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#6 開戦

「最新の情報です! ヴァルハラ共和国がエテルニア王国との中立条約を破棄し、宣戦布告したとのことです!」


 標準歴1145年、我が国の暦では帝国歴234年の8月13日の朝、ブラウン大尉が指揮官室へ新聞片手に飛び込んできた。


「やはり歴史通り、事は進むのか」

「そのようですね」


 俺の言葉に、ブラウン大尉がうなずく。前日の夜、すなわち8月12日午後6時にヴァルハラ共和国がエテルニア王国大使館に宣戦布告と条約破棄を通達、同日夜10時には、ヴァルハラ共和国軍がエテルニア王国との国境を越えたと、その新聞では報じられていた。


「総司令部でも、エテルニア王国を経由した我が国への侵攻が懸念されていると書かれている。が、差し迫った脅威とは捉えていないようだな」

「なぜでしょうか? 明らかにアウグスタス線での膠着状態を打破するための作戦だということは、さすがの総司令部でも判断されているはずです」

「それはそうだが、敵の戦力も不明だ。それにエテルニア王国も、それなりの軍事力を有する国だ。その状態で、ここまで即座に軍がたどり着くことは考えられないのだろう」

「ならばいっそ、エテルニア王国に我々の方から進出して……」

「そうはいかない。救援要請があったのならともかく、中立条約を批准する我が国が、その国の要請もなしに勝手に軍を王国内へ進めることはできない」

「ではこのまま、我々は指をくわえて待てとおっしゃるのですか!」


 バンッと、指揮官室の机に両手でたたきつける大尉だが、そこでハッとしたかのように冷静さを取り戻す。


「し、失礼いたしました。つい興奮してしまい……」


 ここまで興奮するブラウン大尉を見るのは、あの浴場以来だな。案外、この参謀は胸に熱いものを秘めている。実際、胸も厚いし……いや、それは別の話だ。


「ともかく、こちらからも援軍要請を出そうと考えている。侵攻する敵の総兵力はおよそ10万、戦車300両、航空機200機。これはエテルニア王国の兵力を大きく超える戦力だ。そのすべてがこちらに回るわけではないが、少なくともそれなりの戦力ないと食い止められないだろう」

「味方の援軍は、果たしてすぐに回せるものなのでしょうか?」

「どうだろうな。歴史的には、少なくとも5日間程度はかかったと言われている。その間、この要塞周辺で足止めする必要があると考える」

「ところで、その敵の兵力はどれほど押し寄せてくるのですか?」

「俺の記憶が正しければ、3個大隊だ。戦車は全部で100両、歩兵8千、そして航空機による支援もある」


 その数字を聞いて、ブラウン大尉の表情が曇る。


「安心しろ。森に潜んでいれば、航空機は手出しができない。問題は、敵の戦車隊だ」

「それにしても、10倍の兵力相手に、5日間も足止めをせよ、と」

「ネルベブルグ要塞では正直、だめだ。もって2日が限度だろう。それに、この古い城では味方の援軍を受け入れられない。ここからほど近い街、アルトシュタットまで後退しつつ、押し寄せる敵の集団を各個に撃破するのが現実的だ」

「そんなに、うまくいくものでしょうか?」

「エルダーバッハの森の戦いでは、やってのけたがな。そのための訓練も、これまで続けてきた。我が大隊の兵士たちなら、なんとかするだろう」


 涼しい顔で答えるが、俺も内心、気が気ではない。が、ここで指揮官が動揺を見せれば、その部下は皆、不安を募らせる。気持ちで負けてしまっては、10倍もの敵を相手にすることなど、もはや不可能となる。

 だからこそ、余裕を見せねばならない。エルダーバッハの森の戦いでも俺は、そうし続けた。だからこそ、勝利できたのだと今は思う。


「もちろん、戦争に絶対はない。こちらが絶対に生き残れるわけではないし、死者は出るだろう。一方、敵が絶対に勝てるわけでもない。古今東西、何倍もの敵を相手に勝った戦いはいくらでもある」

