11 チームおでん
ギルドの掲示板前。
俺が緊急クエストの紙に手を伸ばそうとした瞬間、背後からTamakoとダイアンに肩を叩かれた。
「おっさん、その格好……初心者丸出しじゃん!」
「布にマント……いやその下、ペヤングTシャツ見えてるぞ? うわぁ……ダサッ!」
周りをチラ見すると、確かに視線が集まっている。
俺はマントの裾を必死で握りしめながら顔をしかめた。
(うるせぇ! 言われなくても分かってる! 俺だって好きでペヤング着てんじゃねぇ!)
Tamakoは腰に手を当ててにやにや笑う。
ポニーテールが元気に揺れて、いちいち挑発的だ。
隣のダイアンはというと、屈託のない笑顔で親指を立ててくる。
「でも安心しろ! 俺たちも初心者だ!」
「そうそう! あたしたち昨日から始めたばっかだから!」
胸を張って言うことじゃねぇだろ、それ。
⸻
クエストの説明文には「パーティーメンバー指定なし」と記されていた。
つまり――嫌でも一緒に行くことになりそうだ。
「で? あんた名前は?」
Tamakoが顎を上げて聞いてくる。
「……ハンぺラードだ」
一瞬の静寂。
次に響いたのは――
「はんぺんじゃん!!」
二人同時に大爆笑。
Tamakoは腹を抱え、ダイアンは太ももを叩きながらゲラゲラ笑っている。
「ちょ、ちょっと待て! ハンぺラードだ! ペンじゃない、ペラード!」
「いやいや! どう聞いても“はんぺん”だろ! 練り物感すごい!」
「おいTamako! この人おでんに沈めたら絶対合うやつだな!」
「……」
(こいつら、性格うるさすぎだろ……)
⸻
だが、俺も黙ってばかりはいられない。
「……お前らも大概だろ。Tamako? ダイアン? ……たまごと大根じゃねぇか」
二人が一瞬きょとんとする。
俺は胸を張って続けた。
「つまり、はんぺん・たまご・だいこん……俺ら――おでんの具じゃねぇか!」
しん、とした一瞬の後――
「ぶははははは!!」
「最高じゃんそれ!!」
Tamakoとダイアンは机をバンバン叩いて笑い出した。
俺は耳まで赤くなりながら頭を抱える。
「いや笑うなよ! ネタにすんな!」
「チーム名決まりだな! チームおでん!」
「おでん三人衆、いざ森へ!」
完全に盛り上がる二人。
俺は両手で顔を覆いながら、心の底で嘆いた。
(……なんでだよ。なんで俺は、こんなバカコンビとおでん鍋に沈む運命になっちまったんだ……!?)
⸻
こうして俺は――ペヤングTシャツのはんぺん、
ポニテ暴走娘のたまご、
能天気脳筋のだいこんと共に、チームおでんとして森へ向かうことになった。
(……異世界で俺が背負う運命、あまりにもダサすぎない?)