかっただけいい国だったのだろうか。
「これだから階級制度の国ってのは・・・」
「ほんとにね・・・」
嫌な話を聞いた。という顔で呟くと、シンリアは一つ質問を投げかけた。
「この国には何でも屋というのは存在しないの?」
「な、何でも屋・・・ですか?」
「ええ。」
「聞いたこともありません。申し訳ありません。」
母親は既に諦めているようだった。
恐らく見鏡たちのことも貴族の子供の道楽で声を掛けてきた子供達。とでも思っているのではないだろうか。
「ないのね。なら貴女の息子は私たちが助けましょう。」
シンリアの突然の台詞に一行と母親が驚愕の顔へと変わった。
「代わりに条件があるわ。これぐらいはいいでしょう?」
やはりか、という顔になった母親に言葉を重ねた。
「私たちに誰も住んでない空き家・・・もしくは家の建てられる程度の開けた場所を紹介して頂戴。それと今日のお昼と晩御飯も用意してくれる?」
シンリアはそういうと不敵な笑みを浮かべて他のメンバーに告げた。
「どうやらやることが出来たようよ。」
最後まで読んでくださってありがとうございます!
最近忙しくて投稿できませんでしたすいませんorz
感想・評価ありましたらお願いします!