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君の瞳に恋してない  作者: バカノ餅
桜のあと
3/4

あたたかい

今日は月曜日。如何に1週間のスタートダッシュを綺麗に決めるか、この1週間の全てがほぼ決まる月曜日。そんな日に俺は今ベットの上で天井をボーッと見ている。


 「ゲホッゲホッ!ハックシュン!」


 風邪をひいてしまったのだ。おかしい昨日はちゃんとビショビショの中、寒さに耐えながら爆速で帰ったはずだ。すぐに着替えた。でも何故か家に着く頃には乾いていたんだ。


「あ〜動けねぇ〜……」


 頭がボーッとする...なんか...ねむく...ね..る.......



 

「ウズキ。今日、羽田君休みなかな?」


 「さぁ?風邪でも引いたのかな?」

 

「確かに...有り得るかも。昨日びしょ濡れだったし!」


 多分あの日。あの速さで濡れたまま帰るもんだから、体が冷えちゃったんだろうな。


 バン!


 ドアを勢いよく開く音が聞こえる。


 「おい!羽田はどこだ!」


 聞き覚えのある声、悪山だ。さっきまでガヤガヤしていた教室は、誰もいなかったかのように静まり返る。どうやら羽田くんを探しているみたいだ。

 

 「チッ!クソが!」


 ガタン!


 机を蹴りあげる音がする。みんな何も言わず関わるまいと必死に無視をしている。昨日、羽田くんに一発もらったことを引きずっているらしい。羽田くんがいないと分かったのか、不満そうに去っていった。月曜の朝から、気分がよくない光景を見てしまった。


 「...」


 知世ちゃんは、向こうを見ようともせず、悪山から見えないようにボクを体で隠していた。


「もう行ったよね?」


 小声でボクに状況を聞く。


「もう行ったよ。」


 この言葉でヒソヒソと教室にいるみんなが話始める。


「ねぇ?はねだくんと悪山、なんかあったのかな?」


 「喧嘩でもしたんじゃない?」


「え?それってやばくない?あいつらに目付けられるってことでしょ?まだ高校生活始まったばっかなのに...可哀想に...」


 ヒソヒソ......


 冷たいうわさが広がっていく。知世ちゃんは、真剣な表情でこの教室を見回す。


「何が可哀想にだよ。」


 知世ちゃんはそう呟く。


「ウズキ。多分、アンタ後で偉自子たちに呼び出されるかもしれない。その時は、アタシを呼んで。いい?」


「...うん」


 流れでうなずいてしまう。ボクの嘘つき。そんな約束できるわけないよ...これ以上、大切な人達が傷つくの見たくないんだよ...

 この後、時間は流れていったが、ボクが呼び出されることはなかった。


「じゃね~!」


 放課後、あの河川敷。ボクは、知世ちゃんの家の近くまでついていき、知世ちゃんを見送る。


 「またね。」


 ボクもお別れの挨拶をする。知世ちゃんが見えなくなるまで。少し待つ。


「もう出てきなよ。」


 橋の下から、人影がぞろぞろと出てくる。偉自子たちだ。


「うずちゃ~ん?やっとお話ができるね?ほら~早く下に降りてきなよ。」


 偉自子のいう通りにして、土手を下る。そして偉自子たちがいる、あの橋の下へ向かう。


「「そ~れぃ!」」


 バシャ!


 小太りの子とやせている子に、水をかけられる。ハハ、冷たいよ。


 「プッ!キャハハハハ!ねえ、ぽっちゃん!やっちゃん!早速、水かけるのマジィ?」


「フフ、フフフ。草。」


 お化粧の濃い子が、思いっきり笑い、動画を撮っている子は、おとなしく笑う。ぽっちゃんっていうのは小太りの子で、やっちゃんっていうのが、やせている子のことのようだ。

 

「ねぇ~?うずちゃん。昨日はさ、よくもやってくれたよね?」


 偉自子が、動画を取っている子のスマホを取り、ニヤニヤしながらカメラを向けこっちに近づいてくる。


「やめてよ。」


 こうやって、相手がしてほしい反応をすれば...このまま好きにさせれば...ずっと舐められ、ほかの人がイジメのターゲットになることはない。こんなのボクなら全然できる。できるんだ。


 「あちゃ~びしょびしょだねぇ?私着替え持っているから貸してあげるよぉ?」


 偉自子はそう言って、ボクに体操服を渡してくる。


「ほらぁ。かわいい子の生着替えシーンってサイトに上げれば結構売れるんだよ?安心してよぉ~ちゃんと利益は分けてあげるからさ?」


 「ウソォ~生着替えマジィ?ヤバすぎィ~。偉自子容赦な!キャハハハ!」


 ハハ...みんなの前でボクが着替えるだけなら...それでほかの人に危害が及ばないなら....それで.......

 ボクは、体操服を受け取ろうとする。でもなぜか、手が震える。なんでだろう。寒いから?人に見られたくないし、撮られたくないから?そんなの理由になるのかな...いいのかな...?


 「ねぇ。早くしてよ。」


 偉自子の冷たい声がボクの震えを強くする。


「......だ...」


「は?」


「いや...だ......」


 震える声で断る。何をやっているんだろう。無駄なのに。


「あっそ」


 ああ。殴られるのか。その方が楽だ。


「んじゃ、嘘之にしようか。」


 え?


「うずちゃんとつるんでる噓之にしたら面白そうな人~!」


 全員が....手を...挙げて... は?....なに...これ...?


