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story in story  作者: 初谷ゆずる
物語の始まり
23/46

聖母の誕生

「い・・・・いったい何時まで続くのよこの階段・・・」


場所は城中央の巨大な尖塔の中にある階段だった。


良くある石で作られた螺旋階段で、中央には下を見下ろせるように何もなかった。


「結構高いところまできたと思うんだけどな・・・」


そしてまた走り出し、塔半ばまで来たところで革と布で作られた上位兵用の軍服を着た男と出合った。


「あー・・・まぁ一人ぐらい見張りはいるものよねぇ・・・」


「その通りだ。このような大事な要人に手を出させるわけには行かないからな。」


その言葉には些か頭に来たのか多少顔を赤くして言った。


「あのねぇ、先に手を出したのはあんた達でしょ?」


「何を言っている。聖母をあのような薄汚い小娘に縛り付けていたのはお前達だろうが。」


と、これが流石にいけなかった。


秋乃は委員長だったとは到底思えないほどに短気だった。


「調子に乗らないでもらえる?私は元々仲間を盗られて気が立ってる上にこんな長ったらしい階段を上らされて。」


「調子に乗ってるのは君たちのほうだろう?君たちのような餓鬼が王城に攻め入ろうなどと。浅はかにも程がある。もっと命を大事にしたまえ」


「命はもっと大事にしたまえって?ふふふ、それはこっちの台詞よ。体格で餓鬼と決め付けないことね。生憎人生経験ならあんたよりは勝っているつもりよ。」


そういって左手に握りこぶしを作ると、階段へ向かって思いっきりたたきつけた。


するとズドン!という派手な音と共に階段が崩れ落ちた。


「なっ・・・・!?」


思った通りだ。


なぜかは知らないが筋力、いや単純に体の身体能力が比べ物にならないほどに上がっている。


「空中戦と行きましょうか!騎士さん!」


そして空中に散らばる瓦礫を足場にして騎士へはしりよる。


それに対応するために慌てて剣を抜くこうとするが、騎士が剣に手をかけたところを右手で押さえ込み、柄ごと拳を粉砕した。


ボギィ!という軽快な音をたてて男の手首から先が肉塊へと変化した。


「気持ち悪いわねぇ!」


騎士が悲鳴を上げる暇さえ与えずに続けざまにこぶしを振るう。


もともとの形が分からなくなるほどに痛めつけると遥か下の地面へ向かい投げつけた。


「ハッハッハッ・・・」


初の殺し合い・・・否、一方的な殺しだったのだが。


それは秋乃に極度な緊張を与えた。


それのせいで理性が外れてしまい既に死んでいる騎士に更に拳を振るうという事をしてしまった。


初の命のやり取りでは良くあること・・・なのだが・・・


「さいっていね・・・私・・・」


本人一人にそれを気付けと言うのも酷な話だ。


極度な自己嫌悪に陥りながらも崩れ落ちてない階段へ跳び、再び階段を上り伊井島のいる所へ向かう。


すると、階下から何者かが壁を蹴り、跳び反対側の壁に着地し、また蹴るといった動作をして上ってきた。足音は二人。


見るとそれはフードをかぶっていた。


「おい、今さっきひどい状態の人間が落ちて来たんだが、お前か?やったの。」


あっさりと追いついた見鏡は尋ねた。


ちなみに本条はまだ遥か下だ。


「ええ、そうよ。最低よね。人間をあそこまでグチャグチャに出来る神経が私にあるとは思わなかったわよ。」


自嘲気味に先程の戦闘を話すと、見鏡はなんでもないように返した。


「まぁ、殺し合いが始めてのやつはその程度はするさ。俺のときはもっと酷かったぜ。」


俺のときはもっと酷かった。という言葉に引っかかりを覚えつつもそれ以上は深く聞いてはいけないような気がした。


そうしたことを話していると、階段の終わりが見えた。


「お、あれがドアじゃないか?」


いつの間にか追いついていた本条が言った。


ドアを開けよう・・・という一歩手前で、見鏡と本条が突然足を止めた。


「どしたの?」


振り向いて聞くと、二人は声をそろえていった。


「手柄はお前のもんだからな。お前が入れよ。」


なんというか、どうでもいいような気遣いだったが、秋乃はそれに甘えることにした。


ガチャ。という音を立て戸を開けると、そこには巨大な魔方陣の中央に寝かされた伊井島がいた。


