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君の瞳に恋してない  作者: バカノ餅
桜のあと
7/11

びっくり

 「ふああぁぁ。。。あ~ねむい...」


 今日は木曜日。俺は今、絶賛寝不足中だ。

 なぜだ?11時に寝床について6時に起きたはずだ。それで寝不足気味なのはおかしくないか?ただ少し昨日の発言と行動を振り返ってただけだぞ??


「スバルくん!おはよー!」


 後ろから聞き覚えのある声がした。神美だ。


「おー。おはよう。。。」


「な、なんか眠そうだね?寝不足?」


「そう」


「ありゃ」


 2人きりで、少し冷える朝の通学路を話しながら歩く。


「大丈夫なの?1限目、言語文化だよ?」


「き、気合で乗り切るしかない...」


「しかも小テストだし。」


「は?え!?なにぃ!?」


「助動詞覚えた?」


「...」


 やっべぇ...ど忘れ...


「神美様!どうか助けて!」


「た、助けてって...覚えるもんなんだから助けられないよ?」


「なんとか覚え方でも...!な、なんか『すいかかえて』のもっといいバージョンとかないでしょうか?」


「ないよそんなの。」


「そんなぁ!」


「反復で覚えるしかないよ」


「神美様はそうやって覚えたのですか...?」


「ううん、授業中で、先生のお話聞いて覚えた。」


「え?」


「記憶したっていえばいいのかな?先生が言葉を噛んだところとか、スバルくんが当てられたときなんて言ったかとか、一言一句言い間違えない自信があるよ!」


「え、マジィ?」 


「ボク、記憶力はいいんだよね。」


「お、おい、『記憶力』の領域じゃねえぞ!?」


「そう?」


「そうだよ!」


 な、なんて奴だ...瞬間記憶能力でも持ってんのか?


「す、すげぇ能力だな。」


「あまりいいもんじゃないよ。」


「そうか?」


「そうだよ。だって忘れることができないんだもん。」


「忘れること?」


「うん。そうだよ。忘れられないんだよ。目をつぶると鮮明に、今起きてるみたいに、浮かび上がるんだよ...嫌なことが。」


「....でもそれって、楽しかったことも、嬉しかったことも、思い浮かべれるんだろ?」


「え?」


「ならいい能力じゃねえか?嫌なことがあっても、嬉しいことで埋めちまえば全然いいだろ?」


「そんなの...」


「できるって!俺と知世がいるだろ?なんだ?足りないか?」


「えっ?いや!そんなことは...」


「じゃあ大丈夫だな!今は辛いだろうけど、これからは楽しい記憶で目が回るぜ?」


「...ふふっ」


「な、なんだよ。い、いいだろ?こんなこと言ったって。」


「だいじょーぶ!なんでもない!」






 ちょいちょいちょいちょいちょい!

 なに?なに?なに!?いい感じじゃん!あの2人!

 アタシは今、2人から少し離れた電柱の後ろにいる。

 あっれぇ?このままついて行って、

 「ツカマエタァ〜!」って言って2人を驚かせようとしたのに...は、入れないっ!?あの中に入れないっ!!

 え?なに?なにあの雰囲気?

 あんな笑顔で話してる卯月見たら邪魔できるわけないじゃん?水差せないじゃん!

 え?なんか胸が苦しいんだけど!?

 え??てぇてぇ?これがてぇてぇって気持ちなの?

 推すの?推しちゃうの?アタシこの2人推しちゃうの?

 ん?あれ?羽田君、今こっちみた?気のせい?

 ん??あれ??卯月となんか話してる...?

 あっ逃げた。


「ちょー!」


 は、速い!あの2人速い!体育会系どもめぇ!ちょい!ま、まってぇ!怪しい人じゃないよぉ!?ミイラみたいだけど、そんなに不審者じゃないよ!?ただ電柱の後ろで隠れて、観てただけだよ!?

 

 「と、とにかく追いかけるしかない!」


 とにかく必死に、肺が出てきそうなほど、走って追いかけた...が、見失ってしまった。


「ひぃ...ひぃ...はぁ...ふぅ...ど、どこいった...?」


 あ、頭がまわらない...ハ、ハードすぎるよぉ...

