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君の瞳に恋してない  作者: バカノ餅
桜のあと
9/11

そうだ、確か──

「ふああぁぁ。。。ウズキ~、おはよ~。」


「おはよ~、知世ちゃん!スバルくんみたいな欠伸して、どうしたの?」


 「ん?ああ、いや~、ただの夜更かしかな~。」


「ほどほどにしてよ?知世ちゃん可愛いんだから!」


 「おお!あのウズキに言われるならほんとのことかな!.....ね、ねぇ、ウズキ。」


「どうしたの?」





 

 

「ど、どうする...?」

 

 俺は今電柱の陰に隠れている。

 ...な、なんかあそこの空間輝いてないか?なんか、俺がここで声をかけるのはダメな気がする...

 いや、でもこのまま隠れていたら事案にでもなりそうだ...

 バレる前にこの状況を何とかするしかない。

 とりあえず回り道を...


 ヒソヒソ


 2人がヒソヒソ話を始めた。

 ん?まてよ?この流れって...


 シュタタタタ

 

 「おーーーい!!」


 おい見たぞ!この流れぇ!

 ちくしょお!とりあえず追いついて誤解を解くしかない!


 そうして完全に事案的な追いかけっこが始まった。


「少し遠いけどこのまま真っ直ぐ行くなら...!」

 

 俺の足なら追いつく...!


「な!曲がった!?」


 学校の道とは違う...!ということは、子供110番の家に逃げ込むのか!ま、まずい!誤解が解けないまま、警察呼ばれるのはたまったもんじゃねぇ!

 とりあえず角に曲がってみるしかない!


 ミシシ...


「ん?って、うわあ!」


 角を曲がった瞬間、足に糸が巻き付けられ、タロットカードの"吊るされた男"のように逆さ吊りになってしまった。


「へぇ?羽田君だったんだ。」


「スバル...くん...?隠れて何してたの?」


 や、やっべぇ...ベテランの解体人が解体する豚をみるような、冷ややかで、哀れみのある目で2人が見てくる...!

 いや、俺が悪いんだけどさぁ!

 

「ま、まて!まってくれ!誤解だ!話せばわかる!」

 

「ねぇ、ウズキ。その言葉でわかったことってあったけ?」 


「ないかな?」

 

「お、俺はただ、挨拶しようとしただけだ!ただ2人の輝いている空気に入りづらくて陰で見ることしかできなかったんだぁ!」


「へぇ?羽田君は、ただ女の子に挨拶できない男子なだけだったってことなんだね。ウズキ、どうする?」


「知世ちゃんの判断に任せるよ!」


「じゃあ、降ろしてあげるか。」


 さ、散々言われてる...

 でも、誤解は解けたのか?


「スバルくん、いい?これからはちゃんと挨拶してよ?知世ちゃん凄く怖がってたよ?」

 

「はい...」


 2人は降ろしてくれた。


「知世様誠に申し上げございませんでした!」


「べつにいいよ!人も理由も分かったんだから。」


「本当にすみません...」


 キーンコーンカーンコーン

 昼放課のチャイムが鳴る。


「じゃあ、ちょっとアタシ購買行ってくるね〜!」


「いってらっしゃい!」 「いってら〜」


「うおーー!購買ダッシューー!!」


 そう言って知世はフェードアウトしていった。


「ふふっ。転んじゃうよ?」


「知世のやつ今日こそ、お手製メロンパンを手に入れるって豪語してたからな。」


「アレ人気だからね。」


 一緒に座って、弁当を食べながら談笑をする。

 なんだろう、男子達の視線が痛い気がするが...まあ、気のせいだろう。


「ね、ねぇ!」


「どうした?」


 なんかもじもじしてる...な、なんだ?よくある『頬に米粒ついてるよ』ってやつか?そうゆう展開なら、全然カモンだな!


「あ、明日さ...い、一緒に買い物行こうよ!」


 もっとやばい展開来たぁぁああ!

 うおおお!し、視線が!男子たち視線が痛ぇ!


「だ、ダメ...だよね?」


 う、卯月...や、やめろ...!その目線で追い打ちをかけるのはやめろ!


