15.「俺だけのやり方」
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「ワタシはこのタウンを守るために月の星団と戦う!!!」
アルファイは確かにそう宣言した。
なら俺の答えは。
「……さっきも言った通り、信じていなくてもこのインチキタウンに住む者は俺にとって信者だ。アルファイ。お前がいくら否定しようとも俺にとってはお前も信者の一人」
「信者が残ると言うのなら――共に戦おう!! タウンを守るために!!!」
俺とアルファイは互いの目を合わせる。そして自然と同時に頷いた。
信者たちは俺とアルファイのやり取りでオロオロと困惑していた。だが、しばらくすると。
「オレもタウンに残ろう! インチキ教祖、アルファイ」
そう声かけたのは、ドラゴン族のルーベンスだった。
「月の星団とかいうわけわからん連中にわけわからん理由でタウンを渡してなるものか! オレたちが住む場所はオレたちの力で守るべきだ」
ルーベンスは自分だけではなく、信者の皆にも気合を入れるようにそう力強く発言する。
ルーベンスの発言に触発されて、他の信者も後に続く。
「そうだ……今逃げたらこの先も敵が現れるたびに、逃げの繰り返しになる気がする……俺も逃げずに、残るぞ!」
「ああ! インチキ教祖。ルーベンス。インチキタウンの力を月の星団に見せてやろうぜ!」
「要求って、要するにこのタウンが欲しいだけでしょ? 『殺された信者のためだ~』とか立派な理由で取り繕っているけど……冷静に考えたらムカムカしてきた……なんで侵略者の思い通りにならないといけないのよ!」
「このタウン以上にいい環境が見つかるとは限らないし……インチキ教祖がいるならまあ勝てるっしょ!」
続々と戦う意欲を見せる信者たち。だが、皆が皆戦う意欲があるとは限らない。
「冗談じゃないよ! 僕はこのタウンにそこまで思い入れがない。悪いが出ていかせてもらおう!」
「わたくしもよ! こういうのは、命あっての物種ってマスいやザスジーが昔言っていたことがあるわ!!」
「なにこの一体感!? 気持ち悪い。本格的にカルト宗教になってきてね?」
「勝算はあるのか!? ないなら出ていく。もし、あるなら……残ることを考えてやってもいいだろう」
戦う意欲のある者、タウンから出ていこうとする者、判断に迷いあるいは様子見するような者、様々な反応が見られた。
すると、最前列にいるリチャードが発言したいことがあるのか、手を挙げていることに気づいた。
「なんだ? リチャード」
「旦那! 月の星団と戦り合うとして、どうやって勝つというンだ?」
「勝つ方法があるのとないのとじゃ、戦いに参加するモチベーションも違うはずだ」
リチャードの発言に納得するようにうんうんと頷く者もいた。
そうだな……リチャードの言う通りだ。ならそろそろ俺の策を言うべきか。
「具体的な戦術はおいおい考えよう。……だが、勝つ方法ならあるぞ」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
信者たちは驚く。いい反応だ。
「この方法をすることによって、勝率は大きく変わってくるだろう。なぜならその方法を実施することによってタウンの戦力は大幅にパワーアップするからだ……やるかやらないかで考えるならやるべきだろう」
「その方法とは」
「ああ、その前にこれだけは言っておこう。 その方法を利用したとしても月の星団に勝てるとは限らない……何しろ敵の戦力も不明だし、ここから先は皆の頑張りも関わってくるだろうからな」
「だが、戦うと決めたなら、今から俺が話す方法を実施することは不可欠だ!!! 引っ張って悪りぃな。今から説明するぞ!! その方法とは――」
勝つ方法をもったいぶって説明していた俺は今度こそ、その方法を説明する。信者たちは俺の話に傾ける。ゴクっと唾を飲みながら、期待を膨らませる表情を見せる者もいれば、逆に疑うように眉をひそめる者、首をかしげる表情まで見せる者もいる。そしてついに、ついに俺は勝つ方法を信者たちに説明する。
「魔力譲渡だ」
これが勝つ方法だ。
俺がそう答えた後の信者たちの反応は、興奮、驚き、期待といった反応は少なかった。むしろ冷静、困惑、嫌悪のような顔を見せた者が多かった。まあ仕方ない。この反応は想定していた。
「魔力譲渡……この言葉でザスジーのことを思い出した者はいるかもしれない」
「そうだ。これはザスジーもやっていたことだ。皆はおそらく教義や寄付と称してザスジーに魔力を渡すように言われてきた……違うか?」
「そして、俺も同じように皆から魔力を貰いたい。パワーアップのために」
信者たちの顔はますます険しくなる。
