騎士団長との戦い
ダン!という音と共に五メートルはあろうかという高さにある見物席から騎士団長が飛び降りてきた。
「おいおいせっかち過ぎるんじゃあねぇか?まだステージの準備も終わってないじゃねぇか。」
「どうせ舞台は消え去る。それより君も武器を調えて来なさい、この戦いは遠慮なしの闘いとしようじゃないか。」
「なるほどな、つまり殺し合いをしようということ、か。」
「ああ。」
その返答を聞くと見鏡の背中に二つの剣を収めた鞘が出現した。
そして、赤とオレンジの混ざったような色の細いワンハンドブロードソードと、少し青みのかかった透き通った細いワンハンドブロードソードを背中から抜き取った。
その様子を不思議そうに見ていたスコールは、
「なんだその能力は、空間掌握でもしているのか?」
「いや、俺にはまだそんな便利な能力はねぇよ。良く見てみろこの剣、いやに透き通ってないか?」
「まさか、剣特有の技とでも言うつもりか?」
ニヤリ、と口をゆがめただけで質問には答えなかった。
「そろそろ始めようぜ?騎士団長さんよ。」
これ以上の問答は無用、とばかりに闘いの開始を促す見鏡。
「ああ、いいだろう。」
それに対し肯定の意を示すと、とうとう闘いが始まった。
最初に仕掛けたのは騎士団長だった。
バシン!という空気が震える音がしたと思うと、スコールはすでに後ろに立ち、剣の切っ先を見鏡の首筋へと付けていた。
「なんだ、この程度か。」
そう、残念そうな声に反応したのか、振り返る見鏡。しかしその表情は驚きでかたまった顔ではなかった。
笑っていた。
「なんだよ、やりゃあ出来んじゃねぇか、この国も捨てたもんじゃねぇかもなぁ?」
油断はなかった。
この未知数の力を持つ相手には油断をしてはいけないと自らを律していた。
にもかかわらず。
視界から見鏡が消えた。
目で追うことすら出来なかった。
そして次の瞬間、背中へ走る衝撃を感じる暇もなく、観客席のある武闘会の壁へと吹き飛ばされていた。
蹴った本人は少し残念そうな顔をしながら武闘会場の中央へ立っていた。
「オイオイ、さっきあんなに速かったのに相手が速くなると見えないのか?もしかして。」
その問いかけに答えは無かった。
その代わりと言うように、そこから閃光が迸った。
「さっきの状態なら、な。」
閃光が引いた後に立っていたのは、所々にパチパチと電気が奔っていた。
「知ってるか・・・?これは門術と言うんだ。」
「門術・・・?」
「そう。門術。世界に存在している門を開けていくっていうようなものか・・・説明が難しいな・・・簡単に説明すると・・・」
両手剣を肩に担ぎながら説明を始めようとするスコールを、見鏡は言葉でさえぎった。
「門を開けるごとに天使へ、神へと近づいていく。だったか」
見鏡が知っていたのに驚いたのか、スコールは目を見開いていた。しかし駐留所を殲滅したのが見鏡と言うのを思い出し、納得したようだ。
「やっぱり君も能力者だったのか・・・門術を使えるとは多少意外だったが。」
「馬鹿言うな、俺は門術なんか使えない。俺が使うのは門術じゃない。」
「異能者・・・か。」
「おれはその門術が真っ当で他はダメだ的な物言いが嫌いなんだけどな。」
「そうか、それはすまなかった。」
「別に謝る事じゃねぇさ。取り敢えず問答は面倒だ。さっさとやるぞ。」
「あぁ、次からは全力で行こう。」
「ハッ・・・・抜かせ。」
「行くぞ・・・第三門・・・開放・・・!」
その言葉を皮切りに、スコールの体から放たれる殺気が桁違いに増えた。
「三門ではまだ能力は使えないのだけどね・・・身体能力は先程のおよそ三倍。」
「なるほどなぁ・・・楽しそうじゃないか全く。」
ニヒルに笑うと、俺も本気を出すか・・・と呟き、顔へ手を当てる。
「俺の能力の詳しくは教えるきは無いが、そうだな。本気でやる分には変わりない。ぶち殺してやるよ。」
そういって手の隙間から見えた目は赤く光っていた。
「能力使用開始・・・ッ!」
バシン!という音と共に体から光が迸る。
「こっからが本番だ。」
タンッという音がすると見鏡はスコールの懐へと潜り込んだ。
「なっ!」
右手の紅い剣を下から上へ切り払い、右手を切り落とそうとするが、それを両手剣の柄で受け止められる。