「はっ! その通りです、大佐」

「そのためには、臨機応変な対応に迫られる。大尉には大変な思いをさせることとなるが、覚悟して臨んでもらいたい」

「もとより承知です、ノルトハイム大佐」

「ところで大尉、一つ頼みがある」

「なんでしょうか、大佐」

「2番車両、あれを指揮車としたい」


 俺の提案に、やや面食らうブラウン大尉。


「もしかして、戦車に乗り込んだまま、指揮をなさるというので?」

「当然だろう。ここにはまともな指揮車がない。車両と言えるのは、燃料や弾薬を輸送するトラックが3台と、10両の戦車しかないのだから、そのどれかを使うしかない」

「しかし、なぜ2番を?」

「10両の中で、一番操舵手の腕がいい。おまけに、砲手の腕もずば抜けている。前線で指揮を執るなら、あの車両以外は考えられないな」

「承知いたしました。では、そのように手配いたします」


 元々、4式戦車は5人乗りだ。車長に操舵手、機関手、装填手、砲手だ。が、最新の3型は操舵手自身が前進、後退速度を操作できるようになったために機関手が不要となり、かつ自動装填装置のおかげで装填手が要らない。

 その余った2つの席に、俺と参謀が乗り込めば「指揮車」として使えると考えた。


「では早速、訓練なさいますか?」

「いや、しばらくの間、戦車を用いた訓練は控える。行軍訓練のみとする」

「何をおっしゃってるんですか、2週間後に、敵が迫ってるのではないのですか!?」

「なればこそだ。弾薬に燃料、それに兵士らの体力を温存せねばならない。また、戦いに備えての準備もある」

「準備とは?」

「ところで、我が兵士らは女だらけということもあって、ソーセージ造りの心得があると聞いたが」


 俺が唐突に発したこの言葉に、大尉は怪訝な表情で答える。


「はい、もちろん我が国の女であれば、当然心得ております。ですが、それが何か?」

「いや、その技を活かそうと思ってな」


 ますます怪訝な顔を見せるブラウン大尉に、俺が説明を加えようとした。

 まさに、その時だ。


「隊長! ご来客です!」


 一人の見張り兵が、指揮官室に慌ててやってきた。


「来客? 誰だ」

「ゾルターブルグ公爵夫人様です!」


 なんと、このタイミングであの公爵夫人が現れた。俺が直接、このお方に会うのは初めてだ。


「分かった。すぐにお通ししろ」

「はっ!」


 いくら自身が創設した隊とはいえ、こんな辺境まで、しかも宣戦布告されたばかりの隣国と接するこの場所に、どうしてこのタイミングで現れたのか。

 窓の外をちらっと見る。ここには似つかわしくない黒光りした車が一台、この古城のすぐ脇に停められている。あの公爵夫人のものだろう。

 ちょうど窓の外から指揮官室の扉に目を移した時、その扉が開かれる。現れたのは、タキシードの上着にスカートをはいた、一見奇妙な姿の中年のご婦人だ。帽子は身に着けているが、およそ貴族夫人がつけるような飾りのようなものはなく、側面にゾルターブルグ家の家紋がつけられただけの簡素なものだ。

 その人物こそが、あのゾルターブルグ公爵夫人だと、俺でもすぐにわかった。この公爵夫人、ディートリンデ・フォン・ゾルターブルグという名の、この高貴なる人物を俺とブラウン大尉は直立、敬礼して出迎える。


