プロローグ:「カルトを狩るカルト教祖」
そこは全種族の夢の楽園か? それとも……
緊迫のザスジータウン編開幕!!!
「お前も教祖ならわかるだろう? インチキ教祖よ」
「そ、そんな……」
アタシは膝から崩れ落ちた。あまりの言葉にアタシはしばらく何も考えられなかった。あたまが真っ白になった。
「なるほどな……まぁそんな考えだってのはわかっていたよ。俺もカルト教祖の自覚があるからな。とやかく言える立場じゃない」
なんとなくわかっていた。マスターのアタシたちへの感情を。愛なんてないってことを。アタシだってマスターへの感情はもう恐怖しかなかった。ここが楽園じゃないってわかっていた。
でも……でも、言葉にされるとここまで衝撃をくらうとは……つらいとか怒りとかそんな言葉で表せる感情じゃない。多分言語化するなら虚しいという言葉が適切に近い心情だ。四年間アタシがここにいた意味は何だったのか……?
「最後の言葉は、そのくらいか。悪いがお前を逃がす気はない。覚悟して貰うぞ」
マスターにとどめを刺そうとするインチキ教祖さん。昨日あったばかりのインチキ教祖さん。インチキって変な名前だけど、名前に反してやさしそうな感じがする人だったのに……カルト教祖ということは、結局は彼もマスターと同じアタシたちのことを……
金色の羽織をギュッと強く握る。
アタシは、彼の信者であるジュダスさんを見た。同じエルフだというのに……彼は自身のことをカルト教祖だと語っているのに……なぜ信者となるの? なぜ彼と共にいるの? 数々の疑問が頭に思い浮かべたアタシはジュダスさんにすがるように問う。
「イ、インチキ教祖さんもカルト教祖なの? あなたはなぜ、彼の信者でいるの……?」
ジュダスさんはしばらく黙って、インチキ教祖さんとマスターの成り行きを見ていた。やがて、アタシの疑問に答えるように口を開く。
「ええ。カルト教祖よ。インくんも……あなたたちのマスターと同じように宗教を悪用するカルト教祖。でもただのカルト教祖ではない……」
何かを思うように少し目を閉じてからジュダスさんは話の続きを語る。
「カルトを狩るカルト教祖。それが、インシュレイティド・チャリティ教の教祖インチキ教祖よ」
明けましておめでとうございます。
今年も異世界インチキ教祖をよろしくお願いいたします




