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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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2/2

家鳴りと雨音の夜

 玉野さんはとある地域の出身だそうだ。そこは大きなニュースになった災害があったところだという。一応本人の希望で場所は伏せさせていただく。


 そこで生活をしていたのだが、もうその頃には当時の災害は過去の苦い記憶となっており、今も被害の跡は見えても、ソレに困っている人はいないような頃のことだ。


 そこに結婚して越してきたのだが、念願だった庭付きの家を建ててそこに引っ越したが、引っ越し早々家鳴りに悩まされることになる。


 だが、家鳴りならいくらか我慢すればそのうち安定して音も止むだろうと、妻に我慢してもらうようにした。ただ、気休め程度にその時スマートスピーカーを買って、寝室に置くと、家鳴りが気にならないように寝る時にノイズを小さく鳴らし続けるようにした。


 それが功を奏したのか、妻から家鳴りが気になるという事は聞かなくなった。それから数ヶ月は多少構えていたが、次第に家鳴りはなくなった。


 やはり新築はそういったものと無縁では無いのだと思ったが、ソレが新築である証拠だと思うと悪い気分だけでは無い、新築の証拠だと考えるとそれも悪くはなかった。


 ただ、毎晩スマートスピーカーがノイズを出し続けるのを止めはしなかった。一旦それに慣れると完全な無音では安眠が出来なくなってしまった。妻の方もそのようで、機械に強くなかったのにいつの間にかノイズの出し方を覚えていた。


 そうして家鳴りもしなくなってしばらく経ってのことだ、暑い日に家に帰ってきてシャワーを浴びるとその日は疲れ果てていたので寝てしまうことにした。


 寝室に入ると雨音が鳴っている。そう言えばスピーカーから出せるノイズの中に雨音があったのを思い出して、これも風情のある音で良いじゃ無いかと思いながら寝た。その晩は深く眠ってしまい、翌朝は休日だからと言って寝すぎと言っていいほどだった。


 目が覚めたのでカーテンを開けると、晴れ晴れとした景色が広がっていた。ここに越してきて良かったと思った時に声をかけられた。


「ああ、帰ってたのね、機能は寝ちゃっててごめんなさい」


 妻が起きてきてそんなことを言うので『気にしなくていい』と言い、朝食にしようと言った。しかし妻の方は同じように窓辺に来て外を見て変な顔をする。


「え……あなた、昨日は傘を持ってなかったわよね? 濡れなかったの?」


 そんな奇妙な事を言うものだから、昨日は汗こそかいたが雨なんて降ってないだろと言うと、驚いたような顔をして言う。


「だって私が寝る時にずっと雨音がしてたのよ? あなたに悪いなって思いながら寝たんだけど……」


 雨音はスピーカーから流れていたのではないかと聞くと、そんな機能があったと初めて知ったそうで、普通のノイズ以外のなら仕方なんて知らないのだと言う。


 では機能の雨音は何だったのか? そう考えながら出勤している時に気が付いた。そこはずっと昔から定期的に水害がある土地だった。戦後の治水で随分と水害は減ったが、それ以前は厳しい自然に苦しめられた地域だったと聞いていた。


 それからも時々、家鳴りがおさまっても雨も降っていないのに雨音がすることが時々あったのだという。果たして家鳴りと雨音、どちらがマシかは分からないのだそうだ。

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