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17.「お前らを狩る!!!!」

「見たなッッッ!!! 俺の……マスターへの……ラブレターを!!!」


 トーマスは今にも俺に襲いかかりそうな勢いで、そう叫ぶ。


 そして、圧倒的な高速移動でダッシュした。その方向は、俺にもジュダスでもなく、壁に突き刺した槍に向かって。


 槍を掴むとそれを力入れて引き抜くトーマス。だが、トーマスはそこで止まらず、今度は2階に跳躍し、自分の部屋に入る。


「インくん!! 奴は自分の武器を取りに行ったんだわ!!!」


 ジュダスが叫び、俺はトーマスの狙いを知った。そうか! 奴の部屋にはもう一本の槍が置いてあったんだ。


 するとトーマスの部屋が突然壊れ、中から2本の槍を携えたトーマスが現れた。


「絶対に逃がさねえ! ここのリーダーとして!! 十二使徒の誇りにかけて!!! お前らを狩る!!!!」


龍門飛鳥りゅうもんあすか


 ジュダスはすぐに刀剣を発動する。そして、トーマスに向かって飛び掛かり、全力の一撃で、切りかかる。


 だが、トーマスは、片方の槍でジュダスの一太刀ひとたちを食い止める。ジュダスが両手で刀を全力で押してもびくともしないままだった。やがてトーマスは、そのまま片方の槍でぎ払う。


 ジュダスはその勢いに吹っ飛ぶ。ギギギッと地面にブレーキを掛けながら摩擦まさつを発生させることで、なんとか壁にたたきつけられずに済んだ。


「ジュダス!」


「インくん気を付けて!! コイツはインファイターだ!! しかもかなりの手練れの!!」


 ジュダスは自分の心配よりも先に俺にアドバイスをしてくる。


 俺の火天を浴びながらも生きていたこと。そして、馬鹿でかい槍を持つ腕力とジュダスを楽々とぎ払うあのパワー。確かにあれはインファイターであることは俺も同感だった。


「まずはお前からだインチキ教祖!!! 聖風霊プニューマ


 トーマスがなんらかの魔術名を唱えると、右手に持っていた槍に風が生じるほど高速で回転していた。


「ただ、腕力で回しているわけではないな……そうか嵐風らんふう系魔術を使っているのか!」


 そして、トーマスは回している槍を俺に向けて投げようとする。


「させるか!地空じくう


 俺は、そう唱えながら地面に向かって、パンチをする。そして、地面が波を打つように大きく盛り上がり、俺の前方に地面の壁ができる。


 魔術名【地空じくう】。この魔術は、土砂どしゃ系の魔術に分類される基本技。魔力から土砂を作ることも、大地や砂漠に干渉し地形を術者の思い通りに変えることもできる魔術だ。基本技程度なので、威力と干渉できる範囲は限られているが。


 風を纏った槍が地面で作った分厚い壁に当たる音がした。俺が作った壁は俺の魔力でコーティングされているため、見た目以上の硬度を誇る。だが、その分厚い壁をギャリギャリギャリギャリギャリと嫌な音を発しながら、壁を破る音が聞こえた。


「そうか! 嵐風系魔術を纏わせることによって、槍をドリルのように回転させ、貫通力を高めているのかー!!」


 俺は魔力を流し続け、壁の強度を高める。壁を掘る音は弱くなってきたが、だが掘る音は止まらない!


 やがて、壁を突き抜け俺の額に当たる寸前まで進んだが、間一髪かんいっぱつにそこで回転は止まった。なんとか止まり、ホッとする。気付いたら額から冷や汗がしたたり落ちていた。


「ちっ、防いだか。だが、これならどうだ!! 聖風霊プニューマ


 さっきと同じ魔術を唱えるトーマス。だが先ほどと違うのは、今度は槍から全身にかけて、巨大な竜巻を身体に纏わせているところだ。


「させるかッッ! 雷音!!」


 ジュダスはトーマスに向けて雷音を放つ。雷の獅子がトーマスに嚙みつく。


「ぐふッ……!?」


 トーマスは確かに雷音をくらった。身体中に電流がほとばしる。だが、トーマスはそれを意に介さず、俺に向けて攻撃を仕掛けようとする。


「馬鹿な!? ……なんてタフな奴なの!?」


 ジュダスは困惑していた。そして俺に顔を向ける。


「インくん! 避けて!! コイツの直線にいてはならない!! コイツは槍を突くつもりで突進するつもりよ!!!」


 ジュダスはそう言うが、悪いが避けるつもりはない。受けて立つつもりだ。トーマスは2階から俺に向けて、高速で突進してくる。


地空じくう


 俺は先ほどと同じように地面の壁を作る。より大きく。そして両者が激突した!!!


「ゴミが!!! そんな壁貫いてやるよ!!!」


 ドリルの掘りながら、向かってくるトーマス。俺は右腕を右に左腕を上に向けるクロスアームブロックで構え、防御力を上げるため、魔力を大幅に出力し、それを腕にコーティングする。


 そして、トーマスの突進はやがて俺の壁を貫き、ドリルのような槍が俺に突く!!!


