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12.「タウンを出る!!」

「さて……喋ってもらう前にこれは言っておこう」


 部屋の中で俺とジュダスは服を着て、侵入者の男女を縛っていた。


 腕をひもで縛り女性の方は、口を布で猿ぐつわにして喋れないようにした。一方男性の方は、よく喋りそうな印象を持ったので、口を自由に、腕のみの拘束とした。


 男性が喋らないならば、次に女性を尋問するつもりだ。


「魔術は、一つ。魔術名を唱えることと。二つ。正しい構えもしくは血の代償理論に従うこと。この二つを同時に満たすことで、100パーセントの威力を発揮できる。ゆえに、どちらか一つを封じるだけでも、発揮できる魔術の威力はかなり落ちる」


「まあ、最も魔術なんて使わせるつもりはないけどな。もし、この場で魔術を使おうとするなら、命の保証はないと思えよ!!!」


 俺はドスを利かせるような声で、侵入者たちにプレッシャーをかける。


 魔術は魔力の消費量が多ければ多いほどそれに比例して、威力も大きくなるものだ。


 だが、魔術としてそれを出力する場合にも次の2つの行為を行うことで、消費する魔力量をそのまま魔術の威力として出力することができるのだ。


 一.魔術名を唱えること(必殺技を決める気持ちで、ある程度の声の大きさで唱えること)


 二.それぞれの魔術に応じた専用の構え、もしくは血の代償理論に従うこと


 例えば、本日のお昼頃、シーカーズを倒した、雷電系魔術である雷音。これを100の魔力を消費して、そのまま100の威力で放つには、先ほど述べた二つの行為が必須だ。


 もし、どちらか片方を欠けると100魔力を消費しても、魔術の威力は約50の威力となり、さらに両方満たしていない状態で発動しようとしても、威力は約25になるか、魔術によってはそもそも発動できないかのどちらかとなる。


 つまり、状況を戻すと、侵入者の女性は魔術が使いづらい状態であり、男性は、やろうとすれば、口で魔術名を唱えることはできるが、構えは取れない状態なので、頑張っても魔術の威力は半分程度になることになる。


「それで、お前らの名前は……? お前が答えろ」


 俺は、男性の方に目を向けて話す。


「俺はジョージ。こっちがガールだ」


「ジョージとガールか。ならさっそく聞くが、ジョージ。なぜ俺らを襲った? 誰からの命令だ?」


「……ケッ! おいアンタ尋問じんもんの素人だろ。こんなもん俺が舌をかみ切れば……」


「させない! 涅槃寂静ねはんじゃくじょう


「ぐっ!?」


 ジュダスは魔術を発動し、ジョージの動きを止める。


「流石にそう簡単には口を割って貰えないみたいね」


 ジュダスが魔術を発動したまま、俺に視線を向けてそう話す。ジョージも「ケッ! ざまあみろ」と言わんばかりの目線で見つめてくる。


「この見た目からして、タウンの住民ではなく、おそらくザ・シーカーズの連中だろう……問題は、なぜこいつらがタウンの中にいて、俺たちを襲ったのかだ。タウンと敵対関係のこいつらが」


「こいつらがどうやってタウンの外から来たのか……考えられるとしたら主に二つね」


 ジュダスは自身の推理を俺に説明する。


「一つ目は、タウンの住民全員とシーカーズは敵対関係ではなく、実は友好関係だった。タウンの住民は、私たちを罠にはめるために共謀していた。例えば、こいつらが、タウンの外にいたのではなく、初めからタウンの中に隠れていたなら説明がつくと思わない?」


「いや、一つ目のタウンの住民とシーカーズが友好グルはないだろう。ヴェダはこいつらに捕まっていたし、門番も俺がこいつらの仲間かもと疑って警戒していたしな」


「それにタウンの住民が俺たちを襲う目的なら、こんな二人だけじゃなく、タウンの住民総出(そうで)で俺たちを袋叩きにすればいいからな」


 俺は一つ目のタウンの住民とシーカーズが繋がっている線は否定する。ジュダスも同感だったのか、「そうね」と言わんばかりに頷く。


「ならやはり二つ目ね。タウンの上層部、つまり長であるザスジーとシーカーズが友好関係だった。こいつらが、タウンの外から入るとしたら手段は、門から入るか。門以外なら結界術を通り抜けるかに限定されるはず」