「え・・・・?」


黒光りするその魔方陣は例の吸収型魔法師の仕業か、と勘繰りすると、腹部に ドス という衝撃が走った。


「え・・・?」


良く見ると、あけた戸の向こう側からナイフを持った手が伸びていた。


「刺され・・・」


足から段々とからだの力が抜けていく。


死ぬのか――――


何故か冷静にそう考えていた。


走馬灯というのは実際にあるんだなぁなどと脳裏に流れる映像を眺めながらのんきに考えていると。


突如尖塔が吹き飛んだ。


否、爆発したとでも言うべきか。


とにかく伊井島を中心に爆風が発生した。


例の術者も予想外の事態だったのだろう。


体勢を整えることすらせずに吹き飛んでいく。


「チッ、おいどうなってる!」


見鏡が大きな声で叫ぶが誰もこの事態の真相が掴めていない。


「知るかよっ!」


本条も負けじと叫び返す。


何もかもが吹き飛ばされていた。


ここから見渡せるもの全てが。


「チッ・・・これが聖母の力ってやつか・・・っ」


先日物語の中から手に入れた風の力を使い抵抗する。


が、その努力もむなしく段々と後ろへじりじりと引きずられていく。


そろそろ魔力が切れそう、と言ったところでシンリアが上手く風に乗りながらこちらへ近づいてきた。


「どうなってんの!?」


「しるかよっ・・・どうも伊井島の中にいるマリアが暴走したみたいだ・・・っ」


「面倒ね・・・っとりあえず近くにいる人間全員引き寄せて!バラバラになることは避けるわよ!」


「わぁったよ!」


そう叫び返すと、既にほとんど残ってない魔力を駆使し上手く風に乗り秋乃、本条と回収した。


「気絶してやがる・・・」


呆れたようにつぶやくと、頭上から声が聞こえた。


「レヴィアが何処にもいないの!とりあえずレヴィアは自分で何とかできると思うから!あの子供二人を探すわよ!」


どうやらレヴィアは既にどこかに飛ばされているようだ。


「ああ!」


そう言って二人は合流し上手く風に乗りながら城下町へ辿り着いた。


「一旦着地するぞ!」


「わかった!」


風の轟音のせいで声をかき消されない様に張り上げるのも一苦労だった。


二人が地面に着地すると、大通りの向こう側に二人が地面に大きな剣を突き刺しそれを足場にしていた。


「いたぞ!」


地面を蹴り、二人のところへ駆け寄ると今までの経緯を説明した。


「聖母が宿ってたんですか!?」


姉が驚いたように叫んでいたが今はそれどころじゃない。


「おい、どうするんだ?このままだと魔力切れるぞ。」


「そうね、上手く風に乗れればこの先に大きな町があるはずだから、そこに行きましょう。」


シンリアはそういって近くの露店を縛り付けていたロープを適当なところで切ると、全員に渡し、体に縛り付けるように指示した。


全員を一本のロープで繋いだところで、眩しすぎて目も向けられない伊井島のところから、一人の女性が見鏡たちから40メートルほど離れたところへ舞い降りた。


風の影響を全く受けていないことから、恐らく聖母であろう。


「うふふ、貴方達の仲間の伊井島という方のこの体。とても住みやいわ。」


微笑を浮かべながら見鏡達へ話し掛ける。


普通なら風の轟音で掻き消えるほどの声量なのに、この時は風の音が止んでいた。


「この風、お前が起こしているのか?」


「もちろんよ?」


それを聞くと チッ と舌打ちをし、仲間達に合図をした。


「これ以上ここにいると魔力が尽きる。今はまだあいつと戦える程の力はない。ここから離れるぞ。」


一見非情にも思えるその指示だったが、仕方のないことだった。


既に魔力はかなり減っている。


加え相手は神にさしかかったモノ。勝てるはずがない


余りにも大きな自身で抱え込めない怒りがあると逆に冷静になるという。


恐らく今の見鏡はその状態なのだろう。


そして見鏡一行は風に乗り飛び立った。


何時までも聖母を見据えながら。


そして聖母の姿が掻き消える寸前、見鏡は口だけ動かして言った。


い つ か か な ら ず 殺 す


それに聖母も答えた。


待 っ て る わ

秋乃回と言いましたが全然秋乃でていませんね><;

すいません><;


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