「ぐうぅぅぅぅ!!!」


 グルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグル


 と激しい痛みと共に俺の腕から全てを貫通しようと槍が迫ってくる。地空による壁と、両腕のガードをもってして、槍の軌道を心臓から左肩にずらし、腕を貫通させて、後ろの壁に槍を当ててそこでようやく回転が止まった。


「へっ! 命拾いしたな。だがほんの数秒生き残っただけだ」


 槍を抜こうとトーマスが力を入れたとき。


「こっちがへっ! だ。かかったな。俺の策略ねらいに……」


 俺は左手の方向を突くようにまっすぐにする。手の形は、親指を左に残りの四本指は束ねた状態だ。左腕は槍で貫かれた状態で固定されているから、奴に向けて魔術を放つことはできない。だが、これでいい。


「相手に攻撃するような魔術は大体、魔術を発動する箇所に魔力をコーティングしてから発動する。自分の攻撃魔術で自爆しないために。だが、コーティングしないまま攻撃魔術を発動したらどう〜なるのかな〜?」


「お、お前まさかわざとくらったのか!?」


 トーマスが俺の狙いに気付き、あわてて手を放そうとする。


「遅い!! 雷音」


 左手から雷音を放つのではなく、その場でとどまるように発動する。すると俺の身体と槍を伝って、トーマスの身体がバチチッチと感電するようにくらう。


「がああああああああああああああああ」


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお」


 お互い雷音の威力で悲鳴を叫び合う。


 ジュダスの雷音を食らっても耐えられたのは、嵐風系魔術を身体に纏っていたことで、魔術に対する防御となっていたからだ。しかし、今は嵐風系魔術を使っていない状態だ。しかも、俺の雷音はジュダスより威力が強い。インファイターの生命力でも耐えるのはキツイはずだ。


 さあ動きは止めた。ジュダス頼む!!!


涅槃寂静ねはんじゃくじょう


 ジュダスは唱える。


「インくんから~離れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


 右手を動かし、トーマスを俺から引き離す。ナイスだ。下手に攻撃魔術でトーマスに攻撃したら俺まで巻き込まれるところだったからな。


 俺はなんとか両腕を横に思いっきり動かし、槍の先を壊す。そして、壊した槍の先をなんとか両腕から引き抜く。


 自分の雷音のダメージが残っていることもあり、俺は膝をつく。そしてトーマスの方に向けると、トーマスは抵抗し、ジュダスはトーマスの拘束に苦戦していた。


「ぐっ……なんて力なの!? 今にも引き剝がされるぅぅ」


 トーマスは見えない巨大な手を引きはがそうと身体を少しずつ大の字になろうと広げていた。


「ハァ……ハァ……ジュダスもうしばらくだけ、奴を拘束していてくれ!!」


 俺は、身体を痺れながらも、奴が最初に投げた槍の方へ向かう。俺が作った壁に突き刺さったままの槍を穴が開いた両腕で引き抜く。


 そして、てこの原理を応用に膝を支点にと左手を力点にして、槍をトーマスの方へ向ける。


「嵐風系魔術を使えるのはお前だけじゃない。俺だって使える! くらえトーマス!!」


八風はっぷう


 右手の人差し指と中指を伸ばしてくっつけ、残りの指を握るいわゆる刀印とういんと呼ばれる印相にする。そして槍を握る箇所にその手で触れる。


 すると、槍は先ほどトーマスが風を纏わせたように、こちらも槍に風を纏わせる。


 風を纏った槍は、ロケット噴射のようにトーマスに向けて放つ!


 魔術名【八風はっぷう】。これが俺の嵐風系魔術だ。普段の使い方は、風による斬撃で放つことが多いが、応用で武器に纏わせることもできる。これも基本技にあたるが、槍に纏わせた回転力は、さきほどトーマスが投げた槍の回転よりも圧倒的に早い。


 そしてその回転した槍はトーマスの腹部に遂にあたる!


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ」


 トーマスは悲鳴上げながら、壁に突き刺さる。ギャリギャリと槍の回転は続き、槍を握る箇所まで到達した。


 槍の回転が止まると同時に、トーマスは力尽きたように腕を宙ぶらりんとさせた。


 我ながら惨い攻撃をしたと思っている。インファイターの生命力の高さというより、トーマスの執念を恐れて俺はこの攻撃を選んだ。真実教教祖との戦いでもそうであったが、執念深い敵には生半可な攻撃では倒れない。理屈じゃない恐れを感じるのだ。だからこのような攻撃をしたことに後悔はしていない。


「くそ! ……この槍を……引き抜く……力もねぇ」


 トーマスそう言いながら、槍に触る。


 俺とジュダスは驚く。


「お、お前まだ生きているのか!?」


 トーマスは俺の発言を無視し、独り言をつぶやく


「マスター……すみません。……俺はここまでです。……死んだことを……気付かせるため……魔力を返却させてもらいます」


 しばらくすると、トーマスは俺たちに向けて笑みを浮かべた。


「へっ! ……俺が渡した魔力は、俺の元に戻ったぞ……これでマスターは……俺に異変が起きたことを分かったはずだ……タウンは警戒態勢……なるはずだ……お前らに勝ち目はない!!!」


 トーマスは勝ち誇るかのように宣言する。


 すると、トーマスの部屋にプルプルプルと電話のような音が鳴り響く音が聞こえた。


「へっ! ……さっそく来たぜ! ……マスターからの電話が」



 ザスジーからの電話!? 出るかインチキ教祖?

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