誰かの声
青年は複雑に止めどなく思考を巡らせていた。誰に迷惑をかけたわけでもないのに、何故か言い訳を探していた。
青年は学校の帰りに寄り道をした。余りにも腹を空かしていたのでファミレスに向かったのだ。
青年は案内された席についてメニュー表を手に取った。どれにしようかと長考していると、ふと、隣の机に座る男が目に入る。
男は中年程で腹の出張った体をしている。青年が思うに彼は大きなステーキを注文しすぐさま平らげるのだろう。
青年はそんなふうに考えながら自分はハンバーグ定食を注文することにした。
暫く料理を待っていると先に隣のテーブルの男に品が運ばれてきた。青年が予想外だったのは運ばれてきたものが彩色豊かなパフェだったことである。
青年は誰に何か言われたからでもなく慌てふためいた。早計な判断を下した事に何故か罪悪感を抱いていた。これは彼の性格からでもあるが周囲の影響の為でもある。意識を乗っ取られたように責め立てる声が自分の考えに入り混じっていき自分の考えを否定する義務感だけが膨れ上がっていく。注文したハンバーグ定食が机に置かれても、青年は数分間も考える事を止めなかった。
これは青年も思うところだが、この様な考えは実に煩わしいばかりである。