「ディートリンデ様! お久しゅうございます」

「あら、エレオノーラ、元気そうね。厳しい指揮官をつけたから、てっきり疲弊している者と思っていたわ」

「そのようなことはございません。祖国防衛のため、そして、男に負けない女性像実現のため、このようなところでへこたれている場合ではございません」

「相変わらず、強気だわね。ところで、ノルトハイム大佐」

「はっ!」

「聞くところによると、この部隊の兵士たちに、森の中を走らせているようね。怪我人も出たようだけれど」

「実戦的な訓練をせよとのお達しがございましたので」

「責めているわけではないわ。それだけ、あなたが本気だと分かったのだから、うれしくてね」


 自身が創設した戦車隊の隊員がいびられているというのに、この侯爵夫人は嬉しそうに笑う。一通り笑い終えた後、そばにいた兵にこう告げる。


「そうそう、3人だけ、つまりエレオノーラとノルトハイム大佐と私だけで話がしたいの、エルザ、申し訳ないけど席を外してくれるかしら?」

「はっ! 承知いたしました、ディートリンデ様!」


 まさかこの人、ここにいる隊員の名を全員、覚えているのではあるまいな。俺ですらまだすべての隊員の顔と名前が一致しているわけではないが、さらっとあの隊員の名を呼んだところを見ると、この公爵夫人のこの隊への思い入れの深さを思い知る。


「さて、いきなり本題に入るわね」


 来客用に用意したソファーに座るや、公爵夫人は単刀直入にこう言いだす。


「あなたも、転生者なのでしょう?」


 一瞬、心臓を素手でつかまれたような、そんな感触を覚えた。いやまて、今、この公爵夫人は「あなたも」と言わなかったか?


「そうおっしゃられるには、他にも転生者を御存知なので?」

「ええ、もちろん。といっても、それは私自身なのですけど」


 ゾルターブルグ公爵夫人が、自身を転生者だと言い放った。俺は尋ねる。


「いろいろと聞きたいことがございます。が、なぜ俺……小官が転生者だと?」

「簡単よ。エルダーバッハの森の戦いは本来、中隊が全滅することになっていた。なのに、全滅どころか数倍の敵を前にその中隊がヴァルハラ共和国軍を撃退してしまった。こんな芸当ができるのは、その歴史をよく知る者でなくては不可能なはず。そう思ったのよ」

「と、いうことは公爵夫人も前世で、歴史を学ばれていたのですか?」

「正確には、その時代を生きていた、ということよ。私は前世も今世も、ゾルターブルグ公爵夫人なのですから」


 俺には確かに、前世の記憶がある。が、自身が何者であったのか、名前すら憶えていない。あるのはこの戦いの歴史的な詳細記録と、今のこの時代よりもずっと進んだ建物や乗り物、そして人々の姿の、断片的な光景だけだ。


「小官が前世で何者であったのか、その記憶はございません。ただ、今よりもずっと後の時代で、このアーカディア帝国とヴァルハラ共和国との戦争に関する書物を読み調べていたという記憶のみが鮮明に残っているだけです」

「なるほどね。で、私はその歴史書にはどう書かれていたのかしら?」

「いえ、戦闘記録ばかりを読み漁っていたので、その際の公爵夫人がどう振る舞われていたかまでは……」

「そうね、たかが女性民権運動に没頭していた貴族夫人の記録なんて、戦闘記録には書かれているはずはないわね」


 何やら皮肉めいたことを語る公爵夫人だが、それは仕方がないだろう。だいたい俺が読んでいた資料には、103大隊が女性のみの部隊だったことすら書かれていなかったのだから。ましてやゾルターブルグ公爵夫人の名前など、あろうはずもない。


「で、エレオノーラのみを残したのは、あなたならばとっくに何か気づいているんじゃないかと、そう思ってね。で、どうなの?」

「はっ、訓練の内容を受け、疑問を感じ大佐に尋ね、この戦争の行く末についてお聞きすることができました。ですが、ディートリンデ様まで前世の記憶があることまでは……」

「そりゃそうよ。私はそんなこと、微塵も感じさせないよう生きてきたのだから」


 ブラウン大尉が用意した紅茶を一口、飲みながらそう語るこの貴族のご婦人は、その前世とやらで起きたことを話しなじめる。


「あなたも知っての通り、9月3日にはヴァルハラ共和国軍はエテルニア王国とアーカディア帝国の国境を越えて、ここネルベブルグ要塞に迫ってくるわ。当然、そうなる前に前世の私は103大隊の後退と、増援を要請した。が、敵があまりに早すぎて、間に合わなかった。9月10日の新聞に『前線部隊、全滅』の文字を見た時の私の歯がゆさと悔しさといったら……」