 

 「はぁ...はぁ...あ、あれぇ?おかしいな?ここで曲がったはずなのに...」


 ザッ


 !?人!?後ろに!


「「うわっ!!」」


「....っ!」


 後ろにいる人から距離をとって、威嚇のためにハサミを取りだし、トラップを作る準備をする。


「うわぁ!?」


「まてまて!落ち着け!俺らだ!」


「ア、アンタ達か!ふぅ〜。び、びっくりしたぁ...」


 ハサミと糸を下ろす。


「あ、その、ごめん、知世ちゃん...」


「え!?いやいや!大丈夫だって!考えればすぐわかったことだから!」


「いや、でも怖い思いさせたんだ。これ考えたのは俺だ。ごめん。」


「ちょ、ちょいちょい!みんなしてそんな!頭上げてよ!アタシだって驚かせようとしたし、そっちも驚かせようとしたんでしょ?大丈夫だって!アタシはめっっちゃ嬉しいよ!」


「そ、そうか?」


「ぜーんぜん!ぜんぜん!もー!ほらほら、2人とも早く行こうよ!遅刻しちゃうよ?学校はもうすぐだからさ〜!」


「え?ちょ!ち、知世ちゃん!?まだホームルーム始まるまで40分もあるよ!?そんなに急がなくても!」


「なんだよ知世。もう1回走るのか?」


「走りはしないって!さっきでもうヘトヘトー!」


「言動が合ってないよ知世ちゃん!?」


 キーンコーンカーンコーン


 「ふぅ〜!終わったぁ〜!」


「ふふっ、知世ちゃんお疲れ様!ずっとノートに板書写してたの、偉かったじゃん!ほんとに知世ちゃん?」


「いやぁ、さっき新しいトラップを思い付いてさ〜!そしたらもうシャーペンが止まらなくて...!」


「良かった、本人だ!」


 あれ今アタシ貶された?


「あ、そうだ。ねぇ、スバルく...」


「...........」


「え?スバルくん?な、なんか燃え尽きてる...寝てるのかな?」


「..............」


「スバルくん?」


「ウズキ、ちょっと突いてみてよ」


「う、うん」


 卯月がシャーペンのノブで羽田君の肩を突く。


 ツンツン


「......................はっ!しょうゆっ!!」


「うわぁ!?しょ、しょうゆ!?」


 勢いよく謎の『醤油』というワードを吐きながら起きる羽田君に卯月がビックリする。


「ぷっ!」


「ち、知世ちゃん!何がおかしいの!?」


「ああ、いや、そんなことは...ふふっ」


 わ、笑いを抑えるのに必死で説明が...!


「だ、だって...卯月の驚き方がっ...あ、やば、ツボ入った」


「な、なんでツボに入るの!?知世ちゃんのツボ出っ張ってない!?」


「お前ら...なにやってんだ?」


「スバルくんのせいだよ!」


「え?は!?え!?なんで!?」


「ぷっあはははははは!も、もうだめっ!ちょっ!ぷっ、くくく...!」


「え?おい?神美?俺なんかした!?」


「しらないっ!ん?あれ?ス」


「はぁ、もう、何が何だか分からないが、まあいいだろう。うん。次、音楽だろ?早く行こうぜ!」


 そう言ってパパッと準備した羽田君はそそくさと教室から出ていった。

 アタシ達も羽田君を追うように教室をあとにした。


 そして昼放課。


「はぁ~、ウズキ〜!なんで明日休みじゃないのさ〜!」


 アタシは卯月に凭れ掛かる。


「ふふっ。まあまあ!今日だっていいことあるでしょ?」


「なによー!ウズキ...アンタなんかいいことでもあったの?」


「え?」


「それとも、いいことでも()()()の?」


「へ!?いや!?そんなことはっ!」


「あ、あの!神美さん!」


「「はい?」」


「は、ハモった。」


 え?誰コイツ?


「あれ?君は確か、一組の優地 模分太(やさじモブた)くん?」


「あ!はい、そうです!」


 え...?誰?

 というか、卯月...アンタ、名前からしてモブの子よく覚えられるね...

