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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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運ばれてきた人形

 いろいろと余裕のないひびを送っている時だ、Mさんという方からメールが届いた。何でも、呪物を集めるのが趣味なのだが、本物を手に入れてしまい持て余しているという。どこか処分先があるなら教えて欲しいと言うことで、話を聞かせてもらい、その処分先を紹介することにした。


 彼は、私が出向こうとしたところ、持っていくというので、大丈夫なのか? と疑問に思いつつもファミレスでドリンクバーを頼み、彼が呪物とやらを持ってくるのを待っていた。


 指定の時間から少し遅れて彼はやって来た。手にはいかにも怪しいと言った風の紙袋を抱えている。紙袋が真っ黒なのは中身を見えないようにしたいんだろうなと思いながら、席に座るよう促して、軽く食事を頼んでから待っている間その曰くを聞いた。


 何でもソレは人形らしいのだが、始めはガラスケースに入れていたらしい。しかし、人形を飾っていた部屋に、金色の髪の毛がたまに落ちていたり、もらい物の食品を置いていると開封されていたりと、まるで誰かがその部屋にいるようなことが起きたのだという。


 その部屋の中、ある時早朝にお手洗いに目が覚め、暗い中トイレに行って用を足し、戻る時に人形を飾っていた部屋からガタガタと音がしていた。


 なんの音だ? 疑問に思いその部屋に入ろうとした時にパタンと言う音がして、そのドアを開けると人形が部屋の真ん中に倒れていたのだそうだ。


 間違いなくガラスケースから出した事は無いし、その時誰も家には居なかった。だからその人形が動いていたのだろうと思い、そこそこ掘り出し物と言っていいほど出来のいい人形だったが、燃えないゴミの日に出すことにした。この手の呪物は時々本当に危ないものがあるので、処分する時にはためらわないようにしているそうだ。


 しかし、燃えないゴミとして縛ってから袋に入れたのに、それから出社して返ってくると玄関に縛っていたはずの人形が落ちていた。ゴミが体に付いていたのだが、それはあの時ゴミ捨て場にあった他の家のゴミに違いなかった。


 呪物には違いないが、ここまで危ないものはきちんと処分しないとならないと思い、近所の寺に行ったのだが、心付けまで持っていったのに門前払いされたそうだ。その時に『アンタが危ないものを集めているのは知っておるが、それはウチの手にはおえんな』そう言われて処分先の紹介もされず追い払われた。


 川に流したり、山に埋めたりしたが、それでも汚れた姿で家に帰ってきたらしい。


「そんなことがあったので、これの処分をお願いしたいんですよ。それじゃ、お願いしますね」


 言うが早いか、彼は注文していたフライドポテトの皿をこちらに押して、あっけにとられている間に千円札を置いて去って行った。もちろんあの袋を置いたままだった。


 あの人は始めからこれがやりたかったからここまで持ってきたんだなと思った。


 厄介ごとを持ち込まれたなと思いながら、彼が置いていった袋の口を開け、中を覗いて何かおかしいと思った。


 人目につかないように、角の方の席でこっそりと袋の中をスマホで照らすと、何かテカテカしたように光っている。ビスクドールか何かだろうかと思いながら、テーブルの上の食事を全部食べて、その袋を持ち帰った。


 そうして自分の部屋で黒い紙袋を開けて私は言葉を失った。それは確かに人形が入っていた。ただ、その人形はどう見ても骨壺の中に入っていた。何故こんなものに人形を詰め込んで持ってきたのか?


 彼の意図が読めず困ったのだが、捨てるわけにもいかず、近くの人形供養をしてくれるところを探して、後日持っていくことにした。


 結果、その話はスッキリと解決したことはなく、その晩寝ると、翌日には空っぽになった骨壺が置かれていた。どうしたものかと思いながら、もしかしたら彼の元へ人形が帰っていったのではないかと思い、彼からのメールに返信をしたのだが返事は返ってこなかった。


 彼も自分の住所を知られたくなかったのだろう、住所の類いは一切書いておらず、名前さえも偽名だったのでその人形がどうなったのかは知るよしも無い。


 出来れば名前も知らない彼が穏やかに生活していることを祈っている。

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