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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
創世記第1章真実教編

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31. 「おい、ジュダス何を言っている!?」

「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 叫びながら、怒りの涙を流すジュダスは、ウンコウの木彫り、真実の目の木彫り、水晶、お守り、肖像画、数珠、ありとあらゆる真実教のアイテムを蹴り、破り、投げ捨て、破壊していった。


 ジュダスはハァハァと息継ぎ、一度呼吸を整えるとまた叫び声をあげながら、真実教アイテムの破壊活動を続ける。その声は喉が潰れるのではないかと思わせるほど、段々と声が枯れていた。


(悔しい悔しい悔しい。アイツの思い通りになって。家族がズタズタに引き裂かれて。なんでこんないんちき宗教を信じていたんだろう? なんで、あんな男を一時でも崇拝していたんだろう? あの時どうしてこれをしなかったんだろう)


(憎い。もっとアイツを苦しめてから殺せばよかった。今までやりたい放題した分苦しめて、生きてきたことを後悔させてやるほどに。今にも頭に思い浮かぶアイツの勝ち誇ったニヤケ顔。パンチして砕きたい。なぜ世の中あんな奴が一時でもいい思いするのよ! 私は真面目に生きてきたのに。私はパパとママがいる温かい家庭がいつまでも続くだけで良かったのに!! それ以上は望まないのに!)


 ジュダスの心の中でドス黒い感情が渦巻いていた。


 インチキ教祖はただ見ていた。ジュダスの様子を。声を掛けるまでもなく。インチキ教祖もわからなかった。ジュダスに声を掛けるべきなのか、それとも今はそっとしておくべきなのか。ジュダスが自傷行為でも始めようとした場合はすかさず止めるつもりだが。


 一通り暴れて疲れたのか、ジュダスは一度その場で座り込んだ。何気なく視線を動かしたとき、視界に映ったのは、家族3人の似顔絵だった。


「家族の絆なんてしょせん、まやかしか。その通りかもね。」


 ――……お前なんか、私の娘なんかじゃない。私が知っている娘はナレーザから出ていったあの日からもういなくなったのよ


 ――魔術訓練校に行くとぬかした時だったからなのね。悪魔がお前に取り憑いていたのは。悪魔はお前を宿主にし、やがて成長し、顕在化したときには、お前はすでに悪魔の女と化していた


 ――だから、セックスよ。仕方ないでしょ。本来はある程度真実カリキュラム(教義)を受けた上で禊の段階に入るのがセオリーけど、今回は状況が状況だし、悪魔の呪いを解く近道をするために、カリキュラムよりも先に禊を済ませる必要があるのよ


(なんで私ママの言葉を思い出しているのだろうか……よりにもよってなぜ、こんな言葉を……)


 ジュダスは、インチキ教祖をふと見る。するとジュダスの中で、自傷するような邪な気持ちが湧いてきた。


「えへ。えへへへへ。セックスか~」


 普段のジュダスならしないようなケタケタと笑うような顔つきになる。


「ジュダス?」


 ジュダスの様子がおかしいと感じたインチキ教祖。ジュダスは今とんでもないことを考えているのではないのだろうかと不安を覚えた。そして、その不安を的中した。


「ねぇ~インチキさん。私今慰めてほしいなぁ~セックスしましょ。セックス♡」


「おい、ジュダス何を言っている!?」


 ゆっくりとインチキ教祖に近づくジュダス。インチキ教祖は近づくジュダスに離れるように少しずつ後ずさりした。


 だが、やがて壁に追い込まれ、ジュダスは目の前まで近づいた。


「ねぇしましょうよ。教祖だからしてもいいんでしょう? こういうのは。だって私たちあ~んなにあつ~いキスまでした仲じゃないですか♡ 私異性と初めてのキスだったんですよ。もう一つの初めても受け取ってほしいな教祖様に。それとも教祖様とのセックスは、穢れないことになるのかな~」


 インチキ教祖の当初の目的は、ジュダスを信者に取り込み肉体関係を持つこと。ジュダス自らしても良いというのだ。本来ならば願ってもない好機のはずだ。だが、インチキ教祖はなぜかまったくジュダスとする気はなかった。ジュダスに興味がないわけではない。むしろ、ジュダスに惹かれているからこそ、今抱くわけにはいかないと思ったのだ。このにはこれ以上傷ついて欲しくない。そんな気持ちが芽生えていた。


「ジュダス。お前は今、ぼうになっているんだ。気をしっかり持ってくれよ! 教祖の命令だ。できるな!?」


 ジュダスの両肩に手をのせて説得する。インチキ教祖。だが、ジュダスは、肩に乗せたインチキ教祖の手を握るといきなり引っ張り両親の部屋にあるベッドまで連れて行った。かつて両親が一緒に寝ていたベッドに。


 インチキ教祖を押し倒し、その上にまたがるジュダス。


「ムフ♡」


 声に出すとゆっくりと舌なめずりしてインチキ教祖を見下ろす。やがて、インチキ教祖の顔の左右に両手を置き、ジュダスはゆっくりインチキ教祖の顔に自身の顔を近づける。


「私に興味ない? インチキさん。ただ、セックスするだけじゃありませんよ。大サービスとして、私は、サン・サーラを使用しながら、魔力をプレゼントしながらしますわ♡ サン・サーラセックス♡ そしたらインチキさん今よりもっと強くなりますね♡」


「……悪ふざけはよせ。そんなことしたら、お前は必ず後悔する。そうやって自暴自棄になったら余計にウンコウの思うつぼだろ? お願いだからジュダス。元に戻ってくれよ。話ならいくらでもするから」


 インチキ教祖に言葉に耳を傾けず、ジュダスはインチキ教祖の頬を舐め、首筋にキスをしてくる。


「やめろ。やめてくれ。」


 インチキ教祖が懇願してもジュダスは無視する。そして、インチキ教祖のズボンの中に手を入れたところで。


「辞めろぉ! ジュダス!!」


 ジュダスの両肩に掴み。回転するようにジュダスをベッドに押し返すインチキ教祖。ジュダスは拒絶を受け入れるように動きを止めた。インチキ教祖は両肩に掴んだままジュダスの顔を見る。ジュダスの顔は焦点を失ったような虚ろな眼差しであった。やがて自嘲じちょうするような薄笑いを浮かべながらジュダスは話す。


「騙されていたって気づいたのに……ウンコウを倒したというのに、家族は戻らなかった。何だったの? 私がやってきたことは……」


 インチキ教祖はやがて両肩に掴んでいた手を放し、ベッドから降りる。そして、ポリポリと頭をかきながら言葉を選ぶような口調で話す。


「……さっきボソッと言っていたな。家族の絆なんてしょせん、まやかしだって。ウンコウがそう言ったのか?」


 ジュダスはうんともすんともせず、無反応だったが、当たっているとインチキ教祖はわかった。


「悪いが、その意見に関しては、ウンコウと同意見だ。家族の絆というものを……俺だって信じられたことがない」


「俺には元から家族なんていなかったからだ」



 次回、1章真実教編最終回となります!!

 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 この物語のゆくえはどうなるのか!?

 是非あなたの目で見届けてください!

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