「くっ...!ああ!行ってやるよぉ!いつでもどこでも行ってやるよぉ!」


 もうこうなったらとことん来やがれぇ!!


「やった!じゃあ!お昼も一緒に食べよ!」


 あ、まずい。殺意を感じる。


「あ、アア。ソウシヨウ。」 


 ココマデクルトハ、オモワナカッタ。


「とりあえず11時にスバルくんの家に行っていい?」


 あ。


「なんでもいいぜ...もう...」 


「ふふっ。」


「そ、そういえば知世遅いな〜。」


「遅いって誰が〜?」


 真横からニョキッとでてきた。


「ち、知世ちゃん!?いつの間に...?」


「最初から最後まで!」


「へ?」


 卯月が固まった。


「いや~メシウマでしたわ〜!メロンパンは手に入らなかったけど、別のものを手に入れた気がするわ〜!」


 知世は少し涙目になりながら卯月の背中を叩く。

 メロンパンが売れ切れて、悔しかったのだろう。


「ボ、ボクも購買行ってくるぅ!!」


「あ、ちょっ、もう全部売り切れたよー!」


 すごい速さで卯月がどっかへ行った。


「ありゃま、行っちゃった。」


 そう言って知世は、ついさっき空いた椅子に座った。


「さぁ~て!今日のウズキのお弁当はなんだ~?」


「空気満々じゃねぇか。」


「いいのいいの〜!ってもう食べきっちゃってるじゃん!」


 グゥ~。


「ん?どこの音だ?」


「アタシからだよっ!」


 まさか、ほかの食べ物すら買えなかったのか...?


「ほらこれやるよ。」


「み、ミニトマト...?」


「おう!いつもの礼だ!」


「うぅ。アンタどんだけいいやつなんだよぉ〜!」


「ヘヘッ。」


 そのまま知世は、渡した一粒を食べた。


「ん〜!甘いねこれ〜!さて、下ごしらえを終えたところで、本題に入ろうかな。」


「本題?」


「そう。聞いたんだけど、イジメっ子に住所バレたってホントなんだね?」


「...どこで聞いた?」


「辺りが暗くなったばっかの6時何十分ぐらいに、アタシの家の近く、偉自子と悪山の電話で。」


「...そうか。」


「昨日、ウズキがアンタの家に行ってたはずだけど、ウズキはこの件知ってるの?」


「ああ。知ってる。」


「...はぁ、どうやらアタシの住所もバレてるみたいだし、お互いあとに引けなくなったね。」


「引くっていう選択肢があるのか?」


「ないよ。」


「よかったぜ。同じ考えで。」


 ガラガラ


「お!ウズキが帰ってきた!んじゃ、アタシ先にコンピューター室行ってくるから、ごゆっくり〜」


 知世が卯月にウィンクをする。


「え!?ちょっと、知世ちゃん!?」


 知世は爆速で、教室から出ていった。 


「ああ、えっと...」


「ハハッ、あんなに冷やかし食らったら、話しにくいよな。」


「うん...」


 卯月が隣に座り込む。


「えーっと...」


「明日は買い物なんだろ?どこに行くんだ?」


「え?ああ、四季ノ大通り(しきのおおどおり)かな!」


 四季ノ大通りか、休日を過ごすならちょうどいいし、電車一本で行けるからサイコーだな!


