5.「スキルタイプ」
突拍子もない話を次から次へと聞かされて話についていけなかった。
刺されたことが現実? 新しき世界で生きていく? 魔術? 魔力のスキルタイプ?
色々不明点がありすぎてどこから聞けばいいのやら。とりあえず、まず初めに疑問に思ったことを聞くことにした。
「失礼ですが、あなたは誰でしょうか? ここが死後の世界だとしたら、あなたは神か何かみたいなものでしょうか?」
「はは。よくある質問だね。君のように転生する前にここに来る人は、僕のことを色々な名で呼びたがる。君のように「神」と呼ぶものもいれば、「悪魔」か「奇跡」か「世界」か多種多様な名で……もっと言えば、何かの概念として僕のことを理解したがる。だが、重要なのは僕の存在ではなく、君のこれからだよ」
俺の問いをはぐらかし、何者かは話を続ける。
「話を戻そう。まず魔術のことだが、魔術とは、魔力というその世界では第二の血液を意味する力。これを操り呪文、特定の動作などをすることによって発動する技術を意味する。漫画やアニメなどファンタジー作品で魔術、魔法は一度くらい見たことがあるだろう」
「ああ。いわゆる掌から炎や、杖から光を発動するイメージでいいですか? あれができる世界に生きられるのですか?」
「そうそうやはり君のようにフィクションが栄えている時代の人は理解が早くて助かる。魔術を使うといってもどんな魔術も際限なく使えるわけではない」
「それこそ全能な神でもない限り、一個人ができることは限られているんだ。そこで自分がどんな魔術が得意、不得意とするかを知ることが大事だ。これにはスキルタイプが鍵となる」
「スキルタイプ……」
聞きなれない言葉に復唱する。何者かの話は続いていく。
「スキルタイプ。これは生まれつき魔力の系統のことをさす。【オールラウンド】、【ヒーラー】、【インファイター】、【コネクト】。新しき世界には人間のみならず、多種多様な種族が生きているが、全種族、この四つのスキルタイプのうち必ずどれか一つに該当するのだ。例外はない」
「自分がどのスキルタイプに該当するか、これを見分けるには、ある程度魔術を学ぶことが必要なのだ。なぜならどの魔術が得意、不得意かを調べていくことでスキルタイプはおのずと判明するからだ」
「だが、僕なら誰がどのスキルタイプに属するかあらかじめ判別することができる。せっかくだから君のスキルタイプを調べてみよう。転生後、少しでも君が新しき世界で生きやすくするためにもね」
「……えらくサービスがいいんですね」
頼んでもいないのに何者かは俺にスキルタイプとやらまで教えて貰えるらしい。……後でお金を請求されないよな?
「フフフ。まあ、ここに来た縁だと思ってくれたまえ。さて……君のスキルタイプは……おや? これは」
魔術が使える? そんな夢物語のような話を聞かされて、ワクワクしている自分がいる。
だが、カルトに騙されて入信する者の中には、こうやって聞こえの良い話ばっか聞かされて信じる人がいることを思い出した。この何かわけわからん怪しい存在の奴は俺を騙している可能性もあるはずだ。ならば鵜呑みにせず、ここは、話半分に聞くべきだと自分を戒めた。
「これは珍しい……君のスキルタイプは【コネクト】だ。四つのスキルタイプの中でこれに該当する者は、一番少ない」
珍しい! と聞かされて情けないことに少し興奮してしまった。
なにしろあなたは特別な人間だと言われたように聞こえたからだ。
生まれて35年間、人生で褒められた経験は少なく、そして他人から見くびられることは多い。特に取り柄も自信もなかった。家族愛も本当の友情とやらも知らない俺。
そんな退屈な自分の人生を変えるために奮起してカルト教祖を目指した。しかし、その矢先になんかやばいおっさんに刺されまくってここに来た。
一見すると不遇な人生を送ったように思えるが、これから魔術が使える世界に転生し、かつ自分は珍しいタイプなら、もしかすると、恵まれている側の人間かもしれない。
そうだ。カルト教祖なんぞ不純なものにならずに、悟りを探求した釈迦のように、特別な俺は魔術を探求するのもいいかもしれない。
居ても立っても居られない俺はさっそく今一番聞きたいことを聞くことにした。
「それで、それで、【コネクト】タイプはどんな魔術が使えるんですか!? 手から炎を出したり? 空飛ぶ魔術とか使えるんですか? いやぁ、珍しいタイプと言うからには、当然使える魔術も珍しそうですよね!?」
「……いや、使えない」
「え?」
意味が分からず、言葉が詰まった。
「残念なことだが、【コネクト】は四つの中で唯一、魔術を使うことができないスキルタイプなんだ」
明日21頃6話更新します!