「門から入る手段は、門番の警戒も相当厳しいはず」


「一方、結界術を通り抜ける手段はもっと難しいはずよ。バレないように通り抜けるのは、高等な魔術が必要だから。でもザスジーが結界術を通り抜けるための鍵を渡していたなら話は違ってくる。結界術に反応せずに入ることは、一気に簡単になるから」


「まあ二つ目だろうな。ザスジーが手引きしてこいつらを中に入れた。そして、俺たちを襲わせた。俺たちの部屋の場所だってザスジーから聞いていたなら辻褄が合う」


 俺はジュダスの二つ目の推理に同意する。そして、ジョージに顔を向ける。


「こいつらシーカーズとザスジーが繋がっている証拠を手に入れれば……それをタウンに公表すれば、ザスジーは失脚するかもしれない。いくら住民が恐怖やマインドコントロールで支配されているとはいえど、シーカーズと繋がっていることが分かれば……俺たちが扇動せんどうすれば……立ち向かう者だっているはずさ」


「ザスジーだって怖いはずだ。住民から反抗されることを。だからマインドコントロールなど駆使して、反抗の意思を削いでいるのだろう。もし、ザスジーのスキルタイプがコネクトなら脅威だが、住民全員が反抗する意思、つまり魔力を返却させれば、アイツは弱体化される。そしてその情報をタウンの住民たちに全員に知らせれば、追い詰められるのはアイツだ」


 ザスジーと戦うとなれば、避けて通れないのが、ザスジーのスキルタイプだ。ザスジーのスキルタイプ次第では、勝算はまるで違ってくる。


 最悪なケースとしては、ザスジーのスキルタイプがコネクトだった場合だ。


 最強のスキルタイプ・コネクト。それは、魔力譲渡を受ければ受けるほど理論上無限に強くなる。魔力譲渡を受けたコネクトは、魔力量が増えるだけではなく、魔力を渡した者の魔術だって使えるようになる。


 宿泊施設に帰る前に、ザスジーが言っていたが、タウンを設立して四年ほど経過し、今では、住民数は六〇〇を超えるそうだ。つまり、それだけ住民たちの魔力を貰っているのならその力は計り知れない。


 真っ向勝負なら俺とザスジーならザスジーが上だろう。


 だが、そんな最強のスキルタイプであるコネクトにも最大の弱点がある。それは魔力返却。


 コネクトに魔力を渡した者が死ぬか、もしくは魔力の返却を強く望むことで、魔力はコネクトから自動的に返される。


 コネクトに魔力を渡すのは、最低でもコネクトの身体を触れる必要があるのに対し、魔力の返却は 身体に触れずとも、願うだけで返却されるのだ。


 つまり、もし住民を説得させて魔力を返却させることができるのならばザスジーは一気に弱体化するのだが……


「ザスジーのスキルタイプは私も考えた。コネクトである可能性を。でもザスジーがコネクトだとするなら不可解な点がある」


「不可解な点?」


 俺は思わず聞き返す。


「ええ。それはヴェダさんよ。譲渡者(魔力を渡す者を指す)の死はイコール、コネクトの魔力から譲渡者の魔力が消えることと同じ」


「ならなぜ、ザスジーはヴェダさんをこいつらに売ったの? それに過去何度も住民がこいつらの被害を受けていると聞いたわ。ザスジーがコネクトだとするなら、自らザスジーは、弱体化させていることになる」


「確かに! それは、ザスジーがコネクトじゃない可能性を指しているのか!? もしくは、コネクトだとしても、ヴェダたちが死んでもいいと思える理由がザスジーにはあったということか!?」


 俺たちの疑問は増すばかりだった。


 ザスジーのスキルタイプはコネクトではないのか?