「なあ、昼も済ませるんだろ?四季ノ大通りのどこらへんだ?」


「それはまだかな。着いたら決めよ!」


「そうだな。」


 ふと教室を見回すと、皆は次の授業の準備をしていた。


「やべぇ!次移動だろ?」


「そんなに急がなくても、コンピューター室から近いからゆっくり行こうよ〜!」


「まあ、確かに。」


 ゆっくり行こうといっても、一応移動するための準備は済ませておこう。

 卯月も同じタイミングで準備を始めた。


「あ、そういえば聞きたいことあったんだった。人がいると話しにくいからさ。」


「ん?なんだよ聞きたいことって。」







 ボクは、情報の教科書を抱えて、スバルくんへ近づく。


「...ねぇ、なんで昨日泣いてたの?」


「......」


「覚えてるでしょ?昨日の1限目の放課。寝てたスバルくんをボクが起こしたあの出来事。あの時のスバルくん、様子がおかしかったよ?」


 ***


「え?おい?神美?俺なんかした!?」


「しらないっ!ん?あれ?ス」


「はぁ、もう、何が何だか分からないが、まあいいだろう。うん。次、音楽だろ?早く行こうぜ!」


 ***


「あの時、もう一個おかしなこと言ってたよね?そうだ、確か──」


「なあ」


「っ!」


「その話、明日でいいか?」


「......うん。ごめん、変な詮索して。」


「謝る必要はない。今ここで話す内容でもないからな」


 スバルくんは後ろを向く。


「あー。一応言っておくが、あの件は卯月のせいじゃない。」


「え?」


「お前のことだ、なんか勘違いしそうだからな。」


 そう言って、振り返ったスバルくんは、微笑んだ。

 でもなにか、その微笑みは、いつもとは違った気がした。


「あーっと...。じゃあ、行くか?」


「う、うん!行こう。」


 その後のスバルくんは、いつも通りのスバルくんだった。学校も、途中の帰り道も。

 

 でも...でもあの時...ボクが()()()()について聞こうとした時、その時のスバルくんは...あの優しくて、あたたかいスバルくんじゃなくて、

 ボクの知らない、怖くて、冷たい別人みたいだった。


「もしも〜し!ウズキ、聞いてるの〜?」


「え、あ、ごめん。なんだっけ?」


 カラスの鳴き声が聞こえる。少し重い鞄。ご飯を作る匂いがする。知世ちゃんと一緒に、黄色に染まった町を歩く。

 ああ、そうだ、確か今は下校中だったんだ。


「も〜、ウズキったら。さっきの情報の時間からおかしいよ?ふふっ。まあでも、仕方ないよね〜?なんだって、明日デートに行くんだもんね〜?」


「え!?ちょっ!デートって!」


「大丈夫だって!羽田君くんと別れてからちょっと経ったし、誰も聞いてないよ〜?」


「ほ、ほんと?」


「うんうん!()()()()()()()()()()、ウズキたちがデートに行くって聞いてないよ〜!」


「え?な、なに?その含みのある言い方...?」


「まあ、だって噂になってるもん。」


「へ?」


「いや~、ヤバいよねぇ〜?あの鉄壁要塞の門が開かれたんだからね〜」


「......」


「ほらほら、魂抜かれたみたいな顔しない。明日があるんでしょ?」


「はい...」


「...まあ、でも用心したほうがいいかもね。」


「え?」


「学校中に噂が広まったんだもん。誰も知らないなんてことがないぐらい。それはどうゆう意味するか...わかる?」


「それって...」


「そう。アイツらの耳にも入ってるはず。」


「.......」


 偉自子達に......


「ねぇウズキ、今楽しい?」


「え?な、なに急に...?」


「いいから答えて。」


「うん。楽しいよ!」


「ハハ、凄くとっっっても嬉しいことだけど......だけどね、本当に気を付けて欲しい。忘れないで欲しい。」


 知世ちゃんの足が止まる。


「『幸せ』が壊れる瞬間ってのは、死に一番近くて、ずっと残る苦痛だってことを。その苦痛から逃れるために、死のうとする人が現れるぐらいにね。」


「...知世ちゃん......」


「嫌な予感がするんだ。これは勘違いかもしれない。でも、この勘を無視できない気がする。」


「...わかった。気を付ける。だから心配しなくていいよ!いざとなったら投げ飛ばすから!」


「ふふっ、ならよかった!じゃあ今日は、アタシの家に来てよ!」


「え!いいの!?」


「全然いいよ〜!アタシがデートのとっておきを教えてあげるから!」


「も〜!そんな大げさな!でも、親御さんとかいいの?邪魔にならない?」


「あれ?言ってなかった?親は出張!姉は寮生活!だから誘ったんだよ?一人で食べるご飯より、皆で食べるご飯が美味しいってよく言うじゃん!」


「確かにそうだね。」


「ほらほら!どうしたの?早く行こ!今日はアタシがご飯作ってあげる!」


「うん!そうだね、行こ!ボク、知世ちゃんの料理食べてみたい!」


「へっへっへっ〜!任せなさい!」

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