 と、思わず涙ぐむゾルターブルグ公爵夫人だが、ハンカチで目をぬぐうと、話を続ける。


「それから国土の3分の1を失いつつも、どうにか戦争を終え、皇帝の死去と同時に共和制へ移行した後も、私は女性民権運動をつづけた。それから女性議員になったり、女性の権利を認めさせるべく各国を飛び回ったり……だけど、103大隊最期の地となったネルベブルグの地には、ついに行くことすらかなわなかったわ。それが、私の前世よ」


 不屈の精神で、自身の理想を追い続けた人生だったようだが、その一環で創設したこの103大隊の喪失は、このご婦人にとって大きな汚点となったようだ。


「で、私は64歳でこの世を去った……はずなのに、いつの間にか同じ人生を歩んでいるのよ。それに気づいたのは、10歳の時かしら」

「つまり公爵夫人は、過去世をやり直している、と?」

「いえ、そうとも言い切れないわ」

「ですが、前世と同じゾルターブルグ公爵夫人となられたのですよね?」

「そうなんだけど、ここ、星が変なのよ」

「星が、変?」


 急におかしなことを言い出す公爵夫人。星が変とは、どういうことだ?


「星というのは、夜空に光るあれのことですよね?」

「そうよ。でも、ここの星は少ないの」

「どういうことです? 公爵夫人の前世では、もっと多かったのですか?」

「銀河、というものを知っているか?」

「ええ、星が渦上に分布する、巨大な星の集団だとか。近年、ニューアルビオン連邦国の科学者が発表したというものですよね?」

「そう、そして我々の地球もその銀河と呼ばれる星の集団の一つに過ぎない、と。夜空に見える『星の河』と呼ばれるあれは、我々が属する銀河の一部が見えているものだと言われているわ」

「その星の配置が、どう変なのですか?」

「私の前世では、それよりもずっと大きな渦巻き状の銀河が、夜空に大きく光ってたのよ」


 俺の記憶には、残念ながら夜空の記憶はない。だから、公爵夫人のいうことが理解できない。しかし、おそらく同じ歴史を歩んでいたことから、俺の前世も公爵夫人と同じ場所であったとは感じている。


「つまり、何が言いたいのでしょうか?」

「簡単よ。ここは何もかもが以前の世界と同じだが、まったく違う世界、ということ。そうとしか思えないわ」

「は、はぁ……」

「宇宙という場所は広い。たまたま同じ歴史を歩む世界がもう一つくらいあってもおかしくはないでしょう。だが、そんな世界に偶然、同じ前世の世界から来た2人が、同じ時代を歩むことになった。これが、どういうことか分かるかしら?」


 ゾルターブルグ公爵夫人はつまり、俺と公爵夫人がこの世界の歴史を変えるためにここに来たと、そう言いたいのだろう。だが、その結論は暴論過ぎる。単に同じ時代を持つ世界へ偶然来ただけかもしれない。