 それともザスジーはコネクトではあるが、弱体化しても良いと思い、住民を犠牲にしたのか?


 いや、スキルタイプ・コネクト。それは、まだ全貌が知られていない唯一のスキルタイプだ。


 俺さえ知らないコネクトの特性をザスジーが知っているとでも言うのか? ……そんな疑問が頭の中で渦巻いていた。


「まっ、判断材料が少ない中、考えてばかりでも仕方ない」


 ジュダスはそう言うと、拘束しているジョージのあごを左手でパンチする。


「ウッ」


 ジョージはそう言って、気絶した。そして次にジュダスはガールも殴り気絶させる。


「こいつらの口を割るのが難しいなら別の手を考えなくては……インくん。確認だけど、今欲しいのは、シーカーズとザスジーがグルである証拠だよね?」


「ああ。だが、その証拠を見つける手がかりはあるのか? こいつらが仕留めそこなったことをザスジーが知ったら、今度はタウンの住民総勢を動かし戦うことになるかもしれんぞ」


「ええ。それにシーカーズとザスジーがグルの証拠はこのタウンで探しても、簡単には見つからないでしょう。住民が気付く可能性があるから。そんな証拠をザスジーが残すとは思えない」


「だから、タウンとは別の場所で証拠を探すの。それこそ、こいつらシーカーズのアジトとかをね」


「えっ!? こいつらのアジトを? そんなのどうやって探すんだ!?」


 俺は思ってもいなかった考えを聞いて驚く。アジトに行くにしても、どうやって探すんだ? そんなのこいつらに聞くか、こいつらがアジトまでの地図を持っている間抜けなら話は簡単だが……


「話は後! 急ぐわよ!! ザスジーに気付かれる前にタウンを出る!!!」


「アジトを探すにはこいつらが必要。インくんはジョージを担いで! 私はガールを担ぐから」


 ジュダスにはジュダスの考えがあるのだろう。俺はジュダスを信じ、俺がジョージを担ぎ、ジュダスがガールを担ぐ。そして窓から部屋に出る。ジュダスはタウンに入ったときの門に向かう。俺はその後をついていく。


 ◇


 そして、門についた俺たち。交代しているのか、入ったときに対応した門番のエルフは見当たらず、代わりに人間と同じ二足歩行でトカゲのような姿をした種族リザードマンが門の外を見て警戒していた。


 ジュダスは俺に「ここで待っていて」と喋らず、手で合図し、ガールを地面に置く。そして、見つからないように、音を消すように、しゃがみながらゆっくりと門へと歩いていった。


 そして、門番のリザードマンに向けて壁をよじ登り、門番のリザードマンの背中まで行くと、音を立てずに後裸締スリーパーホールドで首を絞めて気絶させる。


「(当たり前のようにやっているけど、そんな技術どこで学んだんですか? ジュダスさん? それも魔術訓練校で学んだ技術でしょうか?)」


 俺は戸惑いながらもジュダスの多才さにあらためて驚いていた。


 ジュダスが門の扉を両手で押して開けた後「こっちに来て」と合図をしたので、俺はガールとジョージを担ぎ、門へと向かう。タウンに出る前に、一度俺はタウンに向けて、いやどこかにいるヴェダに向けて振り返る。


「(俺たちはザ・シーカーズのアジトに向けてタウンを一度出る……ヴェダすまない。後で必ず戻るからな。それまで無事で待っていてくれ)」


 俺たちがタウンに来ていたことにヴェダは気付いていないかもしれない。


 それでも俺は心の中で、ヴェダに謝罪し、タウンの外へと出る。


 最後まで読んでいただきましてありがとうございました。


 インチキ教祖たちはタウンから出ることに……これが物語にどう影響を及ぼすのでしょうか


 もし面白いと思っていただけましたら、評価(★)とブックマークを入れてもらえると幸いです。


 特に楽しんでいただけた話がありましたら、その話の「いいね」を押してもらえると励みになります。

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