いけすかない人間
「そろそろ村に着くぞ。いい加減にしっかり立て」
「あのなぁ・・・こんなになってるのもお前のせいなんだぞ・・・?」
いまだ口の中の痛さに悶えてる見鏡以外の五人。
先程入った森を抜けるとそこには眼前一面に村が広がっていた。
「おぉ、レストナムに比べると多少文明が劣化してると思うが・・・しかし和む風景なだ。」
「ま、そうだな」
「さぁ、行きましょ行きましょ。もう日が昇ってきてるし。」
「そうだな。さっさといく――――」
そう言い掛けたところで、見鏡の腰あたりにドン!と言う衝撃が走った。
「ん、あぁ?」
下を見ると、腰には少年が抱きついていた。
「助けて!お姉ちゃんを助けてよ!」
「ん・・・?なんだ?お前」
「あんたねぇ・・・そんなに脅しめいた感じで対応しないの。こういうのはにこやかに。ね」
顔を笑顔に変え、腰をまげて視線を同じ高さにして声をかける。
「どうしたの?」
しかし少年の反応は冷たかった。
「このおねえちゃん怖い・・・」
「だってよ、お前の腹黒さが見えてるんじゃねぇか?」
「ムググ・・・」
そんなやり取りをしていると、後ろから声がかかった。
「やぁやぁ。君かい?今日の生贄のお姉ちゃんを助けてくれる人を探しているのは。」
男の子はたどたどしく頷き答えた。
「う・・・うん・・・」
「なら僕が助けよう。君みたいな子には僕みたいな人間がぴったりだ。」
「ほ・・・ほんとに?」
(オイ、このじじいいけすかねぇぞぶっ殺すか。)
(確かにいけすかないけど殺さなくてもいいんじゃね?)
(ま、そうね)
「そこの子達みたいな子供じゃ無理だよ。僕みたいな騎士団に所属する大人じゃないとね。」
(殺すか。)
(賛成)
(ってかよ、あいつ騎士団にいるのか?)
(いや、僕は何度か騎士団会合に出たことがあるけどあんな偉そうな顔を出来る人間の中であの顔は見たことない。)
(下っ端か偽装か。うぜぇな。)
「な、そうだろ?」
少し躊躇いながらも、頷く
「う・・・・うん・・・」
男の子の賛同をえたので満足気にこちらへ顔を向ける。
「君たちは見ない顔だね。何処の人間だい?」
「うっせぇよ黙れよ挽肉にすっぞテメェ」
男の子を連れ憮然とした表情で踵を返す男。
しばらくすると、伊井島が口を開いた。
「氷雨って本当にああいうお高くとまった人間が嫌いよねぇ」
「まぁな。」
そう言って宿屋を探すべく街へと歩きだす。
「なぁ。見鏡。」
「あぁ?」
「本当にあの子見捨てるのか?生贄といっていたということは恐らくここには魔物の類が住んでるはずだ。」
「さぁな。しらねぇよ」
(とかいって助け出すんだぜ。伊井島のときもそうだった。)
(うわぁ。ツンデレかし)
村の入り口につくと、村には物々しい雰囲気が漂っていた
「生贄の日・・・か。」
周りを見渡すが人一人としていなく、住人全てが家に閉じこもっているようだった
見鏡一行はその雰囲気に飲まれたように無言だった。
見鏡は飲まれたわけではなかったのだが。
村の主要道路だろうという大きさの街路地を歩いていると、突如一行へ罵声が飛んだ。
「オイテメェら!何であるいてやがる!お前らのせいでこの村が襲われたらお前らのせいだからな!」
顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げる大男。
「チッ」
人身御供にして自分だけ助かろうってか、虫唾が走るな。いっそ魔物ごとこの街全部一掃しちまおうかなどと物騒な考えを割りと本気で考え始めた見鏡を遮るように伊井島が話しかけてきた
「ねぇねぇ、その生贄の儀式って言うのは何時なんだろうね。」
「あの一行じゃないかな。」
レヴィアが指差した先には、白装束に身を包んだ六人が中央の御者を囲むようにして陳列していた。
良く見るとその向こうの木陰に先程の男と少年がいた。
「粗いね。尾行の仕方が。」
「なんだ、騎士団は尾行の仕方まで教えるのか?」
「いや、独学だよ。」
「あっそ」
宿屋に向かうべく更に足を進めると目的の宿屋があった
「休業です。」
「クソッタレ」
「ま、さっきの親父の言うことが事実なら今日は全員家に閉じこもってろってことだろ」
「つまり生贄の儀式が終わらないと宿屋には寄れないってことだね。」
「チッ。行くぞ。」
「どこに?」
意地悪な笑みを浮かべながら聞き返す秋乃
「なぁに。良くある殺し合いだ。・・・相手は魔物だがな。」
最後まで読んでくださってありがとうございます!
感想・評価お願いします!