 って、え?、一組!?別の階の子!?アタシ達八組でしょ!?真反対でしょ!?何処で会ったの!?何処で知ったの!?


「ね、ねぇ、ウズキ?『いいこと』ってコイツなの?てか、コイツと何処で会ったの?」


「いや?『いいこと』じゃないよ?ただ入学式で見ただけだよ?」


「え?入学式って皆の名前呼んでたってけ?」


「呼んでないよ?ほら、入学式ってさ、クラスごとで番号順に座るでしょ?クラスと番号が載ってる名簿から当てはめていけばわかるでしょ?」


「...」


 こ、これは冗談なのだろうか?

 下手なジョークを言う担当はアタシだけなはずだが?


「あ、あの!ヒソヒソ話してるとこ、ごめんなさい!ぼ、僕、神美さんに用があってきました!」


 あ、コイツ忘れてた。


「どうしたの?」


「い、一緒に、屋上へ来てください!」


 ま、まさか...


 そして屋上へ卯月と一緒に行ってみる。

 ある予感がしたので屋上の扉の裏で隠れて観る。


「僕と付き合ってください!」


 やっぱりぃぃぃ!!

 おい!ボーイ!やったな!?やりやがったな!?

 一体どうなるのか、分かってて言ってるんだな!?


「ありがとう。こんなボクに構ってくれるなんてうれしいよ。でも、君はボクに今何がおきてるか、何を背負ってるか知ってるの?」


「え?」


「知らなくてもしょうがないよね。へへ、ボクね、今イジメられてるんだ」


「!?......」


「だから...」 


 「...でも!それでも!僕が支えになります!」


「へへ、ありがとう。でもね、イジメっ子の邪魔をするってことは、目をつけられることだよ?」


「そんなの大丈夫です!」


「じゃあさ、優地くんは、自分の身を守れる?」


「え?あ、ある程度は...」

 

 きた...アレだ。


「ボクを転ばせたら付き合うよ」


「え!?そんなのって!」


「でも君が転んだら諦めてね?」


 入学式と同じ戦法だ...!


「大丈夫なら行動で示してよ。君が今、ボクを呼び出して告白してるみたいにさ。安心して、触られたって言ってワーワー騒ぐことなんてしないから。」


「は、はい。わかりました...では、いきます!」


 結果は一目瞭然だった。


「ほら、立てる?」


「は、はい...出しゃばってごめんなさい...」


「君は十分すごいよ?『出しゃばる』なんて言わないで。」


「そんな...!」


「君はすごい行動力がある。約束だからボクのことは諦めてほしいけど、その行動力で、いい人見つけたらアタックしてみてね!応援するよ!」


「ありがとう...ございます.......!」


 そう言って顔を上げた彼は、走って扉を開け、屋上を去っていった。

 すれ違った時、彼は一滴の涙を落としていた。

 アタシは今、彼の人生を大きく左右する瞬間を目撃した気がした。

 アタシは彼の行動に敬意を表するとしよう。

 頑張れ!やかじ!あれ?やたじ?

 .....................がんばれ!


「知世ちゃん?」


 後ろから扉を開けた卯月に声をかけられる。


「卯月〜?これで何人目?」


「31人かな?」


「もうすぐでクラス一つ分の人数になるじゃん...」


「...ねぇ、知世ちゃん、メガネ取ってみてよ。」


「え!?なんで急に?」


「いや、知世ちゃんの顔って、なんか...なんだろう?嘘ついてるみたい?」


「...え〜?ちょいちょい!アタシ以外だったら失礼な発言だよ〜?」


「あっ!ごめん、そんなつもりは...」


「いいのいいの!びっくりしただけ!」


「え、えーっと...」


「ふふっ。行ってきたら?」


「え!?ど、どこへ?」


「アンタ、羽田君の家に行くんでしょ?」


「ふぇ!?なんでそれを!?」


「あんまりアタシを舐めないでよ〜?ほら!早く行ってきな!羽田君、内心ドキドキでしょうがないかもよ?」


「ええ?そんなことないと思うけど...?ま、まあいいや。じゃあ、行ってくるね!」


「じゃね〜!」


 笑顔な卯月は駆け足で羽田君のもとへと去っていった。


「..............」

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