29.「家族の絆」
(そうか……余は死ぬのか……くそぉこのままタダで死にたくない。小童に一矢報いて死にたいわい)
「うっ……うん?」
「うん?」
ジュダスによって気絶させられていたカリオテとタマルが目を覚ました。起きた視界に映ったのは、圧倒的な炎で焼かれているウンコウらしき人影だった。
「ウ、ウンコウ様!?」
「ウ、ウンコウ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
驚愕し、言葉を失うカリオテ。それに対し、タマルは悲鳴を上げ続けた。
(タマル!? カリオテ!?)
タマルの悲鳴に気付いたウンコウ。
(そうじゃ! この手があったわい)
ウンコウはあることを思いつく。
「タ、マ、ルゥ~こ……れ……を」
ウンコウは今にも消し炭になりそうな左手の人差し指をタマルに向けた。やがて指の先から小さな光が放たれ、タマルに当たると、タマルの黒服の服装が白服へと変わっていった。ウンコウと同じ白服だ。タマルとカリオテはこの現象に戸惑っていた。
ウンコウが何かをした様子を見たインチキ教祖とジュダスは塔の上から驚愕していた。
「馬鹿な!? なぜウンコウはまだ死なない? とっくに消し炭になってもおかしくないのに」
回復系魔術を回し続けている影響か、なんらかの防御の魔術を使用しているのか、それともウンコウの執念だというのか、抵抗する力が残っておらずとも、ウンコウはまだ燃え尽きていなかった。インチキ教祖の全力を受けてもなお。
「残……念……ながら、余はここまでじゃ……真実……教を……タマルおぬしに託す。余の代わりに、教祖として……家族たちを頼む。カリオテよ……おぬしはナンバーツーとしてタマルの……サポート頼むぞ……」
ジュダスはウンコウの行動が、死に際のメッセージをタマルとカリオテに残そうとしているのがわかった。
「やめろぉぉぉぉぉっぉぉウンコォウ!!」
嫌な予感がし、ウンコウに向けて叫ぶジュダス。だがウンコウの最後の言葉は止まらない。
「真実への道……は遠い……だが、おぬしたちなら……たどり着ける……余は浄土から……おぬしたちを見守っているぞ……ではさらばじゃ!!」
「「ウンコウ様」」
ウンコウに向けて呼びかけるタマルとカリオテ。
ウンコウは最後にジュダスに向けて顔を向ける。その顔は勝ち誇った顔だった。
(小童に一矢報いことは出来なかったが、小娘には出来た……余が死んでもおぬしら家族の絆が戻ることはない……家族の絆なんて……まやかしなんじゃ……)
最後の言葉をタマルとカリオテに残すと、ウンコウは力尽きたように今度こそ骨まで残らない程消し炭になった。
二度目の死を迎えることになった真実教教祖ウンコウ・ガンダーラ。
彼の魂はどこへ向かうのだろうか。




