プロローグ
少し長めでなんか堅苦しいですが最後まで呼んでくださると幸いでございます
「よし・・・取り掛かろうか・・・」
男は一世代前のワープロの前へ座り、何かを決心した顔でワープロを打ち始めた。
そうしてまだ十分も立たないうちに、後ろのドアが開いた。
「何やってるの?」
それは、緑色の髪を伸ばした綺麗な女性だった。
「いや、なに、俺達もずいぶんといろいろ経験してきたじゃないか。だからちょっとレポート、という形で書いてみようと思ってな」
男は振り返らずに言う。
女性はソレを聞き、少し微笑みながら返した。
「文才のないあなたが?」
男は多少心外だというように顔をしかめるが、すぐに苦笑いと表情をかえ、言葉を紡いだ。
「でも、それでも、俺達の戦いを書く意味は、あると思うんだ。仲間との出会いそして別れ。戦い。他にも色々経験しただろ。これは後でとても価値のあるものになるのかもしれないだろう?」
女性は。この言葉の意図を少し測りかねていた。
今までの人生。
この男はとても後悔していたのではなかったか。
思い出したくないとまで。記憶を消してでも。死んででも忘れたいといっていた男が。
何が起きたのだろうか。
良く見れば、今まで生気のなかった顔に血が通って元気に見える。
何か吹っ切れたのだろうか。
恐らくそれは。
まぁ。
今私がここで言ってしまっては面白みのない話ではある。
どうせ男が書く物語を読むのなら。
そこで分かるでしょう。
女性が思考にふけっていると、男が振り返り、言った。
「何をそんなにおかしそうに笑っているんだ。」
女性は、自分でも気付かないうちに笑っていたのかと少し驚いたが、今までと今の男を比べれば。まぁ、分からないでもないか、と結論付けた。
「だって。いえ、もう何でもないわ。」
男は少しふしぎそうな顔をし、それならば、と呟きワープロへと向き直った。
「少し集中したいから、リビングででも待っていてくれないか?」
女性は思った。恥ずかしいのだろう。今までの人生を振り返るにあたって泣いてしまうかも知れない。落ち込んでしまうかもしれないから。それを見られるのが。
「ええ。分かったわ。今日中には終わるのでしょう?」
男は笑った。
「今日中・・・か。終わるといいな。今日中に。」
女性はその言葉に少し引っかかりを感じたが。それは、過去との決別が。か。と結論を出し、リビングへと向かった。
「よし、はじめようか・・・」
そうして男はまだ慣れない、たどたどしく打ち始めた。
これは―――――
――――――――悲劇である。
故に主人公。いや、ヒーローと呼べる者は存在しない。
これは、ハッピーエンドの物語ではない。
バッドエンド。否、更に悪い終わり方の物語なのかもしれない。
人によっては、世界の終わり、人によっては、もしかするとハッピーエンドなのかもしれない。
この物語を。
書いていこうと思う。
これは、少し特殊で、少し奇抜な力、いや、今は能力というのが流行らしいな。
少し特殊な、あまり大勢が持っていない能力を持った。
子供というには大きい、かといって大人と言うには幼い。
そんな人間達の物語である。
読んでくださってありがとうございます。
感想・評価などいただけるとうれしいかぎりです。