「おっ!決まりだあ!じゃあもういいよ。ほら、帰りな?」


 「え?...どう...ゆう......」


「もう帰っていいってことだよ?どうしたの?嫌なんでしょ?()()()()()()()イジメやめるよ。」


「やめて!」


 ボクはそう偉自子のに怒鳴りつける。


「お願いだから...ほかの人を巻き込まないで...本当に...おねがいだから......」


 「へぇ?そうなの?お願いされたら仕方ないね。でもぉ...今まで嫌って言ってなかったうずちゃんが、今日嫌だって言ったんだからぁ~あなたの気持ちを尊重しないとでしょ?」


 体が震える。


 「みんな~今日は帰るよ~!」


 そういって偉自子たちは去ろうとする。まずい、その方角は...知世ちゃんの家だ。ダメだダメだダメだダメだ。絶対に知世ちゃんには!


「待ってっ!!」


 偉自子の腕をつかむ。震える声でボクは問いかける。


「ね、ねえ...君たちの家は向こうでしょ...?なんで知世ちゃんの家の方角に向かおうとするの...?」


「決まってるじゃん。帰るついでに寄るんだよ?噓之の家に。」


「そんなの!うっ」


 悪山に首をつかまれコンクリートの壁にたたきつけられる。


「 ぐあっ!」


 グググ


 首を絞められる。でもここでボクが絞殺されたらこいつらは裁かれるのかな?もう...それで...


「お前らやめろ!」


 もうろうとしていく意識の中で、声のする方へ顔を向ける。


「ち...せ...ちゃん...?」


 何で...ここにいるの?まずい...知世ちゃんが危ない....


 「悪山もういいよ。」


 偉自子が悪山に命令をする。悪山はボクのことを解放し、ボクはその場に倒れこむ。


「かはっ...けほっけほっ...うぅ...」


 「ウズキ!!お前ら何やってくれてんだっ!!」


 知世ちゃんが怒っている。でも、はやく...


 「知世ちゃん...は...はやく逃げて...あいつらは、知世ちゃんを...」


 「わかってる。アンタがさっき受けてきたことが動画で送られてきたから。」


 え?撮られていたのって...まさか...


 「おい、偉自子。今日お前がウズキにこの仕打ちをしたのは、アタシをおびき出すことでしょ?ほら、獲物のご登場だよ?」


 知世ちゃんが偉自子に近づく。


「はいスマホ返す。」


 偉自子が動画を撮る子にスマホを返し、ニヤニヤと知世ちゃんを待つ。


「なあ?聞いてんの?」


 左手で偉自子の胸ぐらをつかむ。こんなに怒っている知世ちゃん初めて見た。


「このカスが...狙いはアタシなんだろ?ならなんでアタシを直接呼ばない?」


 怒った表情で偉自子を問い詰める。胸ぐらをつかむ力はますます強くなる。


「お前を呼ぶとさ~?何かしらの準備してきそうじゃ~ん?やっぱ、急いできてほしいからぁ~」


 偉自子が、煽りを込めるようにぶりっ子で答える。


 「アタシが感情に任せて罠に飛び込んでくるように見える?」


「は?」


 そういうと同時に、頭上の橋から振り子のよう吊るされた大きな石と片栗粉の袋が勢いをつけて悪山の顔面に直撃する。


 「グオッ!なんだこれはァ!」


 昨日のように顔面を抑さえつける悪山。


「おりゃあ!」


 バシィ!


 悪山が顔を抑えた隙に、偉自子の顔面に知世ちゃんの右ストレートが直撃する。


「ぶふぉ!」


 偉自子が痛そうにしてその場で倒れこむ。


「はっ!どうだおら!」


 「キャー!偉自子ォ!」


 悲鳴を上げながら、化粧の濃い子が倒れた偉自子に近づく。


 「はっ!ちょ!ウズキ後ろ!」


 こっちを向いた知世ちゃんの言葉に従い後ろを見ると、小太りの子と、やせている子が拘束しようとこちらに近づく。

 横になった姿勢から小太りの子の足を払い、やせている子のもとへ蹴り飛ばす。


「うわあああ」


「ひいいいい」


 小太りの子がやせている子を下敷きにして倒れる。


 「ウズキナイス!」


 知世ちゃんが近づいて、手を差し伸べてくれる。


「ほら!逃げるよ!」


 ボクは知世ちゃんの手をと─


 


 .......キ.......ズ......て.......お...て!


 だれかのこえがする。

 うぅ...おなかが...いたい.......


 「おきて!ウズキ!」


 「っ!」


 何が起きたんだ...ボクは知世ちゃんの手を...つかもうとしたら...誰かが隣に...っ!そうだ...悪山がボクのおなかに打撃を。


 「やっと起きた?まさか...よく寝坊するの?」


 「知世ちゃん...?」


「わかるよ~アタシもよく寝坊するから~」


「そんな......知世ちゃん......なんで......?」


 ボクの目の前にはコンクリートの壁に寄りかかりながら...腕や頭が血だらけで...左手の薬指と小指がおかしな方向に折れ曲がっている...笑顔な知世ちゃんがいた.......


「ボクが...気を失った後....なにが...あったの......?」


「どうしたの~?そんな震えた声で?」


 知世ちゃんは笑顔で返事をした。


「大丈夫!大丈夫だよ!もうあいつらは居ない!だから...安心して?」


「安心できないよ!ねえ?何があったの?どうして...どうしてそんなボロボロになったの?そんな...なんで?どうし」


 っ!?


「大丈夫だよ?」


 そういって知世ちゃんはボクを抱きしめた。

 ...........あたた...かい...。


 「...知世ちゃん...?大丈夫?知世ちゃ」


 「すぅ....すぅ.... 」


 ああ...寝ちゃったのか....


 すこし...このままでいようかな....知世ちゃんを休ませて......もうすこしだけ...このあたたかさを......

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