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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第2章ザスジータウン編

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1.「信者全然増えねなぁ~」

「ハァ~。信者全然増えねなぁ~」


 白衣に黄金色の羽織を着た俺は深いため息をついていた。


 トホホと肩を落としながら歩く俺は、新興宗教の教祖をやっている凄い男なのだ。


 宗教名はインシュレイティド・チャリティ教。そして俺の名前もインシュレイティド・チャリティ。インシュレイティド・チャリティは俺の名前でもあり宗教名でもあるのだ。


 インシュレイティド。この名の意味は、社会から孤立した者を指す。そして、チャリティは慈善や慈愛を意味する。


 つまり、表向きは物理的にも精神的にも孤独にいる者たちの拠り所になってほしいという思いで設立した。極めて健全で崇高な宗教団体なのだ。あくまで表向きはね。


 実は、俺はただの教祖ではない。宗教を悪用しようとするいわゆるカルト教祖なのだ。この宗教団体を設立した真の目的、それは「インチキ教祖としてハッピーライフを目指す」ために設立したのだ!


 教祖というものは信者から常に絶賛される居心地がいい存在だ。そして、信者から多額のお布施でがっぽがっぽ儲け、女性信者でハーレムをムフフ……そんな邪な思いで設立したのだが、一向に信者が増えない……何故だ?


「やっぱり、宗教名を変える案も考えたらどうでしょうか? あと、略すものもだめですよ。『俺のことはインチキ教祖と呼んでくれ』なんて、インチキと言われたら悪い印象しか持たれないし……」


 生意気にも俺に意見を言う、チャイナドレスのような黒い服装を着た金髪碧眼のエルフ。


 この女性は()()シュレイティド・()ャリティ()、略してインチキのただ一人の信者である。


 名をジュダス・トルカ。彼女は今から約三か月前にとある宗教からインチキへと改宗した。


「なんだと!? インチキという名にケチをつけるのか? 正論であっても、この名前だけは譲れないのだ。皆に宗教名を覚えやすくして貰うためにインチキと呼ばしているのだ」


「仮に、信者から『俺に騙されたー』って訴えられたとしても「いや、俺、初めからインチキって教えていますよ!? あなたわかってて入信しましたよね?」って予防線を張る意味でも、インチキという名前でいることは重要なのだ」


「だけど、インくん。初めからインチキと教えられて、信者が増えないならそれこそ本末転倒じゃないですか?」


 うぐ。また痛いところを。そうなんだよな。インチキという名前にこだわると信者が増えにくい。それはわかる。だが、正論や批判にすぐコロコロ変えてはそれに着いていく信者も教祖に頼りなく思ってしまう。


 教祖たるもの、こだわりたいと思うものには執着する。この道に行くと決めたものは突っ走る。それによって信者は教祖にカリスマ性を感じ、この人に着いていきたいと思うはずなのだ。


 まあ、ときには他者の意見に耳を傾けることも大事だから程度によると付け加えよう。それと……


「何度も言っているが、インくんじゃなくて、インチキ教祖と呼んでくれ。イン様でギリギリ妥協しよう」


「インくんは。インくんよ。信者にだって、教祖の言うことを盲目的に従うのではなく、自分で考え行動する自由があります。それがインチキの信者としての在り方だと思います」


 布教がうまくいかないイライラをお互いにぶつけ合う。こんなことをしてもらちが明かない。それよりも布教がうまくいく方法を考えなくては……そんな風に考えていると。


「おい! あれエルフ族じゃねえか!? ……よく見ればべっぴんさんじゃん!」


 道端で口論しながら二人で歩いていると前の方から、声が聞こえてきた。前方を見ると、人間が5人現れた。モヒカンだったり、スキンヘッドだったり、刺々しい肩パットをつけたりと、いかにもザ・ならず者集団だった。