「だが、誤解がないようにこれだけは言っておきたい。俺は皆の魔力を貰っても独占する気はない。皆から貰った魔力を皆にも分けて渡す! これが、ザスジーとは違う俺だけのやり方だ!!」
「「「「「「「ええ!?」」」」」」」
今まで険しい表情をしていた信者たちは突拍子もない俺の発言で一斉に驚く。
「混乱するのも無理もない。まずはスキルタイプ・コネクトの特性から順を追って話そう」
「ザスジーから聞いているかは不明だが、皆がザスジーに魔力を渡してきたのは、なんらかの魔術ではなく、スキルタイプ・コネクトの特性だ」
「そして俺もザスジーと同じコネクトだ。コネクトは他のスキルタイプと比べて複雑なルールを持つスキルタイプ。まずは次の四つの基本ルールを教えよう。大変だろうけど頑張って覚えてくれ」
・コネクトの四つの基本ルール
一、自身の魔力だけでは魔術へと出力できないスキルタイプであること
二、他者から魔力を貰うこと(コネクトへと魔力を渡す者を以後、“”譲渡者“”と呼ぶ)でその魔力を解析し、譲渡者と同じ魔術を行使できる。なお、コネクトが魔術を行使する際は、コネクトの魔力が減る。譲渡者の魔力が減ることはない
三、譲渡者が死亡するか譲渡者が渡した魔力を返却してほしいと強く願えば、渡した魔力は触れずとも譲渡者の元へと戻る
四、コネクトへの魔力の渡し方は、譲渡の意思を持って触れるだけでいい。ただし、触れて渡すだけなら渡す分だけ魔力が足されるだけだが、譲渡の際にコネクトに対して奉仕の度合が強ければ強いほど、単純な足し算ではなく、渡した魔力以上にコネクトの魔力は大幅に強化される
「ここまで聞いてくれてありがとう。この他にも細かいルールが存在するが、一旦先の基本ルールを覚えてくれればいい」
信者たちは俺から渡される情報の洪水に言葉を失っていた。ここまでの表情は俺がタウンの長に就任した時以来かな。
スキルタイプ・コネクト。俺にとってはおなじみだが、この世界では、もはや実在しているか疑われているほどの幻のスキルタイプだ。ザスジーが自身のスキルタイプを信者に教えていなければ、信者たちは今初めてコネクトが実在していたことに驚いているのだろう。まずはその時点で、理解するのに時間がかかるかもしれない。
だが、それでも俺は出来る限り隠さず教えたい。いつか俺が凶悪なカルト教祖になったとしても、信者の皆が俺を止められるようにするために。
「今回重要になっていくのは、基本ルールその二、だ」
「魔力を貰うことで、コネクトは譲渡者と同じ魔術を行使することができる。説明するまでもないが、修得した魔術は魔力の中へと刻まれる。だから魔力を貰うことによって、コネクトの魔力と譲渡者の魔力が混ざり、魔術を使えるようになるという原理だ」
「そして魔力にはスキルタイプがあるようにそれぞれ得意不得意の魔術がある。だが、コネクトが他三つのスキルタイプから魔力を貰えれば……全てのスキルタイプを兼ね備えることができる! つまり弱点がなくなる」
ざわざわ
信者たちは俺の説明を聞いているうちに今度は騒がしくなっていった。
「で、“”俺だけのやり方“”の説明にやっと入るが、皆から魔力を貰った後に今度は逆に皆に魔力を渡す」
「コネクトは魔力を貰うことができるように逆に渡すことだってできる。信者たちの膨大な魔力を貰った後に混ぜた魔力を皆にも少し渡す……たった少しの魔力でも、同時に弱点がなくなるどころか、使える魔術の数は膨大に増えることになるだろう!!」
「オールラウンドの者は、インファイターとヒーラーの魔力を持つことが、インファイターの者はオールラウンドとヒーラーの魔力を持つことが、そしてヒーラーの者はオールラウンドとインファイターの魔力を持つことができる!!!」
「そ、そんな夢のようなことが……」
ポロっと、そう漏らした声が聞こえた。
スキルタイプとは血液型のように四つのうちのどれか一つと決まっている。
だから、オールラウンドの者は肉体強化系魔術と回復系魔術が不得意。インファイターは肉体強化系魔術以外不得意。ヒーラーは回復系魔術以外不得意。
と、スキルタイプの特性上全ての魔術を極めるなど不可能だったはず。
この世界に生きとし生ける者の多くは、そのことに疑問を持ったことはないはずだ。だが、魔力譲渡の力でその垣根を越える。もちろん魔力を渡すだけでは全ての魔術を極めることにはならない。全ての魔術を極めるかはその者のその後の頑張りにかかっている。
少なくとも、魔力譲渡はその可能性を……道を拓くキッカケにはなるのだ。
「さあ、もう一度問おう……選べ! タウンに残るか? それともタウンから出るか? 俺と一緒にタウンに残るなら――魔力を俺に分けてくれ!!」
投稿が遅くなり申し訳ございません。本当は、住民が魔力を渡すところまで描きたかったのですが、長くなりそうなので、魔力を渡すシーンは次回となります。