「単刀直入に申し上げるわ。あなたにはこの103大隊の隊員を、できるだけ生かしてほしいの」


 答えに窮していると、ゾルターブルグ公爵夫人がいきなり切り出した。


「元より、そのつもりです。ですが相手は大軍、小官とていくら知識があるからと言っても、戦争というものは不確定要素が多すぎます。絶対、という言葉は言えません」

「さすがに激戦になるでしょうね。が、全員は無理でも、一人でも多く生き残れるならそれでいい。かなうならば、このネルベブルグの地も失いたくないわね」

「そ、そこまでの期待に応えられるかなど、小官は明言できません」

「ともかく、我々が何のためにここに再び生を得たのかを考えれば、それくらいのことを願うのは当然でしょう」

「い、いや、しかし……」

「必ずや、大佐なら成し遂げられる! それが運命なの、我らの今の転生は単なる偶然の産物ではない! 世界を変えよとの意味が込められているに違いないのだから!」


 立ち上がり、拳を振り上げて興奮気味に語りだす公爵夫人に、俺は押されっぱなしだ。だが、この言葉からはこの貴族のご婦人が抱いている前世の無念が、ひしひしと感じられる。


「わ、分かりました。我が103大隊は必ずや敵を破り、そして生き残ってみせます!」


 この言質を引き出した公爵夫人は、急に冷静さを取り戻す。


「……いけないいけない、取り乱してしまうところだったわ。ともかく、今の約束、必ずや果たされるよう願ってますわよ」

「は、はぁ……」

「私とて、遊んでいるわけではないわ。軍に働きかけ、必ずやこの国土を守り抜いてみせるわよ」


 そう告げると、夫人は残りの紅茶を飲み干して立ち上がる。そして、手を振りながら指揮官室を出る。慌てて俺とブラウン大尉は後を追い、夫人を見送る。


「貴殿らのこの先に、幸多からんことを!」


 そう叫ぶと、ゾルターブルグ公爵夫人を乗せた車は走り去っていった。それを敬礼したまま、140名の兵士らとともに見送る。


「大変な約束を、とりつけられましたね」


 再び指揮官室で、ブラウン大尉と先ほどのやり取りを振り返る。


「公爵夫人に言われるまでもなく、全滅する気はない。だが、戦闘に絶対という言葉は存在しないからな」

「とはいえ、ディートリンデ様のおっしゃる通りです。私にも、何やら大佐が来られたことに、運命めいたものを感じております」

「言ってくれるな。だが、その運命とやらを決めたやつがもし存在するならば、もう少しマシな能力、例えば敵の指揮官の位置を見つけ出すとか、戦車砲の命中率を倍に引き上げてくれる力とか、そういうものを与えてくれるものじゃないか?」

「9月3日に、敵が押し寄せてくると知っているだけでもかなりの力でございますよ。それだけでなく、その時の敵の戦力すらも御存知となれば、それで十分かと」


 簡単に言ってくれる。その戦力が我々の10倍とわかっているから困る。いくらテストの問題を先に渡されたからと言って、難問過ぎてその解き方を知らないまま本番を迎えさせられるようなものだ。たいして有利だとは思えない。


「それに結果が悪くて、史実通りの全滅ならば、約束を違えたところで責任の取りようがありません。でも小官は、大佐がうまく切り抜けてくれるものと信じております」

「信じるのは構わないが、期待通り行くとは限らんぞ」

「否定的よりも、少し楽観的に考えませんか? その激戦を乗り越えて、いずれ平和な世を迎えたその先に……」

「その先に、何かがあるのか?」

「い、いえ、今は作戦立案に集中すべきでしょう。考えられる侵攻ルートは……」


 急にブラウン大尉にはぐらかされてしまった。まあいい、大尉の言う通りだ。今は103大隊の多くを生き残らせる作戦を考えねば。エテルニア王国国境付近からここネルベブルグ要塞に至る地形図を広げて、大尉と検討に入る。


 その後、歴史通りに推移する。エテルニア王国国境を越えたヴァルハラ共和国軍は、あっという間にここネルベブルグ要塞へと迫りつつあった。が、総司令部への我が国境への接近を事前に知らせたにもかかわらず、援軍は遅々としてくる気配がない。

 こうして、ついに9月2日を迎えることとなった。敵は我が帝国の国境からおよそ1タウゼ・ラーベまで迫っている。ここにきてようやく、味方の増援部隊がこちらに向かって動き出すこととなった。

 戦いの火蓋は、まもなく切られようとしていた。

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