しかしその追撃に左手の透明な剣で二本の剣の合間を縫うように突き出す。
「そらっ!喰らえ!」
そうして放った一撃は、紅い剣と共に弾かれた。
そしてそのまま右足を突き出し、見鏡の腹へと一撃を入れる。
ドン!と言う音と共に後ろへ吹き飛んだ。
ズサササササ!と言う音を立てながら後ろへ吹き飛ぶ。
「いってぇな・・・」
腹をさすりながら悪態を吐く。
「ハァ・・・アァ!」
気合を入れると、体の周りの土煙が吹き飛んだ。
バチチチチチチ という音が何処からとも無く聞こえると思うと、次の瞬間右手に持っている透明なワンハンドブロードソードが光を帯び始めた。
「アンタなら知ってると思ったンだけどなぁ・・・この二本はこの村の祭具殿にある武器・・・だぜ?」
「なんだと・・・・?」
「後一本あるんだがな。この透明の剣はディールークルムって言ってな。祭典の時には少し過激だから使わないらしいんだが。」
「まさか・・・それ・・・オリジナルカラー・・・か?」
「ああ。」
「ブロードソードのオリジナルカラーは三本・・・まさか・・・それ全てを・・・」
「まぁ、元々はこの町が持っていたんだがな。俺がもらった。この村の村長も認めたぜ?俺以外には使えない・・・だろうとな。そら、いくぜ!」
左手に持っていた黒い剣をしまい、黄色く光る剣を両手で構える。
そして袈裟切りをすると、その剣から雷撃が飛んだ。
ズバン!という、光速というべきの速さで雷撃が飛ぶ。
「なっ・・・!」
それを両手剣でしっかりと受け止めるが、そのまま2.3Mと後ろへそのままひきずられる。
「強いな・・・さすがに・・・ッ!」
雷撃で一瞬視界が消え、それが治ると、目の前には見鏡が飛んできていた。
「知ってるか・・・?体に電気を通すと体の動きがその前とは比べ物にならないくらいに俊敏になるんだ」
そう言いながら、右手で腹へ突きを繰り出す。
それが見事に入り、体をくの字に折り曲げ苦しむが、それを許す隙は与えずに、右足で横顔へ追撃を入れる。その瞬間、見鏡が体に電気を通し足を通じてスコールの体へと高圧電流を流す。
「がっ・・・・」
「そのまま・・・吹き飛べ!」
ドン!と言う音と共に、観客席へと再び吹き飛ばされるスコール。
さっきはこれで終わりだったが。と呟き再び剣に電気を通し、思いっきり振るう。
ドスン!と言う音と共に追撃が飛ぶ。
「これで終わり・・・だな。」
土煙が止むとそこには煙をあげながら残骸と共に横たわっているスコールがいた。
「ヤベッ・・・やりすぎた・・・かも?」
顔を引きつらせながら剣を左右に切り払い、背中の見えない鞘へと仕舞う
「ってか・・・観客席の人間誰も怪我してないだろぉな・・・面倒だぞ・・・ここで怪我とか・・・」
「大丈夫よぉアンタ達がはっちゃけるっていうのは予想通りだったから速めに避難させといたわよ。」
後ろには委員長の茜が呆れたような顔をして立っていた。
「まったく・・・お前ら化け物だろ・・・」
スコールを引きずりながら呆れ声で会話に参加する本条。流石にここまでの闘いになるとは想像がつかなかったようだ
「さぁな。俺は疲れたからかえる。じゃあな。」
右手をひらひらと振りながら家へと向かう見鏡を二人で、正確には三人で見送る。
「じゃあな・・・ねぇ・・・」
茜は少し意味深な感じで呟くとそのままタンッという音と共に自分の家へと走っていった。
「なんだ・・・あの委員長も気付いてるんじゃねぇか・・・?」
あいつも隠し事得意じゃねぇなぁ・・・と呟きながら作業を進める。
「さっさとレヴィアの代わりのこの作業終わらせて俺も出発の準備進めるかな。」
ハァ・・・とため息をつきながらすっかり日の暮れた夜空を見上げた。
「今日も月が・・・・綺麗だ。」
恐らく今夜でしばらく見なくなるであろう三つの月を見上げながら感慨深く言った。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
夕暮れ祭編は今回で終わりでゴンす
次から新しい編が始まります!
今度こそギャグ成分を多くするために・・・・!
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