 その強そうな見た目からゲームとかで雑魚敵かませキャラになりやすいので、かえって弱く見えそうな5人組だった。


「へへ。ラッキー。一日に上玉なエルフを()()も捕まえられるとは。売り飛ばすまえに二匹とも遊びたいねぇ~」


 そう言いながら、一人のモヒカン野郎が、ジュダスと運んでいた荷車を両方見る。こちらの視覚から荷車に何を運んでいるかは見えないが、大して興味もなかった。


 それよりも俺のジュダスに変なことを言っているのが気にくわなかった。俺の信者に……

 

「おい。そこのエルフちゃん。よろしければ、俺たちと一緒に遊ばない? 俺たち人間だけど、異種族にも優しいんだぜ!!」


「どうする……インくん? あの人たちにも布教する? インチキを」


「んなわけねぇだろ。うちの信者によからぬことを考えているやつなんかに入信してほしくないね。俺だって入信する信者を選ぶ権利がある。ああいう奴には、とりあえず、ガツンと言ってやるか。」


 俺はザ・ならず者集団に顔を向けて大声で怒鳴る。


「おい! このエルフは俺の信者なんだ! だからお前らとは遊ばなねぇ。わかったらとっとと、どこかに行けよ!」


 言い忘れていたが、俺は元からこの世界に生まれ育ったわけではない。前の世界で35年間生きてきた。そこからこの新しき世界で生きることになった。いわゆる異世界転生ってやつだ。


 前の世界の俺は、小心者で、あんないかつそうな集団にこんな大きな態度はとれなかっただろう。だが、今の俺は違う。超カリスマ的存在のインチキ教祖だ。普段から尊大な態度の俺は、アイツラに対しても威張れる。


 まぁ……自分の強さに自信があるからこそ。強気な態度が取れるところも大きいけどね。


「信者!? よくわからないが、お前の女かソイツ!? おい!女にいいところを見せたいのはわからんでもないが、喧嘩を売る相手を間違えてねぇか!? 同じ人間のよしみだ。怪我したくないなら、おまえこそ女おいてどこかに行けよ!!」

 

る? インくん」


 ジュダスは俺に顔を向けて尋ねる。俺の回答は。


「もうそのつもりだ」


 俺は右手を前方に突くように向けた。右手の形は、親指を左に残りの四本指は束ねた状態だ。そして


雷音らいおん


 俺がそう唱えると、右手から獅子の形をした雷光を放つ。


 ザ・ならず者集団は、脅している最中のつもりだったため、不意を突かれることになり、防御も回避もできないまま全員に当たる。


 魔術名【雷音】。この魔術は、雷電らいでん系魔術の基本技にあたる。その正体は、獅子の形をした雷。その雷鳴は獅子の雄叫びを思わせる程の爆音と共に相手に襲う。


 ズギャギャギャ!と音と共にその圧倒的な雷をくらうザ・ならず者集団。一人も悲鳴を上げる暇もなく、身体中焼かれ倒れていく。


「先手必勝だ。力加減がわからないから死んでるかもしれないが……恨まないでくれ。そっちから仕掛けてきたのだから」


 勝利を確信し、ニヤける俺。


「相変わらずすごい力ね。スキルタイプ・コネクトは。私が放つ通常の雷音よりも圧倒的な電荷でんかね」


 ジュダスは俺の魔術の威力に感心するように褒める。


 これも言い忘れていたが、俺が転生した新しき世界では、魔力とそれを扱うための技術。すなわち魔術が存在する。


 魔力とは、この世界では、第二の血液を意味する。


 血液といえば、A型、O型、B型、AB型と四つの血液型が存在するように(ちなみに俺はAB型)この魔力にも、オールラウンド、インファイター、ヒーラー、コネクトと四つの型がある。


 これをスキルタイプと呼ぶ。ちなみに俺のスキルタイプはコネクト。


 4つの中で最も希少なスキルタイプだ。そして最弱かつ最強のスキルタイプと呼ばれる力だ。


 この第一話は、シリーズ物のシーズン2の一話を意識して書きました!

 第二章の物語は、第一章から読んでいない方も、第一章を読んで下さった方も両方楽しんで貰える内容を目指しています!!

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