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7.「インチキ教祖ですか!?」

 ジュダスの家に入るインチキ教祖

「まずは、自己紹介からですね。私はジュダス・トルカ。見ての通り、種族はエルフです」


「……インシュレイティド……私の名はインシュレイティド・チャリティだ。種族は……人間です。よろしくお願いします」


 紆余曲折を経て、ようやく互いの名を知る。インチキ教祖とジュダス。

 一言二言会話後、インチキ教祖は布教を開始するため、遂に仕掛けることにした。


「あのう……つかぬことをお聞きしますが、ジュダスさん。あなたは今悩んでいることがありますよね?」


「悩みですか?」


 突然の話題で戸惑いの表情を見せるジュダス。


「あなたを一目見てわかりました。表情に分かりやすく表れているというわけではないのですが、私だからこそわかるのです」


「どういうことですか?」


「これは失礼。私いや俺の正体をまだあなたに説明していませんでしたね……」


 インチキ教祖は、急に口調変え、続け様にこう述べた。


「俺はインシュレイティド・チャリティ教の教祖。インシュレイティド・チャリティだ。つまり、宗教の教祖をやっている」


「俺のことは、インチキ教祖と呼んでくれ」


「……イ、インチキ教祖ですか!?」


 自らインチキだと白状する男性に戸惑いを覚えるジュダス。


「(インチキってあの嘘つきという意味のインチキ?)」


「(でも一方で、自称宗教の教祖とも仰っているし、だけど自分でインチキとも仰っているし、意味不明だわ。それとも、私が考える嘘つきという意味のインチキではなく、教団名()()シュレイティド・()ャリティ()ょうを略したらたまたまインチキというフレーズになっただけ?)」


「(その名の通りあなたは、嘘つき者ですかって聞ければいいんだけど、この人が教祖様として本気なら悪いし……)」


 ジュダスはインチキ教祖に対してどう話題を切り出せばいいか迷っていた。


 インチキ教祖は話を続けた。


「お気持ちは察します。いきなり俺はインチキです。教祖です。って話せば誰でも驚くでしょう」


「だが、大事なのは俺のことではなく、あなた自身ですよ。ジュダスさん。俺はあなたの悩みを解決したい」


 ジュダスに寄り添うような態度を見せるインチキ教祖。


「あなたは今悩んでいることがある。だが、まだ解決できていない状態だ。その悩みを誰かにお話ししたい。違いますか?」


 インチキというフレーズについて詳しく聞きたかったが、いつの間にかジュダスの悩みについて話が戻った。


 言われてみれば、確かにジュダスには悩み事があった。特に家族に関わる悩みであることとナレーザでは、真実教徒のエルフが大勢いるため、誰に打ち明けていいか迷っていたところだ。


 だが、見ず知らずな上にしかもジュダスにとって、他の宗教の教祖様にこの悩みを打ち明けてもいいのだろうか……ジュダスは未だに迷う。


「話すかどうかは勿論あなたの自由です。ジュダスさん。ですが、こうして出逢ったのもなにかの縁だと思いませんか?」


 ジュダスはしばらく考え込んだ後、話すことに決めた。


「(私はこの人の話を聞いてみたいと思って家に入れたと思った。だけれども、本当は、私の話を聞いて欲しくて入れたのかもしれない。そうよ。試しにこの人に話してもいいかもしれない。少なくともこのインチキさんは、私に悩みがあることを言い当てた)」


「インチキさん。お言葉に甘えて、聞いてくれますか? 私の悩み」


 インチキ教祖は微笑ましい表情で頷く。


「申し訳ございません。いきなりこの世界に来たあなたの方が、色々聞きたいことがあるはずだというのに……」


「いえいえお気になさらず、それよりも悩みを打ち明ける勇気をありがとう」


「……実は、私は真実教というある宗教の教徒をしていまして、私の両親も教徒ですが、現在出家している状況です」


「私はパパとママと三人で一緒に暮らしていた生活に戻りたいのですが、パパとママは私に出家をおすすめしていきます」


「私は、パパとママを説得して、在家教徒に戻して、三人で暮らす道を選ぶべきでしょうか? それともパパとママの言う通り出家すべきでしょうか? ちなみに出家したら煩悩を捨てるため、家族と離れ離れに暮らすことになるそうです。私が未だに出家をためらっているのはその理由です」


 インチキ教祖はジュダスの悩みを聞き時々頷きながらも黙って聞いた。そして神妙な面持ちでゆっくりこう述べた。


「ジュダスさん。……あなたもあなたの両親も騙されていますよ。その真実教に」



 8話は明日21頃投稿予定です。

 ジュダスに悩みがあることを見破ったように見えますが、なぜインチキ教祖は見破ることができたのでしょうか?

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