旅立ちの
夜一時―――いや、正確には朝か。
見鏡は手に大きなバッグを持ち、入り口に立っていた。
「さて、行くか。」
息を大きく吸い、街を出て目的地へ向かうための一足を踏み出す、と言うときに不意に声がかかった。
「全く・・・遅いじゃないか・・・お陰で何回も寝かけちまったじゃねぇか。」
そこにいたのは、壁に寄りかかり眠そうにしている本条とその他何人か。
そこに居たのは秋乃 茜・レヴィア シン・シンリア・伊井島 莉子・本条 幹人の五人だった。
「何してんだ・・・お前ら。」
「いやぁ、お前が旅に出るって言うからこうして駆けつけたまでで。」
「私は止めに来たんだけどね、どうせ聞かないだろうからついて行ってあげようと思って」
「俺は有給をもらってな。暇になったから君について行こうと思ったしだいだよ」
「私はシン様がいるところなら何処へでも。」
「私は前みたいにおいていかれるのが嫌だったってところかな。」
皆が三者三様に意見を言うと、見鏡は深くため息を吐いた。
「まったく・・・物好きが・・・言っとくが命の保障は無いぞ?」
「そんなものは百も承知だ。氷雨。」
「どうせここに居たって大して面白いことも無いんだ。なら楽しいほうに転がるのが人間ってもんだ。」
「本条、お前実は面倒臭がりだろ。」
「アハ、ばれた?」
「まぁな。」
「ほらほらほら、こんなところでたまってたら見回りに見つかるよ!さっさといくよ!」
「まぁ、そうだな。ところで家族にはどう説明したんだ。」
いやぁ~それはもう、ね?などと五人だけであいずちをうった後に口をそろえていった。
「「「「「旅に出るから黙って承諾しろ」」」」」
全くこいつらは・・・と呟き、手に持っていた荷物を肩に掛け直し仕切りなおし、と言うように声を出した。
「先に言っておく。ここから先は殺す殺されるの世界が広がってる。途中で降りるのはかなり難しいと思え。それでも付いて来るなら生きるだけの覚悟と状況に応じて悪役になる覚悟をしてもらう。」
改めて覚悟を問うと、五人からは同じ答えが帰ってきた。
もちろんだ。というように。
「ならいい。さぁ行こうか。村を捨てた悪党の旅立ちだ。」
「悪党とは心外だな。僕はしっかりと有給を取ってきたぞ。」
「そーだぞ。シン様をけなすとはお前もいい度胸してるじゃん。」
突然口調の変わったシンリアを後ろで本条が呆れてみていた。
当の見鏡はすいませんでしたねぇと適当に答えながら足を進めた。
「あぁ、目的地だけは言っておくか。」
「教えてくれると助かる。」
「目的地は魔の森の森羅って呼ばれてる遺跡の近くだ。」
「うげ・・・魔の森・・・って、あの?」
見鏡が場所名を告げると、それに反応して秋乃が顔をしかめた。
「委員長しってんの?」
本条は知らないのだろう。
「むしろ知らないのが不思議なぐらい有名な森よ。この世にいる魔物は魔の森の森羅にある結晶があるから生きていられているとか、魔物が生まれる場所とか、とりあえず魔物関係のうわさは絶えない場所よ。」
「そうなの?ひさめ。魔の森って言ったらあの人が住んでるところだっけ?」
「ああ。あそこはあのクソジジィが住んでるところだ。そこに言って俺の能力の使い方とか色々教えてもらう」
「成る程、人のところに行くのか。その人は見鏡とはどんな関係なんだ?」
「着いたら教えてやるよ。」
これで質問は終わりだ、と言うように更に歩みを早くする。
****
そんなやり取りのなされているときと同時刻のとある村
「嘘・・・・でしょ・・・」
呆然と呟いたのはとある民家の15歳ほどの女の子だった。
「どうしたの?お姉ちゃん」
何かを察したのか、部屋から出てくる弟だろうと推測できる10歳ほどの男の子
「明日の儀式・・・私が・・・選ばれたの・・・」
瞳に涙を浮かべ、かすれた声で放った言葉は、実質死が確定されている魔物への生贄を捧げる儀式の決定だった。
「え・・・嘘・・・でしょ・・・?」
たちの悪いいたずらだろうと信じたかった男の子はそう確認したが、姉からは何の反応も無かった。ただただ黙ってうつむいているだけだった
「ねぇ!嘘って言ってよ!嘘って!ねぇ!ねぇ!」
もう耳には届いていなかったのか、全く反応のない姉
人はここで弟に何か反応するべきだ、と言うのかもしれないが、まだ彼女は13歳である。親は今起きている戦争にかりだされ、すでに二人とも亡き人となっていた。
また家族を失うのか、という現実を突きつけられた少年は家を飛び出した
ヒーローは何処にいる。
この降りかかる不幸の連続を打破してくれるヒーローはいないのか。
しばらく走り回ったが、途中で足がもつれ派手に転倒した。
そしてすぐには立ち上がらず、倒れながら呟いた。
「お願いだよ・・・・お姉ちゃんを・・・助けてよ・・・もう嫌だよ・・・」
呟いた言葉は誰かに届いたのか、届かなかったのか。
****
同時刻のナル帝国。
「どうだね、例の彼の様子は。」
そう言ったのはナル国のトップに君臨する男だった。しかし周囲には誰もおらず、独り言か、と従者が思うと王の後ろにある影が盛り上がり、人の形を取った。
「村を出ました。何か目的があるようですがそれはまだ分かっておりません」
その報告を聞くと、少し思うところがあったのか、ナルのトップの男は言った。
「ふむ、一つ聞いていいか。神柱の連中はどうしてる?」
「神柱はいまだ一人として動いていません」
「そうか。報告ありがとう。下がっていいぞ。」
「はっ。」
(そうか・・・あいつの息子も旅が出来るような年になったのか・・・)
最後まで読んでくださってありがとうございます!
最近怖い話にはまってる自分ですが、いやー凄いですね。普通の怖い話ではなく。
2chなどのオカルト板なんてもう身震い物ですよ。実況系とかとか。
その日は大体眠れないんですよね(
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