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2.「アタシの名はヴェダ・タンハーと申します」

 俺の雷電系魔術で放電した場所には、大きな焼け跡が残っていた。


 五人とも倒れており、動き出す気配はない。死んでいるのか、気絶しているのか、はたまた死んだふりして俺たちの隙を突いて反撃しようとしているのか、それとも逃げる隙を伺っているのかは不明だった。


 俺とジュダスは注意を払いながら、五人に近づき、倒れている五人を少し蹴って動きを見る。


 反応はない。死んでいるか気絶しているかのどちらかだろうと思い、それでも念の為警戒しておくようにジュダスにアイコンタクトを送る。ジュダスも頷き了承した。


「さて、このまま布教の旅にレッツゴーしてもいいのだが、こいつらは何を運んでいたのだ? 今更ながら興味が湧いてきたぞ」


 荷車は俺の魔術に巻き込まれておらず、傷一つない綺麗な状態だった。最初は興味がなかったが、せっかくだから中身を確認してからここを離れるのもいいだろうと考えた。


 もし、食料があればついでに頂こうかな。食料は少しだけ頂くだけだから……とザ・ならず者集団の物とはいえ、少しの罪悪感を持ちながら、荷車を確認しようとする。


 すると、荷車の中にはやたら大きい袋が一つあった。そう()()()()なら入れそうなほどの大きい袋だった。


「む、うーん。う」


 その袋から何か声が聞こえて少し驚いた。俺はジュダスと目を合わせた。ジュダスも驚いて目を大きくしていたようだ。


 状況から考えて、袋の中に何らかの生物が入っていると見ていいだろう。


 ザ・ならず者集団に捕まって運ばれていたというところか。俺とジュダスは袋の中が気になり、締めていた紐をほどき、袋の中を一緒に開けようとする。さて、袋の中には、鬼が出るか蛇が出るか。


 袋を少し開けると人間? いや耳が長いエルフ族と呼べる女性の頭がニョキと現れた。そうジュダスと同じエルフ族だった。


 髪の色は銀色でジュダスの白い肌とは対照的に肌は褐色したエルフが気絶していた。しかも猿ぐつわを付けさせられていた状態で。


「インくん。このエルフって……」


「ああ。捕まってたってことだろ。そう言えばジュダスを見て、エルフを2匹も捕まえる云々とはしゃいでいたからな。コイツラ。とりあえず、このを解放するぞ。せ~の」


 俺たちはこのエルフを解放させるため、ジュダスがエルフをつかみ、俺が袋を引っ張り身体全て取り出す。


 ゆったりした袖のついたくるぶし丈の上着に裾が大きい頭巾もついているような服装を着ていた。そう例えるならまさしく修道服シスターを思わせる服装だった。


 しかし、シスターと違うのは、シスターは一般的に黒い服装をイメージするのに対し、こちらのエルフが着ていたのは赤ワインのような赤黒い色だった。


 もしかしたら、シスターよりも赤ずきんが着る服装の方がイメージに合うかもしれないと俺は思った。


 腕もよく見たら動けないように後ろ手にされ、革手錠のようなもので固定されていた。


 さっそく、猿ぐつわと革手錠のようなものを解いて、身体を揺さぶって気絶しているエルフを起こそうとした。


「お~い。起きろ。生きているだろ? 大丈夫か?」


 声を掛けながら身体を揺さぶっていると、段々とこのエルフの目が開いてきた。そして、寝ぼけたような表情で起こした俺の顔を見る。


 その瞳の色は着ている服装のように赤色だった。すると、このエルフの表情は段々と怯えるような表情となり。


「ひぃ~! す、救いを~! 命だけは助けてくれぇッス! なんでもしますから! ……そうだ! アタシヒーラーなんスよ。ヒーラーなので生かしておいても損はマジでしないから!!」


 起きたエルフは、俺たちをザ・ならず者集団の仲間だと思ったのだろう。そしてすばやく土下座しながら命乞いをするのだった。まあ、起き上がったら、次の3択の行動のいずれかを予想していたから驚きはしなかった。


 ①命乞いをするか(結果的には、このエルフは①の対応をした)


 ②自分の身を守るために反射的に俺に攻撃するか


 ③攻撃する体勢を取る


 とりあえず俺は、このエルフに対し誤解を解こうとする。


「なんでも!? ……じゃねえや。とりあえず落ち着け。パニックになるのは分かるが、俺たちはお前を拉致した奴の仲間じゃねえ。むしろ、お前が拉致されているところを助けたところだ」


 正確には、ザ・ならず者集団が気にくわなかったので、俺が速攻で倒しただけで、このエルフを解放することになったのは、たまたまだが。まあ、その辺の詳細な説明はしなくていいやと思った。


「助け……えっ、ああ、そうなんスか!?」


 先ほどまでの恐怖の表情から今度は噓のように急に口を開けて笑顔を見せるエルフ。急な変わりように単純な奴だなぁと内心思うが、その笑顔はかわいいのでよしとしよう。


「ああ。俺の名はインシュレイティド・チャリティ、実は宗教のー『私の名はジュダス・トルカよろしく』」


 いつもの通り、宗教の教祖をやっていることと、「俺のことはインチキ教祖と呼んでくれ」とお決まりのフレーズを言おうとしたら、ジュダスが遮るように自己紹介してきた。俺はジュダスの耳に小声で話をする。


「(おい、なんで、俺の話を遮る?)」


「(仕方ないでしょ? 変な肩書を話したら、せっかく安心したこのがまた不安がるはずじゃない。後、エルフの聴覚は人間よりはるかに優れているから、小声で話しても無駄よ。この話もきっと聞こえていますよ)」


 ジュダスも無駄と言いながらも小声で俺の耳にあてて話をする。何!? エルフにそんな特技があったのか? 俺は知らなかったぞ。あと、変な肩書とはなんだ。変な肩書とは。俺は釈然としない心持ちで自己紹介を止めた。


「ああ。ホントすみません。お礼を言うのと自己紹介がまだでした……まずは助けていただきありがとうございました。インシュレイティドさん。ジュダスさん。アタシの名はヴェダ・タンハーと申します。見ての通り、種族はエルフなんですけど……ダークエルフとも呼ばれているッス」


「……ダークエルフ!? 普通のエルフと違うの!?」


 ダークエルフと聞きなれない言葉を聞いた。ジュダスと違うのだろうかとジュダスを見ていたら、ジュダスは俺の疑問に答えるように口を開く。


「大きく括れば同じエルフよ。私はウッドエルフと呼ばれることもあるけど、人間で例えるなら肌の色の違い程度にすぎないと思ってくれれば」


 そうして、雑談していると、ジュダスが何か感づいたかのように、急に真剣な顔で、先ほど倒したザ・ならず者集団へと顔を向ける。ヴェダとやらのエルフも何かに気づいたらしく、ジュダスと同じ方へと視線を移す。


 二人の自慢の聴覚が何かに気付いたのだろうか……はっ、まさか!


 俺は急いでザ・ならず者集団に顔を向けると、一人のスキンヘッドが、倒れつつも俺に向けて吹筒ふきづつを向けていた。



 本日は二話投稿予定です!

 第三話は続けて、本日投稿します

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